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展示会案内  2019年


全国の美術館、博物館の展示会情報については、下記リンク先を参照ください。

観 仏三昧 ─ 仏像と文化財の情報ページ─
〈展覧会情報、仏像の公開情報、講演会・シンポジウム情報などを詳細に紹介しているサイト。〉
インターネットミュージアム
〈全国の美術館、博物館の検索と展覧会情報を掲載〉
Museum Information Japan
〈全国の美術館案内〉
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●奈良博で「重要文化財 法隆寺金堂壁画写真ガラス原板〜文化財写真の軌跡〜展」開催(12/7〜1/13) (2019年11月23日‎)



奈良国立博物館で、特別陳列「重要文化財 法隆寺金堂壁画写真ガラス原板〜文化財写真の軌跡」が開催されます。

開催期間は、2019年12月7日(土)〜2020年1月13日(月・祝) です。
詳しくは、
奈良国立博物館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、昭和10年(1935)に美術印刷会社「便利堂」が撮影した、火災損傷前の法隆寺金堂壁画12面の写真ガラス原板を中心に、近代文化財写真の軌跡を振り返る展覧会です。

ご存じの通り、便利堂撮影の法隆寺金堂壁画のガラス原板は、焼損前の金堂壁画の状況を伝える詳細、精密な画像写真として、極めて貴重な文化財写真資料です。
2015年には、その歴史的・学術的価値があらためて評価され、国の重要文化財に指定されました。

展覧会は、「特別陳列」という企画展なので、それほど大規模な展示ではないかもしれませんが、開催趣旨に、

「この展覧会では、法隆寺金堂壁画写真ガラス原板を中心に、近代以降に多くの人びとが文化財の写真撮影に精力を傾けた軌跡を振り返ります。」

と述べられているように、横山松三郎や小川一眞撮影の古写真をはじめ、明治初年からの文化財写真も展示され、「近代文化財写真の軌跡」をたどる興味深い展示会となるようです。


こうした 近代文化財写真の軌跡や便利堂撮影法隆寺金堂壁画を振り返る展覧会としては、

2000年に東京都写真美術館ほかで開催された  「写された国宝〜日本における文化財写真の系譜」展

2017年に京都文化博物館で開催された  「便利堂創業130周年記念 至宝をうつす〜文化財写真とコロタイプ複製のあゆみ」展

が、記憶に残る素晴らしい企画展だったと思います。

    
上記の2つの展覧会の図録・資料

今回は、どんな展示がされるのでしょうか?大変愉しみです。

本物の仏像や絵画の展示ではなく、「文化財写真」をテーマにした展覧会は、ちょっとマイナーで人気がないのかもしれませんが、私には興味深い展覧会です。





●大阪市立美術館で「仏像 中国・日本〜中国彫刻2000年と日本展」開催(10/12〜12/8) (2019年10月12日‎)



大阪市立美術館で特別展「仏像 中国・日本 中国彫刻2000年と日本/北魏仏から遣唐使そしてマリア観音へ」が開催されます。

開催期間は、2019年10月12日(土)〜12月8日(火) です。
詳しくは、
大阪市立美術館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、中国歴代の仏像に流れを、日本の視点から読み解くという展覧会です。
展覧会HPにはその概要について、このように記されています。

「日本にはいつの時代にも中国でつくられた多くの仏像や仏画がもたらされ、それらが日本の仏像のすがたに大きな影響をあたえてきました。
本展では、まず「古代の人物表現 戦国〜漢時代」を踏まえ、「仏像の出現とそのひろがり」、「遣隋使・遣唐使の伝えたもの」、「禅宗の到来と「宋風」彫刻」そして「新たな仏教・キリスト教との出会い」の各章を通じ、中国南北朝時代から明・清時代まで1000年をこえる仏像の移り変わりを、関連する日本の仏像と共にご紹介いたします。」

中国の仏像の歴史をベースに、これに対応する日本の仏像をたどるという、これまであまりなかった切り口の興味深い展覧会です。
中国初期から清時代までの仏像の特徴、歴史を観ながら、これに関連する日本の仏像を同一空間に並べる比較し確認するという展示スタイルになっているようです。

中国仏像の有数コレクションである山口コレクションを所蔵する大阪市立美術館ならではの、仏像展示企画かと思います。
出展仏像については、展覧会HP・作品リストをご覧ください。

中国仏像は、山口コレクションの優作が出品されます。
日本のへの請来仏では、堺市博物館・観音菩薩像(隋)、山口神福寺・十一面観音像(唐)、泉涌寺・楊貴妃観音像(南宋)あたりが、注目仏像ではないでしょうか。

        
(左)堺市博物館・観音菩薩像(隋・重文)    (中)山口神福寺・十一面観音像(唐・重文)    (右)泉涌寺・楊貴妃観音像(南宋・重文)





●大津市歴史博物館で「大津南部の仏像〜旧栗太郡の神仏展」開催(10/12〜11/24) (2019年10月12日‎)


大津市歴史博物館で第79回企画展「大津南部の仏像 −旧栗太郡の神仏−」が開催されます。




開催期間は、2019年10月12日(土)〜11月24日(日) です。
詳しくは、
大津市歴史博物館HP展覧会ページをご覧ください。

大津市歴史博物館では、折々、興味深い仏像企画展が開催されていますが、今回は「旧栗太郡の神仏」をテーマにした企画展です。
旧栗太郡というのは、大津市の瀬田川から東の地域で、現在の草津市や栗東市、守山市の一部にあたります。
展示数はそう多くはありませんが、あまり知られていない、見処ある興味仏像が展示されるようです。
出展仏像は展覧会HP・展示品一覧をご覧ください。

私がもう一度じっくり見たいと思う仏像は、張りのある弾力感が魅力の圓福院・釈迦如来坐像(鎌倉・重文)、強い力感と霊威性を感じる若王子・如来立像(平安中期・重文)あたりでしょうか。

    
(左)圓福院・釈迦如来坐像(鎌倉・重文)        (右)若王子・如来立像(平安中期・重文)





●三重県総合博物館で「三重の仏像〜白鳳仏から円空まで〜展」開催(10/5〜12/1) (2019年10月5日‎)


三重県津市の三重県総合博物館で、開館5周年記念特別展「三重の仏像〜白鳳仏から円空まで〜」が開催されます。

    
「三重の仏像展」展覧会チラシ と チラシ裏面に掲載されている主な展示仏像

開催期間は、2019年10月5日(土)〜12月1日(日) です。
詳しくは、
三重県総合博物館HP展覧会ページをご覧ください。

三重県内の見どころのある古仏が、一斉に出揃うといっても過言ではない、仏像愛好者必見の展覧会です。

展覧会HPの特別展開催趣旨には、このように記されています。

「平安・鎌倉期の仏像を中心に、本尊、秘仏を含む三重の仏像を一堂に会し、その魅力を様々な角度から紹介します。
また、新発見の快慶作 阿弥陀如来像や地蔵菩薩像も初公開します。
三重県総合博物館で初めての、県内では16年ぶりの本格的な仏像の展覧会です。」

確かにその通りで、三重県の重文指定の仏像の大半、県指定の見どころのある仏像が、そろって展示されます。

展示仏像の出展リストは、博物館展覧会ページ「三重の仏像展示資料一覧」をご覧ください。
出展リストをご覧いただくと、よくぞこれだけ一堂に集めることができたものだと、驚いてしまいます。

平安中期(10C頃)までの重文指定仏像で、出展されていないのは、朝田寺・地蔵菩薩像、観菩提寺・十一面観音像、宝厳寺・十一面観音像ぐらいではないでしょうか。
平安前中期が大好きの私にとっては、展示資料番号10番の慈恩寺・阿弥陀如来像から、20番の蓮光院・大日如来像まであたりの10躯余の三重を代表する一木彫像を、同時に見比べながら鑑賞できるのは、なんといっても愉しみです。


もう一つの注目は、展覧会チラシで 「新発見の快慶仏 2体初公開!」 とのキャッチが書かれている仏像が出展されることです。

新発見・快慶作の2体とは、松阪市にある「安楽寺の阿弥陀如来像、地蔵菩薩像」とのことのようです。


新発見の快慶仏として出展される、安楽寺・地蔵菩薩像と阿弥陀如来像

安楽寺・阿弥陀如来立像は、2017年4月に奈良国立博物館で開催された「快慶展」の図録に、展覧会未出陳快慶作品として像容写真と「巧匠法眼快慶」と判ぜられる足ホゾ墨書名写真が掲載され、新出の快慶作品として知られています。
本像が、展覧会に出展されるのは今回が初めてのことです。

同じく安楽寺の地蔵菩薩立像も、「新発見の快慶仏」とされているようですが、この地蔵菩薩像が快慶作と判断されている事由について、私は、詳しく知りません。
同じ寺に伝わり、像容などから阿弥陀像と同作とみられるということで、快慶作と考えられているのでしょうか。
展覧会では、快慶作とする根拠等が解説されていると思いますので、これまた愉しみです。

「三重の仏像展」は、今年一番の仏像展覧会ではないかと思います。
是非、お出かけください。





●京都市歴史資料館で「京都市指定の文化財展」開催(8/30〜10/20) (2019年9月14日‎)



京都市上京区の京都市歴史資料館で、近年、京都市指定文化財に指定された仏像など美術工芸品を展示する企画展「京都市の文化財U 京都市指定の文化財」を開催中です。

展覧会には、 勝光寺・聖観音像(平安前期)、浄禅寺・十一面観音像(平安中期) など、大変興味深い仏像が出展されています。

開催期間は、2019年8月30日(金)〜10月20日(日) です。
詳しくは、京都市情報館HP・
京都市歴史資料館ページ並びに企画展ページをご覧ください。

こんな興味深い仏像が出展されている企画展が開催されていることを、全く知りませんでした。
NETの仏像関連の展覧会情報などにも、ほとんど掲載されていないのではないかと思います。
同好の方から、企画展開催情報を教えていたいただいたばかりで、急ぎ、紹介をさせていただきました。

現在、京都では、ICOM(国際博物館会議)京都大会開催を記念した展覧会が、京都国立博物館をはじめいくつもの博物館で開催されています。
本企画展「京都市の文化財U 京都市指定の文化財」も、ICOM開催記念で開催されているもので、近年京都市指定文化財に指定された美術工芸品のなかから16件が展示されています。
出展作品は、企画展・出品目録ページをご覧ください。


仏像(彫刻)は、以下の5件が出展されています。




私の大注目は、下京区・勝光寺の聖観音像が出展されていることです。

この聖観音像は、平安前期、9世紀の制作と思われる、魅力あふれる檀像風小像です。
像高:113.2p、カヤ材の一木造りで、蓮肉部も共木から彫り出しており、内刳りはありません。
私は十数年前(2006)に、この観音像を初めて拝しましたが、ちょっとインド風の妖しい眼力、霊威感を発散する迫力ある造形に、すっかり惹きつけられてしまいました。

隠れた「無指定」の平安前期の優作であったのですが、2013年に市指定文化財に指定されました。
本像については、以前、観仏日々帖「京都・勝光寺 聖観音立像」でご紹介したことがありますのでご覧ください。

また、南区・浄禅寺の十一面観音像も、10世紀ごろの一木彫像(像高172p)で、いかにも平安中期の穏やかさをたたえた見どころある像だと思います。

      
      (左)勝光寺・聖観音像(平安前期)                    (右)浄禅寺・十一面観音像(平安中期)

この企画展、あまり開催情報が知られていないようですが、勝光寺・聖観音像は、平安前期仏像にご関心のある方には、絶対必見といってよい仏像だと思います。
是非、お出かけください。





●住友財団修復助成30年記念 「文化財よ、永遠に展」4館同時開催(9〜11月) (2019年9月7日‎)


公益財団法人住友財団では、文化財の維持・修復の費用を助成しています。
この事業が間もなく30年を迎えるのを記念して、「文化財よ、永遠に」と題する企画展が、泉屋博古館(京都)、泉屋博古館分館(東京)、九州国立博物館、東京国立博物館の4館で、同時期に開催されます。

    

住友財団は1991年に住友グループ20社で設立され、財団の助成事業のうち文化財維持・修復助成事業は、毎年約7000万円の助成が行われ、2017年年度までに1063件が助成対象となりました。
今回の企画展では、博物館4館で、別々に設けられたテーマに沿って、これら助成により修復された文化財のなかから、仏像、絵画などをそれぞれ各30件前後の作品が展示されます。


4館、それぞれの「文化財よ、永遠に展」開催スケジュール等は、以下のとおりです。

泉屋博古館(京都・鹿ケ谷):2019年9月6日(金)〜2019年10月14日(月・祝)

泉屋博古館分館(東京・六本木):2019年9月10日(火)〜2019年10月27日(日)

九州国立博物館(福岡・大宰府):2019年9月10日(火)〜2019年11月4日(月・休)

東京国立博物館(東京・上野):2019年10月1日(火)〜12月1日(日)

詳しい開催内容、主な出展作品は、各館のHP・展覧会ページをご覧ください。
(上記の博物館名をクリックすると、各館展覧会ページにリンクします)


仏像の展示は、東京国立博物館が中心となっていますが、4館での主な仏像展示はご覧のとおりです。




泉屋博古館(京都)で展示される「浄瑠璃寺・大日如来坐像」は、同寺灌頂堂に安置され、普段は非公開です。(毎年1/8〜10のみ公開)
その存在が知られるようになったのは近年のことで、1176年(安元2年)の運慶作で知られる円成寺大 日如来坐像や、1183年(寿永2年)筑前講師の銘が入った岐阜横蔵寺の大日如来坐像など、平安末鎌倉初期の慶派 による作例に酷似している点から、研究者たちの注目を浴びていた像です。
2005〜6年に東京藝術大学で解体修理が行われ、後補の漆箔が取り除かれ、面目を一新しシャープな魅力が再認識されました。

東京国立博物館展示の「高成寺・千手観音像」は、2012年に新たに重要文化財に指定された9世紀の一木彫像です。
後世の厚塗りの彩色により尊容を大きく損じていましたが、修理により彩色が除去され、本来の平安前期一木彫像の魅力が明らかになったものです。

     
(左)泉屋博古館(京都)展示〜浄瑠璃寺・大日如来坐像        (右)東博展示〜高成寺・千手観音像




●甲賀市MIHOミュージアムで「紫香楽宮と甲賀の神仏展」開催(7/27〜9/1) (2019年7月27日‎)



滋賀県甲賀市信楽町のMIHOミュージアムで、夏期特別展「紫香楽宮と甲賀の神仏〜紫香楽宮・甲賀寺と甲賀の造形」が開催されます。

開催期間は、2019年7月27日(土)〜 2019年9月1日(日)です。
詳しくは、
MIHOミュージアムHPならびに展覧会ページをご覧ください。

本展は、聖武天皇により甲賀の地に造営された紫香楽宮と、その甲賀の地に築かれていった豊かな宗教文化にスポットをあてて、「紫香楽宮と甲賀の神仏」と題して開催されるものです。
近年の紫香楽宮発掘調査などにより明らかになった古瓦、木簡などの考古遺物や、石山寺、善水寺、金勝寺などに伝わる仏像、神像が出展されています。

出展される品目については、MIHOミュージアムHP・展示品リストをご覧ください。

主な出展仏像、神像についてみると、

善水寺・金堂釈迦誕生仏像(奈良)、金勝寺・僧形神像女神像(平安)、毘沙門天像(平安)、飯道寺・十一面観音像(平安)、矢川神社・男女神諸像、正福寺・十一面観音像(平安)、阿弥陀寺・薬師如来像(平安)

などが展示されます。

      
(左)金勝寺・僧形八幡神坐像(平安・県指定)     (中)飯道寺・十一面観音像(平安・重文)     (右)正福寺・十一面観音像(平安・重文)


超有名仏像の出展はないのですが、湖南、甲賀地域のちょっと興味深い仏像がいくつも出展され、湖南エリアの平安古仏にご関心のある方には、見どころのある展覧会です。





●一関市博物館で「東川院蔵木造観音菩薩坐像とその周辺展」開催(7/20〜9/23) (2019年7月13日‎)



岩手県一関市の一関市博物館で企画展「国指定重要文化財 東川院蔵 木造観音菩薩坐像とその周辺」が開催されます。

開催期間は2019年7月20日(土)〜9月23日(月・祝)です。
詳しくは
一関市博物館HP展覧会ページをご覧ください。

一関市大東町にある東川院の観音菩薩坐像は、平成30年度に国指定重要文化財に指定されました。
本展は、重文指定を記念して、この観音像を中心に東川院の来歴と什宝、一関市内の同時期の仏像などを紹介する企画展です。

東川院の観音菩薩坐像は、昨年4〜5月に東京国立博物館で開催された「平成30年 新指定 国宝・重要文化財展」に出展されていましたので、その時にご覧になった方も多いのではないかと思います。

東川院・観音菩薩像は、平安時代末に藤原秀衡が建立したと伝えられる弥陀有頂山観音寺に伝来した仏像で、奥州藤原氏三代に携わった仏師によって制作されたとみられています。
平泉周辺に遺る大作として評価されていますが、保存状態もよく、いかにも藤原末期の繊細な美しさが漂う仏像です。
お寺の収蔵庫で、眼近に拝させていただいたのが、懐かしく思い出されます。

これだけに一関まで出かけるのは、ちょっと無理かなと思いますが、東川院・観音菩薩坐像、1躯だけにスポットライトを当てるという珍しい企画展で、本像に関連する講演会が3回も実施されるというのは、なかなか興味深いものがあります。
図録も出版販売されるとのことです。

     
東川院・観音菩薩坐像(平安後期・重文) と 東川院境内




●奈良国立博物館で「法徳寺の仏像〜近代を旅した仏たち」展開催(7/13〜9/8) (2019年6月29日‎)



奈良国立博物館で特別陳列「法徳寺の仏像〜近代を旅した仏たち」が開催されます。

開催期間は2019年7月13日(土)〜9月8日(日)です。
詳しくは、
奈良国立博物館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、明治以来、近代奈良の古寺の仏像流出やその流転などにご関心のある方には、大変興味津々の企画展です。

奈良博HPの開催趣旨をご紹介すると、次のように記されています。

「法徳寺は、奈良市十輪院町に位置する融通念仏宗の寺院です。
本展で注目するのは近年この寺に寄進された約30躯の仏像群です。

これらは、かつてひとりの実業家が蒐集した仏像でその実業家が奈良の古美術商と親交があったこともあり、法徳寺仏像群には南都伝来あるいはそうと推測される作品が少なくありません。
興福寺に伝来したとされる、いわゆる興福寺千体仏が20躯も含まれるほか、地蔵菩薩立像は、明治39年(1906)に興福寺の境内で撮影された仏像写真(同寺蔵)の中にその姿を見出し、興福寺伝来であることが確認できます。
さらに文殊菩薩坐像が鎌倉時代以降、南都を中心に広まりをみせたいわゆる五髻文殊の優品であることも見逃せません。

法徳寺の仏像群は、個性豊かな像を多く含みますが、各像の基礎的な情報はもとより、その存在自体もほとんど知られていない、南都ゆかりの知られざる仏たちです。
本展では、これら諸像を広く紹介するとともに、X線CTスキャン調査をはじめとした最新の調査成果もふまえて、その魅力に迫ります。」

実は、私も、奈良市内の法徳寺というお寺に、このような南都伝来の古仏が多数寄進され、残されているということは、全く知りませんでした。

また、法徳寺の地蔵菩薩像(平安後期)が、明治39年に興福寺伝来の80余体の破損仏が益田鈍翁に譲与されたなかの1躯であることが判明したのは、ごく最近のことです。
奈良博・主任研究員の山口隆介氏が「明治39年仏像譲与時に撮影された仏像写真」の仏像の行方を調査研究した論文「明治時代の興福寺における仏像の移動と現所在地について(山口隆介・宮崎幹子)MUSEUM676号2018.10」の中で、明らかにされたものです。

     
法徳寺・地蔵菩薩像(明治39年興福寺から益田鈍翁に譲与された破損仏像の1躯)と、譲与時に興福寺倉前で撮られた譲与仏像写真
譲与写真の向かって右から前列3番目が法徳寺・地蔵像


この論文は、興福寺の廃仏棄釈と仏像流出の語られ方と正確な事実をたどる中で、誠に興味深い調査研究論文で、ご関心ある方には、是非とも一読をお薦めします。
こうした研究成果を踏まえて、今回の、展覧会企画に至ったものではないかと思われます。

出展仏像それぞれの魅力もさることながら、「近代奈良の古寺からの仏像の流出やその流転の物語」に思いを致し、振り返ることができる貴重な展覧会だと思います。

是非とも、出かけたいものです。





●福島県立博物館で「興福寺と会津〜徳一がつないだ西と東展」開催(7/6〜8/18) (2019年6月22日‎)



福島県会津若松市の福島県立博物館で、福島復興祈念展「興福寺と会津〜徳一がつないだ西と東〜」が開催されます。

開催期間は、2019年7月6日(土)〜8月18日(日)です。
詳しくは、
福島県立博物館HP展覧会オフィシャルサイトをご覧ください。

本展覧会は、平安初期、奈良興福寺から会津の地に入り、慧日寺をはじめいくつもの寺院を建立するなど「仏都会津」の礎を築いた高僧・徳一ゆかりの仏教美術と興福寺の寺宝を紹介展示するものです。

展覧会オフィシャルサイトによると、

「本展は、東日本大震災復興によせる興福寺の思いを受けて実現。
徳一が生きた時代の仏像をはじめ、国宝3件、国指定重要文化財8件を含む興福寺の寺宝の数々をご紹介します。
あわせて、徳一を開祖とする慧日寺伝来の品々など、徳一ゆかりの寺院の寺宝と会津の仏教美術をご紹介し、徳一が会津に開いた道をたどります。」

ということです。

展示仏像は、オフィシャルサイト展覧会パンフレットなどをご覧ください。

興福寺からは、東金堂四天王像、維摩居士像、長和2年薬師像、法相六祖像など
会津の仏像では、勝常寺・四天王像、個人蔵・吉祥天像、明光寺・十一面観音像など

が出展されるようです。

私の注目は、9世紀の制作とみられる「個人蔵の吉祥天像」が出展されることです。

本像は福島県大沼郡会津美里町の民家に伝わった吉祥天像で、2007年に重要文化財に指定されました。
像高97.8p、ケヤキの一木彫で、台座まで一木で彫成されています。
顔立ちや衣縁の蛇行する表現などの作風は、近在の国宝・薬師三尊像で知られる勝常寺諸像と共通し、同系の工人によって造られたとみられています。
私は、未だ本像を実見したことは無いのですが、写真でみると、厳しさと力感あふれる魅力的な像のように思えます。

        
会津美里町個人蔵・吉祥天像(9世紀・重要文化財)

重文指定時の解説にも
「東北地方木彫像の中で最も古い作例の一つであり、その優れた作柄も高く評価される。」(月刊文化財525号2007.06)
と記されています。

会津まではちょっと遠いので、出かけてみるかどうか思案中です。





●東京国立博物館で「奈良大和四寺のみほとけ展」開催(6/18〜9/23) (2019年6月8日‎)


展覧会チラシ写真は
室生寺金堂・十一面観音像(平安・国宝)

東京国立博物館で、特別企画「奈良大和四寺のみほとけ」が開催されます。

開催期間は、2019年6月18日(火) 〜 2019年9月23日(月)です。
詳しくは、
東京国立博物館HP特別企画ページをご覧ください。

この特別企画展は、岡寺、室生寺、長谷寺、安倍文殊院の奈良の四寺の仏像の中から、仏像14躯の他、納入品などが出展されるものです。
具体的な出展仏像などは、特別企画展示作品リストをご覧ください。

何といっても本企画展の注目は、室生寺の有名、人気仏像がいくつも出展されることです。
金堂安置の十一面観音立像(国宝・9〜10世紀)、地蔵菩薩率像(重文・10世紀)、十二神将立像2躯(重文・13世紀)に加えて、弥勒堂安置の釈迦如来坐像(国宝・9世紀)が、出展されます。
なかでも十一面観音像や釈迦如来像は、何度も大和路ポスター使われるなど、魅力あふれる大人気仏像です。

現在室生寺では、弥勒堂の全面改修工事(3月末終了)とともに、金堂諸仏の安置が予定されている宝物殿の新築工事が行われています。
こうした関係から、東博に多くの仏像が出展されることになったのだと思われます。

岡寺の義淵僧正像も奈良時代の木心乾漆像の優品として知られる国宝で、奈良博仏像館によく展示されていますが、今回は、東博で観ることができます。

本企画展は、普段は仏像彫刻の平常展示がされている本館11室を使っての展示で、平常展の入場料だけで鑑賞ができるようです。
是非とも出かけたい、特別企画展です。

    
(左)室生寺弥勒堂・釈迦如来像(平安前期・国宝)、  (右)岡寺・義淵僧正像(奈良・国宝)




●東京国立博物館で「平成31年 新指定 国宝・重要文化財展」開催(4/16〜5/6) (2019年4月13日‎)


東京国立博物館で、「平成31年 新指定 国宝・重要文化財展」が開催されます。

開催期間は、2018年4月17日(火) 〜5月6日(日)です。
詳しくは、
東京国立博物館HP展覧会ページをご覧ください。

毎年恒例で、ゴールデンウィーク周辺で開催される、平成31年度に新指定になった、国宝、重要文化財を一堂に集めた展示会です。

今回展示される、彫刻作品・仏像は、ご覧のとおりです。




今回の国宝・重要文化財になった仏像については、先に、当HP特選情報・平成31年の新指定・国宝重要文化財が発表〜彫刻は10件(3/18)で、ご紹介していますので、そちらをご覧ください。

出展仏像の詳しい解説は、文化庁HP・文化審議会答申〜国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定について〜解説ページをご覧ください。

毎年恒例ですが、見逃せない展示会です。





●小浜市・福井県立若狭歴博で「お釈迦さまの美術展」開催(4/18〜6/2) (2019年4月13日‎)


福井県小浜市の福井県立若狭歴史博物館で、テーマ展「仏教美術ことはじめ お釈迦さまの美術」が開催されます。

    
「仏教美術ことはじめ お釈迦さまの美術」チラシ と 若狭町慈眼寺・釈迦如来坐像(平安後期・町指定文化財)

開催期間は、2019年4月18日(木) 〜 2019年6月 2日(日)です。
詳しくは、
若狭歴史博物館HP展覧会ページをご覧ください。

本展は、仏教美術についてわかりやすい解説で、尊像ごとに紹介するシリーズ企画の第1回展で、「釈迦如来」をテーマにしたものです。

特別展ではなくてテーマ展ですので、若狭の釈迦如来の仏像仏画、6件ほどが展示されるもののようですが、仏像では、若狭町慈眼寺・釈迦如来坐像(平安後期・町指定文化財)、小浜市洞源寺・金銅誕生釈迦仏像(初公開)が展示されます。





●和歌山県立博物館で「仏像と神像へのまなざし展」開催(4/27〜6/2) (2019年4月6日‎)


和歌山市の和歌山県立博物館で、特別展「仏像と神像へのまなざし―守り伝える人々のいとなみ―」が開催されます。

    

開催期間は、2019年4月27日(土)〜6月2日(日)です。
詳しくは、
和歌山県立博物館HP展覧会ページをご覧ください。


本特別展は、明治維新後の廃仏棄釈の混乱を乗り越え、地域の人々の尽力、信仰の対象として、現在まで守り伝えられてきた、和歌山県の仏像、神像が数多く出展される展覧会です。

展示目録がまだ展覧会ページに掲出されていませんので、詳しい出展仏像はわかりませんが、展覧会チラシによると、ご覧のような仏像、神像などが出展されるようです。




有名処では、国宝の熊野速玉大社・熊野速玉大神像(平安時代)や、奈良時代に遡る木彫像として注目されている円満寺・十一面観音像が出展されます。

私の大注目は、名杭観音講蔵・十一面観音像が出展されることです。
展覧会ポスターにも、アップ写真が掲載されています。

この観音像は、日高郡印南町島田にある名杭観音堂に祀られている平安古仏です。
あまり知られていない像だと思いますが、平安前期、9C末〜10C初の制作の、魅力あふれる一木彫像です。
像高176p、蓮肉まで一木から彫出されるという古様な造りで、造形レベルも高いものがあります。
熊野九十九王子の一つである切目中山王子社の神宮寺本尊として造立された像であろうとみられています。

    

日高郡印南町島田にある名杭観音堂・十一面観音像(平安前期・県指定文化財)


私は、2010年に名杭観音堂を訪ねて、この観音像を拝したことがあります。
村落の小さな観音堂にひっそりと祀られていたのですが、その見事な出来にビックリしてしまいました。
県指定の文化財になっているのですが、国の重要文化財になっていてもおかしくない、優れた一木彫像だと感じた思い出があります。

訪れるにはなかなか大変なところにありますので、本展覧会で是非一見しておきたい仏像です。

なお、本HP「貞観の息吹〜名杭観音堂・十一面観音立像」で、本像に就いてご紹介していますのでご覧ください。





●石川県立歴史博物館で「いしかわの神々〜信仰と美の世界展」開催(4/27〜6/20) (2019年4月6日‎)


石川県金沢市の石川県立歴史博物館で特別展「いしかわの神々〜信仰と美の世界〜」が開催されます。

開催期間は、2019年4月27日(土)〜2019年6月2日(日)です。
詳しくは、
石川県立歴史博物館HP展覧会ページをご覧ください。


       


本展は、石川県の神像などを中心に、重要文化財14件22点、県指定文化財14件53点などが一堂に出展される、興味深い展覧会です。
展覧会HPによると、主な展示像は、ご覧のとおりです。




本展に出展される、久麻加夫都阿良加志比古(くまかぶとあらかしひこ)神社の神像(平安後期・重要文化財)は、平安時代の造像から一度も外に出たことがないもので「千年の扉を開く門外不出の神像」だそうです。

また、2017年8月に、鳥取大山寺の小金銅仏観音像(白鳳時代・重文)とそっくりの兄弟仏であることが判明して話題となった、金沢市西光寺の小金銅仏像も出展されます。
この発見・判明ニュースについては、本HP「特選情報」(2017.9.2)で、以前ご紹介していますので、ご覧ください。

       

兄弟仏とみられる小金銅仏観音像〜(左)金沢・西光寺像、(右)鳥取・大山寺像(白鳳時代・重文)





●京都・龍谷ミュージアムで「因幡堂 平等寺展」開催(4/20〜6/9) (2019年3月30日‎)



京都市下京区の龍谷大学・龍谷ミュージアムで、企画展「因幡堂 平等寺」が開催されます。

開催期間は、2019年4月20日(土)〜6月9日(日)です。
詳しくは、
龍谷ミュージアムHPならびに展覧会ページをご覧ください。

因幡堂平等寺は、天竺伝来の薬師像が、因幡国から飛来した本尊が祀られると伝えられることで知られていますが、今般、本堂の内装修復工事が行われることに伴い、平等寺の宝物、文化財の全てが公開される展覧会が開催されるものです。

龍谷ミュージアム・展覧会ページには、開催趣旨が次のように記されています。

「京洛のほぼ中央、烏丸高辻に伽藍を構える因幡堂平等寺は、平安時代の創建時に遡る本尊薬師如来立像(重文・1003年頃)を祀る古刹です。
この本尊薬師如来は、天竺伝来とされる霊像が因幡国(鳥取県)から都に飛来してきたと伝え、善光寺阿弥陀三尊像・清涼寺釈迦如来立像とともに、『日本三如来』と称されます。
この創建にまつわる説話は、鎌倉時代の『因幡堂縁起』に綴られ、創建後は市中の『町堂(辻堂)』として京都の町衆の篤い信仰に支えられてきました。
この度、平等寺本堂の内装改修工事が行われるのにあわせ、同寺の本尊をはじめとする霊宝のすべてと、現在は東京国立博物館所蔵の『因幡堂縁起』1巻(重文)とともに展観する初めての機会となります。」


最大の注目は、共に因幡の国から飛来したと伝える、2体の薬師如来像が、同時に展示されることです。

京都市・因幡堂平等寺の薬師如来立像(平安・重文)と、岐阜市・延算寺の薬師如来立像(平安・重文)です。

因幡堂本尊は、因幡堂縁起によると、
「長徳3年(997)、因幡国国司・橘行平が任終わって帰洛の途中、急病にかかり回復祈願した処、因幡賀留津(いなばかるつ)の海中の浮木を供養せよとの夢告があり、探し出すと薬師如来像であり仮堂に安置した。
長保5年(1003年)、橘行平屋敷の戸を叩くものがあり、それは因幡からはるばる虚空を飛来してきた薬師像であった。
行平は高辻烏丸の屋敷に薬師像を祀ったのが、因幡薬師平等寺の起源である。」
と伝えられています。
現存薬師像は、この縁起の記す通りの長保5年(1003年)頃の制作とみられています。

一方、延算寺本尊は、
「延暦24年(805)に、最澄が唐より帰朝し、西国から上洛の途中、因幡国岩井郡岩井山の麓で一木をもって薬師尊像二体を彫刻し、一体をその地に留め、一体を護持して上洛し、比叡山の本尊とした。
因幡国にあった尊像は、やがて東を指して飛び去り、当地に至った。
その頃、当地で草庵を結んで修行に励んでいた比丘は、像を盥の上に安置した。
この『盥の尊像』を祀る一堂を建立したのが、延算寺である。」
と伝えられます。
この像は、因幡堂像よりも、量感も豊かで古様な感じで、10世紀半ばから後半の制作とみられています。


       
(左)因幡堂平等寺・薬師如来立像(平安・重文)、(右)延算寺・薬師如来立像(平安・重文)


興味深いのは、共に「因幡の国から飛来した薬師像」と伝えられるばかりではなく、造形、構造などに、一脈通じ合う処があることです。
像高153pは一緒で、顔貌の表情、衣文表現(腹部下方のY字状、大腿部周辺のU字状衣文)などの他、頭体通じての一木、内刳りなしの構造も、類似しています。

この二つの薬師像は、因幡の国飛来伝説と併せて、何らかの共通する造像背景にあるのではないかとみられています。

この二つの「因幡の国飛来薬師像」が、同時に展示されるのは、今回が初めてではないかと思います。
因幡堂平等寺像は、普段は非公開ですし、延算寺像は年に一日、5月5日限り開帳の秘仏となっています。

両像を同時に観ることができるまたとない機会で、必見の展覧会かと思います。


その他にも、東博蔵・因幡堂縁起(鎌倉・重文)、平等寺・阿弥陀如来像(鎌倉)、西念寺・阿弥陀如来像(鎌倉)などが展示されます。





●下田市・上原美術館で「伊豆半島仏像めぐり展」開催(4/6〜6/30) (2019年3月30日‎)


静岡県下田市の上原美術館で、特別展「伊豆半島仏像めぐり」が開催されます。

 


開催期間は、2019 年4 月6 日(土)〜6 月30 日(日) です。
詳しくは、
上原美術館HP展覧会ページをご覧ください。

展覧会開催趣旨については、

「本展は、伊豆に存在する7つの市と6つの町からそれぞれ1点ずつ仏像を選び、展示いたします。
時代は平安時代から江戸時代まで、大きさも選ばれた基準も様々ですが、それぞれ各地の人々の信仰を集め、守り伝えられてきた貴重な文化財です。
13市町出身の個性的な仏像との出会いを通じて、伊豆の歴史と文化に触れ、その魅力を再発見していただければ幸いです。」

と、HP展覧会ページに記されています。


出展される仏像は、展覧会チラシによると、ご覧のような仏像が出展されるようです。

 





●東京国立博物館で「国宝 東寺〜空海と仏像曼荼羅展」開催(3/26〜6/2) (2019年3月16日‎)



東京国立博物館で特別展「国宝 東寺―空海と仏像曼荼羅」が開催されます。

開催期間は、2019年3月26日(火)〜6月2日(日)です。
詳しくは、
東京国立博物館HP展覧会ページ展覧会公式サイトをご覧ください。

この展覧会が開催されることについては、皆さん、よくご存じのことと思います。

空海にまつわる数々の名宝をはじめ、東寺に伝わる文化財の全貌を紹介する展覧会です。
東寺の文化財の展覧会は、これまでも何度か開催されていますが、今回の最大の見どころは、東寺講堂安置の立体曼荼羅諸仏像21体のうち、史上最多となる15体(国宝11体、重文4体)が出展されることです。
国宝11体は、360度ビューで観ることが出来るということで、たいへん楽しみです。

これらの諸像の他には、兜跋毘沙門天立像(唐時代・国宝)、観智院・五大虚空蔵菩薩坐像のうち2体が出展されます。

仏像の他にも、風信帖、降三世明王図、十二天屏風、両界曼荼羅図といった国宝名品なども出展されます。

必見の展覧会です。


 
展覧会に出展される東寺講堂・諸尊像15体の立体曼荼羅イメージ写真





●永青文庫で「石からうまれた仏たち〜東洋彫刻コレクション展」開催(1/12〜4/10) (2019年1月6日‎)



東京都文京区の永青文庫美術館で「石からうまれた仏たち〜永青文庫の東洋彫刻コレクション」展が開催されます。

開催期間は、2019年1月12日(土)〜4月10日(水)です。
詳しくは、
永青文庫HP展覧会ページをご覧ください。

本展覧会は、永青文庫所蔵の中国石仏を中心とした東洋彫刻コレクションを一挙に紹介する展覧会です。
永青文庫所蔵の東洋彫刻は、同文庫設立者の細川護立が蒐集した中国の石仏金銅仏、インドや東南アジアの彫刻で構成されています。

展覧会ページによると、

「このたび専門家の協力を得て、これら東洋彫刻コレクションの調査を行いました。
本展では、調査の成果に基づき、「菩薩半跏思惟像」や「如来坐像」(いずれも重要文化財)をはじめとする中国彫刻、ほとんどが初公開となるインド彫刻を一挙に紹介し、あわせて個人蔵の貴重な中国金銅仏を特別に展示します。」

ということです。

永青文庫所蔵の中国仏と云えば、数少ない南朝作例とされる劉宋代、元嘉14年銘(437)の金銅仏坐像が有名ですが、今回の展覧会では、これまでの永青文庫の仏像展示には出展されなかった東洋彫刻が見ることが出来るのではないかと思います。
中国、アジアの仏像彫刻に関心のある方には、見逃せない展覧会なのではないでしょうか。


     
元嘉14年(437年)銘如来坐像(重文)      北魏時代 菩薩半跏像(重文)       唐時代 如来坐像(重文)


本展覧会の記念講演会として、

「永青文庫の中国石仏〜早崎吉が将来した名品」  (講師:石松日奈子氏・東京国立博物館客員研究員)

が、3月10日(土)に開催されます。
詳しい内容、申込方法などは展覧会ページをご覧ください。

演題に名前がある早崎吉というのは、永青文庫の中国仏像彫刻コレクションの大部分を蒐集所蔵していた人物です。

早崎吉の名は、今ではほとんど知られていないのではないかと思いますが、明治〜昭和初期にかけて、中国美術の紹介者、専門家、蒐集家として先駆的役割を果たした人物です。
早崎は東京美術学校の出身で、岡倉天心が明治26年(1892)に中国美術調査に赴き、日本人として初めて龍門石窟を発見、紹介したときに、ただ一人同行しました。
その後は、中国美術の専門家として何度も中国に滞在し、日本やアメリカに数多くの優品を将来しました。
岡倉天心によるボストン美術館の中国美術蒐集に、実際に関わりコレクション形成に大きな役割を果たしたのは早崎吉でした。

東京国立博物館、奈良国立博物館に所蔵陳列されている、有名な中国唐代の宝慶寺石仏群は、早崎吉が明治39年(1905)に日本にもたらし、蒐集所蔵していたものです。
そのほとんどが、昭和初年に細川護立のコレクションになりましたが、その後、国に寄贈されたものです。


       
細川護立氏寄贈の東京国立博物館・中国陝西省西安宝慶寺石仏〜(左)十一面観音龕、(右)三尊仏龕


この「早崎吉が将来した名品」についての講演会は、大変興味深いものだと思います。





●京都文化博物館で「古社寺保存法の時代展」開催(1/5〜3/3) (2018年12月29日‎)


京都市中京区の京都文化博物館で京の至宝と文化「古社寺保存法の時代」の総合展示が開催されます。

 


展示期間は2019年1月5日(土)〜3月3日(日)です。
詳しくは、
京都文化博物館HP展覧会ページをご覧ください。

この展示は、特別展ではなく総合展示のなかの特集形式のように開催されるようです。
仏像などの展示は無いようですが、興味深いテーマですので、ご紹介させていただきました。

本展示は、京都文化博物館・展覧会ページによると、

「明治時代に制定された古社寺保存法は、近現代の日本における文化財保護の礎となった法律です。
・・・・・・
この法律は、昭和4年(1929)に国宝保存法に発展解消されるまで施行され、現代まで連綿と続く我が国の文化財保護行政にとっての極めて重要な出発点となりました。
・・・・・・
本展示では、京都府に残る数々の行政文書や記録、当時の修理を受けた貴重な書画などをご覧いただきながら、近代という激動の時代を背景に生まれ出た日本の文化財保護のあゆみと、様々な社会的取り組みについて御紹介します。」

というものです。


どのような史料や文化財などが展示されるのかは、よくわからないのですが、明治30年に制定された「古社寺保存法」周辺の時代の、京都における古社寺の文化財保護、保存について振り返ってみることが出来る、興味深い展示会なのではないかと思います。








【過去の展示会情報】

2000年上半期

2000年下半期

2001年上半期

2001年下半期

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

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2015年

2016年

2017年

2018年

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