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ご 紹 介


ちょっと耳寄りな、新刊情報、講演会、シンポジウム、見学会等のご紹介です。


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●新刊情報〜「高槻の仏像」(高槻市しろあと歴史館刊)が刊行 (2020年12月10日)


高槻市立しろあと歴史館から、市内の仏像を総集した「高槻の仏像」が刊行されました。


「高槻の仏像」 高槻市しろあと歴史館編集発行 2020年10月刊 【90P】




高槻市には、見処ある古仏がいくつも残されています。

なかでも慶瑞寺・菩薩坐像(奈良末〜平安・重文)、廣智寺・多臂観世音菩薩立像(奈良末〜平安・府指定)、安岡寺・千手観音坐像(平安・重文)などは、奈良末〜平安中期の注目すべき木彫像として知られています。
また、檀像風の本山寺・聖観音立像(平安・重文)は、奈良博寄託中で、なら仏像館でよく見かける優品です。

   
本書掲載(左)慶瑞寺・菩薩坐像(奈良末〜平安・重文)   (右)廣智寺・多臂観世音菩薩立像(奈良末〜平安・府指定)

本書は、これらの諸像をはじめとして、これまで高槻市立しろあと歴史館が実施してきた仏像の調査成果を取りまとめた図録、解説書と刊行されたものです。
高槻市の仏像(彫刻)、47躯が収録されています。

早速入手して一覧しました。
90ページの図録風刊行物ですが、諸像の全体、拡大写真が豊富に掲載され、コンパクトにまとめられた作品解説が付されています。
嬉しいのは、頒価が【600円】で、こんなに廉価でいいのかなと心配になる値段です。
仏像愛好の方々には、是非とも入手をお薦めします。

購入方法などは、
しろあと歴史館HPしろあと歴史館の刊行物ページをご覧ください。
郵送による購入も可能です。






●九博シンポジウム「阿修羅像〜天平の心と技を未来へ」が無料動画配信中 (2020年7月16日)


2018年3月に九州国立博物館で開催された興福寺シンポジウム「阿修羅像〜天平の心と技を未来へ」が無料動画配信されています。

全編、2時間47分という長時間で、シンポジウムの全ての内容が収録されています。
本シンポジウムの共催者であった朝日新聞社によって配信されているもので、視聴には、特設ページ
「朝日ID興福寺阿修羅」(動画配信 興福寺シンポジウム「阿修羅像 天平の心と技を未来へ」)からの申し込みが必要です。

配信期間は2021年1月11日までです。

この九博開催シンポジウム「阿修羅像〜天平の心と技を未来へ」のプロブラムは、次のとおりです。




2009年に東博・九博で「国宝阿修羅展」が開催されたのを機に、文化財用大型CTスキャナを用いた内部構造調査など、多面的な科学的調査研究が徹底して実施されました。
その後、8年かけて行われた解析により、新たな事実がいくつも判明しました。
「阿修羅像は、やはり元から、合掌していた。」
「阿修羅像の塑像原型は、今のお顔と全く違う、厳しく怖い表情であった。」
という、科学的調査の結果が公表され、新聞、TVなどで大きく報道されるなど、大きな話題を呼んだことはご存じの通りです。
本シンポジウムは、これらの調査研究の集大成の発表シンポジウムというものではないかと思います。

  
九州国立博物館開催・興福寺シンポジウム「阿修羅像 天平の心と技を未来へ」チラシ

今回の無料動画配信は、新型コロナウィルス感染拡大のなかで、リモート対応ということで実施されることになったようです。
最新の研究成果を、豊富なCT画像などと共に、約3時間にわたって、じっくりと聴くこと出来ます。
2年前のシンポジウムではありますが、自宅でそのすべてを視聴できるというのは、大変ありがたく嬉しいことです。

なお、このシンポジウムのまとめ的な本として、
「阿修羅像のひみつ」 興福寺監修 2018年8月 朝日新聞出版刊(朝日選書) 1700円 〜2018.05このコーナーにてご紹介〜
が出版されています。






●新刊情報〜「法隆寺〜美術史研究のあゆみ」大橋一章・片岡直樹編著 (2019年5月18日)


里文出版から刊行されている、奈良六大寺の「美術史研究のあゆみシリーズ」の「法隆寺編」が、この度、出版されました。


「法隆寺〜美術史研究のあゆみ」 大橋一章・片岡直樹編著 2019年4月 里文出版刊 【399P】 2500円


 


全12章で構成されていますが、内容をイメージしていただくために、第3章までの目次・項立てをご紹介するとご覧のとおりです。




この「美術史研究のあゆみシリーズ」は、現在、早稲田大学名誉教授の大橋一章氏を中心にまとめられ、刊行が続けられているものです。
テーマ別に、研究史についての概説が、コンパクトにまとめられ、過去の研究、論争、最新の研究成果、課題などが、大変わかりやすく、読みやすく述べられています。
一般の解説書から、一歩踏み込んだ研究史の概説、解説書と云えるものだと思います。


「法隆寺編」については、20余年前、1998年に、「法隆寺美術・論争の視点」という書名で、グラフ社から刊行されていました。

新刊「法隆寺〜美術史研究のあゆみ」は、旧刊の「法隆寺美術・論争の視点」を、改訂増補し、近年の研究成果を盛り込んだものになっています。

本書の「まえがき」に、改訂新版刊行趣旨について、このように記されています。

「本書は私たちが平成10年にまとめた『法隆寺美術 論争の視点』(グラフ社刊)を再構成したものである。
しかしながら前書の刊行からすでに20年もの歳月を経たため、この間になされた調査、発表された論文はかなりの数にのぼる。
そのため本書ではこれら最新の研究成果を漏れなく紹介すべく大幅な加筆をおこなった。
また前書で不十分であった箇所については全面的にこれを書き改めたため、本書の内容は前書とは大きく異なるものとなっている。」

旧刊「法隆寺美術・論争の視点」をお持ちの方も、その後20年の研究成果がまとめられていますので、本新刊を読んでみる値打ちは充分あろうかと思われます。

本書の刊行により、2000年以来、里文出版から「美術史研究のあゆみ」と題されて出版されてきた、奈良六大寺の研究史シリーズは、完結ということになるのだと思います。
これまで刊行されてきた研究史史シリーズについては、

観仏日々帖「新刊旧刊案内〜『唐招提寺〜美術史研究のあゆみ』と 研究史本いろいろ」
本HP【ご紹介】「新刊情報『西大寺〜美術史研究のあゆみ』大橋一章・松原智美編著」

で、ご紹介したことがありますので、参考にしていただければと思います。






●新刊情報〜「阿修羅像のひみつ」 興福寺監修・朝日新聞出版刊(2018年8月25日)


興福寺・阿修羅像のX線CT調査など、最新の科学的調査による研究成果をまとめた本が発刊されました。


「阿修羅像のひみつ」 興福寺監修 2018年8月 朝日新聞出版刊(朝日選書) 【195P】 1700円

多川俊映、今津節生、楠井隆志、山崎隆之、矢野健一郎、杉山淳司、小滝ちひろ 共著


興福寺監修で「阿修羅像のひみつ」という題名の本といわれると、「阿修羅像の魅力やいわれ」などについての一般向けの本なのかなと思ってしまいますが、そうではありませんでした。


  


AMAZONの内容紹介には、このように書かれています。

「天平の至宝、興福寺阿修羅像等は2009年に九州国立博物館でX線CTスキャナで撮影された。
3面の下に別な顔があった、正面で合掌していたなど、驚くべき発見があった。
9年に及ぶ画像解析の成果を所蔵者、保存科学、美術史、彫刻家、木材学の専門家が明かす。」


目次をご覧ください。





ご覧いただくと、阿修羅像の科学的調査の研究成果を、分野別の担当研究者がコンパクトにまとめて執筆した本であることが判ると思います。

阿修羅像は、2009年に東京国立博物館と九州国立博物館で「国宝 阿修羅展」が開催されたときに、九博で文化財用の大型CTスキャンを用いて、阿修羅像など八部衆・十大弟子のうち9体についての内部構造調査などが実施されました。
その研究成果については、昨年から、何度かのシンポジウムの開催や講演会などで発表されています。
本書の目次を見ると、そこで発表された内容について、単行本化して発刊されたもののようです。

皆さん、ご存じのとおり、最近、
「阿修羅像は、やはり元から、合掌していた。」
「阿修羅像の塑像原型は、今のお顔と全く違う、厳しく怖い表情であった。」
という、科学的調査の結果が公表され、新聞、TVなどで大きく報道されるなど、大変話題を呼んでいます。

本書を読むと、こうした問題についてのX線CTスキャン調査の調査手法、調査研究成果などが、詳しく述べられています。
調査によって判明した新事実、そこから浮かび上がった研究成果などについて、判りやすく理解できます。

朝日選書の1冊として発刊されましたので、もっと読み物的な内容かと思ったのですが、シンポジウム発表内容など調査研究結果報告のサマライズ版といった内容です。
こうしたテーマにご関心深い方には、しっかり読みごたえがある必読本ではないかと思います。

なお、阿修羅像等の科学的調査研究結果については、「学術的な調査結果報告書」の刊行準備が進められているということです。





●新刊情報〜「法隆寺史・上」(法隆寺編)が刊行 (2018.4)(2018年6月23日)


法隆寺の1400年に及ぶ歴史を通観する本が刊行されました。


「法隆寺史・上〜古代 中世」法隆寺編・編纂委員長 鈴木嘉吉 2018年4月 思文閣刊 【554P】 6800円





上巻(古代中世)・中巻(近世)・下巻(近代)の3巻で刊行される予定です。


上巻〜古代中世〜の目次は、次のとおりです。




出版元・
思文閣のHPには、このように紹介されています。

「『法隆寺初の寺史』と聞いて意外に思われる方も多いと思います。
研究史上でも重厚な蓄積がありますが、『法隆寺編』の寺史が発行されるのはこれが初めてです。
第1巻は古代・中世。法隆寺の再建・非再建論争や太子信仰の展開など、注目のテーマを多く扱います。
続巻では、まだ十分に論じられていない近世・近代を扱いますので多くの新知見を提供できるはず。
続巻にもご注目ください。」

法隆寺についての本は、これまで、数え切れないほど刊行されていて、法隆寺の通史についてまとめられた単行本も、勿論刊行されているように思っていました。
そういわれると、法隆寺の草創から近代にいたるまでの寺史について、専門家の執筆でしっかりとまとめられた通史の本は、無かったようです。
執筆内容も、しっかりとした学術的レベルで論じられており、法隆寺史の定本と云ってもよい本になりそうです。

毎年1巻ずつの刊行予定で、聖徳太子の1400年忌にあたる平成33年の完成を目指しているということです。





●新刊情報「西大寺〜美術史研究のあゆみ」大橋一章・松原智美編著(2018年2月24日)


奈良六大寺の「美術史研究のあゆみシリーズ」の「西大寺編」が刊行されました。

「西大寺〜美術史研究のあゆみ」 大橋一章・松原智美編著 2018年1月 里文出版刊 【268P】2700円

本書は、西大寺の仏教美術についての最新の研究成果と、これまでの研究史をテーマ別にまとめた一冊です。

ご覧のような項立て、執筆者となっています。


 


テーマ別に、研究史についての概説が、コンパクトにまとめられ、過去の研究、論争、最新の研究成果、課題などが、大変わかりやすく、読みやすく述べられています。
一般の解説書から、一歩踏み込んだ研究史の概説、解説書と云えるものだと思います。

この「美術史研究のあゆみシリーズ」は、現在、早稲田大学名誉教授の大橋一章氏を中心にまとめられ、刊行が続けられているものです。
20年前、1998年に「法隆寺美術論争の視点」が刊行されて以来、「薬師寺」「東大寺」「興福寺」「唐招提寺」の順に刊行され、今回の「西大寺」で、奈良六大寺の「美術史研究のあゆみシリーズ」が完結したということなのだと思います。

これらの「研究史シリーズ」については、観仏日々帖
「新刊旧刊案内〜『唐招提寺〜美術史研究のあゆみ』と 研究史本いろいろ」 でご紹介していますので、ご覧ください。





●神奈川県立金沢文庫で、運慶関連講座・講演会が連続開催(2018年1〜3月)(2017年12月31日)


横浜市金沢区の神奈川県立金沢文庫は、特別展「運慶〜鎌倉幕府と霊験伝説」が開催されますが、開催に際して、興味深い運慶関連講座が多数開催されます。

開催講座・講演会の日時と内容の一覧は、ご覧のとおりです。






申込方法、申し込み締め切り日等の詳細は、
金沢文庫HP講演会講座ページ(神奈川県HP・金沢文庫講座講演会のお知らせページ)をご覧になり、御確認下さい。

これだけ充実した運慶関連テーマの講座、講演会が連続開催されるというのは、そうめったの無いのではと思われます。
それぞれ、興味深いのテーマです。

とりわけ「運慶研究の現在」と題する、全6回の連続講演会は、それぞれのテーマが掘り下げた充実したもののように思われ、興味津々で聴いてみたくなります。
ご関心のある方は、是非お出かけ下さい。





●新刊情報〜「運慶大全」山本勉監修・小学館刊が刊行(2017年9月23日)


「天才仏師・運慶の全仕事を完全網羅した本格的作品集」と銘打った、「運慶大全」が刊行されました。
監修は、運慶研究の第一人者、山本勉氏です。

「運慶大全」 山本勉監修 2017年9月  小学館刊 【392P】 60000円


東博での「運慶展」開催に合わせて、数多くの運慶関連本が発刊されています。
そのなかで、本書は「運慶作品図版集の定本」となろうかというものですので、ご紹介させていただきました。

本書発刊についてはは、小学館創立95周年企画ということで、幅広く広宣されていますので、皆さんご存知のことと思います。
小学館では
「運慶大全専用の特設サイト」まで開かれており、並々ならぬ力の入り方が伺えます。
本書の内容については、特設サイトに詳しく紹介されていますので、そちらをご覧ください。

本書の概要については、

「唯一無二の天才仏師・運慶による全仏像を網羅する、初の本格的全作品集が完成しました。
全作品35躯すべての『原寸図版』を掲載し、通常みられない彫像の姿から『運慶参考作品』まで集成した完全版です。
単なる仏像写真集の枠を超えて、類のない充実した内容、運慶の全貌を明らかにします。」

と記されています。

本書の最大の特色は、運慶作品についての、B4版(見開きB3版)というビッグサイズの精密図版が、側面、背後からの姿や、像底まであらゆる角度から掲載されていること、像内銘の写真、X線写真などの科学的調査画像が豊富に掲載されていることであろうかと思われます。

  
「運慶大全」に掲載の無着世親像、東大寺南大門・仁王像の図版

また「運慶の軌跡」と題する山本勉氏の論考、運慶年表、運慶史料などが収録されています。

運慶作品を網羅した図版集、研究書としては、1974年に平凡社から刊行された、「運慶の彫刻」久野健著をあげることができますが、今般刊行された「運慶大全」は、運慶作品の図版集、史料集としての、最新の底本となるものだろうと思います。

ただし、「定価60000円」という、ビックリするほどの高価な本で、なかなか個人では手の出るものではないのが、悩ましい処です。





●奈良大学でシンポジウム「阿修羅像を未来へ受け渡すために」開催(9/23)(2017年9月16日)



奈良大学で、シンポジウム「阿修羅像を未来へ受け渡すために」が開催されます。
開催日時は、2017年9月23日(土) 13:30〜16:20 です。

当日先着1000名、参加は無料です。
詳しくは、奈良大学HP・
イベント講座情報ページ奈良大学シンポジウムチラシ・ページをご覧ください。

皆さん、ご存じのとおり、最近、
「阿修羅像は、やはり元から、合掌していた。」
「阿修羅像の塑像原型は、今のお顔と全く違う、厳しく怖い表情であった。」
という、科学的調査の結果が公表され、新聞、TVなどで大きく報道されるなど、大変話題を呼んでいます。

このあたりの話については、  観仏日々帖「興福寺・阿修羅像は、合掌していたのか?」【その1】  【その2】  で、概略ご紹介させていただきました。

これらの調査研究成果を総括するシンポジウムが、奈良大学で開催されます。

シンポジウム開催趣旨には、このように記されています。

「2009年に九州国立博物館で特別展が開催された際に、文化財用の大型CTスキャンを用いて、阿修羅像など八部衆・十大弟子のうち9体について健康診断や内部構造調査を実施しました。
その結果、驚くべき多くの新しい発見がありました。
その成果は、『興福寺シンポジウム阿修縦像を未来へ』(有楽町朝日ホール)、『阿修羅1300年の新事実』(NHK総合)として紹介されました。

このたび、これまでの研究成果に新発見を加えて、CTスキャンによる阿修羅像の調査研究を総括いたします。
本シンポジウムが阿修総像研究の新しい基盤となると共に、“文化財を未来に受け渡すために、未来を担う若者に文化財の大切さを伝えたい”という願いをこめて、奈良大学を会場にシンポジウムを開催いたします。」

シンポジウムのプログラムは、ご覧のとおりです。






近時、注目の、阿修羅像の科学的調査の研究結果などが、大変詳しくじっくりと聞ける、まことに興味深いシンポジウムです。
是非お出かけください。





●東京国立博物館で連続講座「日本における美術史学の誕生」開催(11/17〜18)(2017年9月9日)


東京国立博物館で、連続講座「日本における美術史学の誕生」が開催されます。

明治時代の近代日本美術史学の歴史についてご関心のある方には、大変興味深く逃せない講演会です。

講演会開催趣旨については、

日本における美術史学はどのように誕生したのでしょうか。
それを知る手がかりの一つが明治34年(1901)に刊行された『稿本日本帝国美術略史」です。
今年の連続講座では、特集「明治時代の日本美術史編纂」の展示(2017年10月3日(火)〜11月26日(日)まで本館15室)を機に、日本や東洋における美術史学の歴史を振り返ります。

と述べられています。

連続講演会開催日時は、2017年11月17日(金)・11月18日(土)の13:30〜17:00となっており、演題、講師等のプログラムは、以下のとおりです。






参加申し込みは、往復はがきにて10/10(火)必着となっています。
詳しくは、東京国立博物館HP・
連続講座ページをご覧ください。

仏像の講演会ではないのですが、私には大変関心あるテーマで、是非聴きに行きたいと思っています。





●調布市深大寺で「深大寺白鳳仏国宝指定記念講演会」開催中 (第2回8/26)(2017年8月5日)


東京都調布市の深大寺で「深大寺白鳳仏国宝指定記念講演会」が、全7回で連続開催されています。

  深大寺の白鳳仏、銅造釈迦如来倚像が、本年「国宝」に指定されましたが、これを記念して、全7回シリーズの記念講演会が開催されているものです。

開催予定、講演テーマ、講師などは、ご覧のとおりです。






実は、このような連続講演会が開催されるということを知らなくて、第1回の講演会終了後に、このような講演会が開催されている情報を知りました。

深大寺・銅造釈迦如来倚像
8月26日には、第2回「深大寺釈迦如来像の源流」(講師:村松哲文氏)が開催されます。
講演内容主旨は、以下のとおりです。

「深大寺の国宝・釈迦如来像の特徴である倚坐(椅子に座った姿)、童子形(子供のような表情)という2つのキーワードを手掛かりに、その源流について考えます。
特に中国南北朝期の仏像、朝鮮三国時代の仏像と照らし合わせながら、深大寺・国宝仏の魅力に迫りたいと思います。」

講演会参加(無料)については、開催各回の都度の事前申し込みで、今回分は、参加希望往復はがきを、「8/14(月)まで必着」で調布市郷土博物館へ郵送となっています。

詳しい講演会開催要領、申し込み方法等は、

調布市HP(郷土博物館)国宝指定記念講演会第二回「深大寺釈迦如来像の源流」
深大寺HP・お知らせ「白鳳仏国宝指定記念講演会【全7回】」

をご覧ください。

講演テーマを見ると、大変興味深い演題が並んでいます。
第1回を逃してしまったのは残念ですが、都合が付けば、講演を聞いてみたいものです。





●新刊情報〜月刊ならら6月号に「仏像に魅入られた男 写真家・小川光三の仕事」が特集(2017年7月22日)


仏像写真で知られる「飛鳥園」の小川光三氏が、昨年(2016)6月、88歳で亡くなったことは、皆さん、新聞報道等でよくご存じのことと思います。

父、小川晴暘氏は、奈良・飛鳥園の創設者で、その功績、業績については、今更語る必要もない仏像写真家です。
光三氏は、昭和25年、父の跡を継ぎ、美しく魅惑的な仏像写真で、現代を代表する仏像写真家の第一人者でした。


その飛鳥園・小川光三氏を偲び、仕事を振り返る「特集号」が、「月刊ならら」から発刊されました。

「仏像に魅入られた男 写真家・小川光三の仕事」    月刊大和路ならら2017年6月号 地域情報ネットワーク刊 500円

  



特集内容の目次は、ご覧のとおりです。






飛鳥園、小川光三氏について、その人間性、仕事の有様など、大変興味深い内容で、「奈良飛鳥園」「仏像写真家・小川光三」についてご関心のある方には、必読と云えると思います。


また、「月刊大和路ならら」では、4年前の2013年3月号で、光三氏の父、飛鳥園・小川晴暘氏の特集号

「仏像写真を芸術に高めた男 小川晴暘と飛鳥園」

が発刊されています。
こちらの内容については、観仏日々帖「新刊・旧刊案内〜
「小川晴暘と飛鳥園」 月刊大和路ならら 3月号」で、ご紹介しています。


バックナンバーの「小川晴暘特集号」も、今でも購入可能なようです。
月刊大和路なららHPから、注文可能です。





●世田谷区・九品仏浄真寺で、講演会「仏像修理物語〜九品仏阿弥陀如来坐像修理の実際」開催(11/26)(2016年11月19日)



九品仏(九品の阿弥陀如来像)でしられる、東京都世田谷区の浄真寺で、「仏像修理物語〜九品仏阿弥陀如来坐像修理の実際」と題する講演会が、2016年11月26日に、開催されます。

開催要領は、以下のとおりです。




詳しくは、世田谷区HP・
浄真寺講演会ページをご覧ください。

ご存じのとおり、九品仏浄真寺には、9躯の丈六阿弥陀如来坐像が、3つの阿弥陀堂に安置されています。
上品上生から下品下生まで、1躯ずつ異なった印相で造られている、大変珍しい九品阿弥陀仏像です。
江戸時代の制作で、東京都指定文化財に指定されています。

九品阿弥陀像は、江戸時代の制作ですが、極めて優れた造形の優作です。
3メートル弱の阿弥陀像が、各堂に3躯ずつ安置された有様は、壮観です。

   
(左)阿弥陀堂安置の九品仏像と、中品中生像(左・修理前、右・修理後)

この九品阿弥陀仏像は、近年傷みが目立つようになり、平成26年度から45年度まで、1躯の修理に約2年をかけ、20年をかけて順次修理が進められることとなりました。
修理は、京都の財団法人・美術院の工房にて行われています。
最初に修理された「中品中生像」は、今年(2016年)3月に修理を終えて、阿弥陀堂に戻り祀られました。
現在は、「中品上生像」が、京都・美術院工房にて修理中です。

この講演会は、世田谷区教育員会の主催により実施されるもので、九品仏阿弥陀如来坐像(中品中生像)の修理内容について、美術院の修理技術者の八坂寿史の講演が開催されるとともに、修理が終わった中品中生像の特別公開が行われます。

仏像修理修復の実際にふれることのできる、大変興味深い講演会だと思い、ご紹介させていただきました。





●帝塚山大学で公開講座「奈良の写真史〜工藤利三郎から入江泰吉まで」開催(12/3)(2016年11月19日)


奈良市帝塚山の帝塚山大学で、市民大学講座「奈良の写真史〜工藤利三郎から入江泰吉まで」が、開催されます。

開催要領は、次のとおりです。




詳しくは、帝塚山大学HP・
公開講座ページをご覧ください。

この講演会は、帝塚山大学付属博物館で開催される「永野太造展〜永野鹿鳴荘ガラス乾板資料を中心に」(2016年12月3日〜12月17日開催)の関連講座として開催されるものです。
「永野太造展〜永野鹿鳴荘ガラス乾板資料を中心に」は、同博物館の企画展示となるもので、昨年帝塚山大学に寄贈された永野鹿鳴荘ガラス乾板資料を中心に、写真機材、関連資料を展示し、仏像写真家・永野太造の作品像に迫る展示会です。
(詳しくは、帝塚山大学付属博物館企画展示ページ参照)

この講演会は、明治以降の近代奈良の古寺、古仏の写真家について、その作品、足跡などをたどる内容かと思います。

私には、近代奈良の仏像写真家については関心の大きなテーマで、かつて本HPに「奈良の仏像写真家たちと、その先駆者」(埃まみれの書棚から・第27話)と題する話を掲載させていただいたことがあります。
ご関心のある方は、そちらもご覧いただければと思います。

興味深い講演会で、是非聴いてみたいのですが、関西まで出かけるのは、ちょっと難しそうです。





●新刊情報「韓国仏像史〜三国時代から朝鮮王朝まで」水野さや著(2016年11月5日)


韓国の仏像彫刻通史の単行本が刊行されました。


「韓国仏像史〜三国時代から朝鮮王朝まで」水野さや著   2016年8月 名古屋大学出版会刊 【304P】 4800円

      


これまで韓国の仏像についての通史を解説した本と云えば、秦弘燮著「韓国の仏像」1979年・学生社刊ぐらいしか無かったのではないかと思います。
それから、30年近く経ちますが、その後は韓国仏像を通史的に論じ解説した本は出版されることは、ありませんでした。

今般、水野さや氏著の本書が刊行され、最新の研究成果による韓国仏像通史本が、ようやく刊行されたといってよいのかもしれません。
目次は、ご覧のとおりです。




名古屋大学出版会HPには、
「豊かな造形を誇り、独自の美を示して華ひらいた朝鮮半島の仏像史を、わが国で初めて包括的かつ平易に紹介。
古代から近世までの流れを一望にするとともに、日本・中国の作例との深い関連性も縦横に捉えて、東アジア圏での交流の重要性を浮彫りにする。
日本の仏像の理解にも必携の一書。」
と、本書の紹介がされています。

いわゆる通史本ですので、読み物として面白いという内容ではありませんが、著者の韓国仏像研究成果をふまえ、韓国仏像史を論じた密度の濃い内容となっています。

朝鮮の仏像彫刻にご関心のある方には、必携の書と云える本だと思います。





●東京国立博物館で連続講座「仏像三昧」開催(10/21〜23)(2016年8月6日)


東京国立博物館で、連続講座「仏像三昧」が3日間にわたり開催されます。

連続講座の開催趣旨は、東博HPによると、
「秋に開催する2つの展覧会、特別展「平安の秘仏―滋賀・櫟野寺の大観音とみほとけたち」と特別展「禅―心をかたちに―」をより楽しんでいただくための講座です。 当館研究員と館外の講師が特別展出品作品をまじえながら、日本の仏像についてお話します。」
ということです。

開催日は、2016年10月21日(金) 〜 2016年10月23日(日)の3日間連続で、開催時間は毎日13:00〜16:15です。
演題、講師等は、ご覧のとおりです。




参加申し込み締め切りは9月12日(月)〜抽選〜となっています。
詳しい内容、申し込み方法などは、
東京国立博物館HP連続講座「仏像三昧」ページをご覧ください。





●新刊情報「三十三間堂護法神像の謎(抜萃本)」山田泰宏著(2016.6)(2016年7月30日)



京都蓮華王院・三十三間堂の護法神像、即ち、風神雷神像、二十八部衆像の制作時期、制作仏師について考究した本が出版されました。


「三十三間堂護法神像の謎(抜粋本)」〜若き快慶・運慶らの造立か〜

山田泰宏著 2016年6月 創英社/三省堂書店刊 【234P】 1100円

皆さんご存知の通り、三十三間堂の風神雷神像、二十八部衆像は、国宝に指定されている、鎌倉彫刻の傑作です。
本書の著者、山田泰宏氏は、これら諸像の制作者を「若き、快慶、運慶、定慶」の3仏師に比定されています。
その考え方、研究成果などを論述しているのが本書です。

三十三間堂の風神雷神像、二十八部衆像は、明治期には運慶作とされることもあったようですが、、現在は、一般的には、現本尊・千手観音坐像が建長元年(1249)の罹災以降、湛慶一門の手によって再興された時以降に、制作された諸像であるとみられているようです。
これに対して、山田氏は、これらの諸像が建長元年の罹災の時救出された旨の記録があることを重要視し、諸々の研究を進めた結果、元暦2年〜建久元年(1185〜90)頃【第二再興期】に「若き、快慶、運慶、定慶」の手によって制作作されたものと考えられると論じています。

         
三十三間堂・風神雷神像(国宝・鎌倉時代)

山田泰宏氏は、鎌倉国宝館、池上霊宝館などで、学芸員として仏教彫刻を担当、「鎌倉の在銘彫刻」「古仏微笑」などの諸著作がある方です。

まだ、買ったばかりで、内容を読んでみるのはこれからなのですが、従来なかった新たな説を展開する興味深い一書と思い、取り急ぎご紹介しました。

なお、本書の題名に「抜萃本」と付されているのですが、まえがきによれば、個々の尊像の「基礎資料」や「護法神像史年譜」などを収録していない本ということだそうです。
これらを収録した「集成本」を現在企画中で、いずれ刊行される予定とのことです。





●京都・佛教大学四条センターで連続公開講座「美術史家・井上正の眼」開催中(2016年5月22日)


京都市下京区四条烏丸の佛教大学四条センターで、連続公開講座「美術史家・井上正の眼」が開催されています。
仏教美術研究者・故井上正氏の業績と思い出を回顧するという、ユニークな講座です。
既に第2回までは開催済みですが、この公開講座が開催されていることを、直近に知ったばかりで、遅ればせながらご紹介させていただきます。

本年(2016年)4月から、毎月1回、2017年1月までの、連続10回の公開講座です。
現在、第2回までは開催済みで、第3回は6月13日(月)に開催されます。


講座の開催要領、講座内容の概要などは、次の通りです。

◆開 催 要 領




◆講 座 内 容〜全10回のうち第3回目まで(開催日等・内容決定済・含実施済のもの)




詳しくは、佛教大学HP・
四条センター公開講座のご案内ページをご覧ください。

仏教美術史研究者・井上正氏は、2014年6月に85歳で逝去されました。
この講座は、その研究業績や思い出などを各講師が輪番で、評論、回顧するという連続講座ということです。

公開講座開催趣旨には、次のように記されています。

故・井上正氏
「戦後の仏教美術史の世界に大きな変革をもたらした研究者・井上正。

先生の研究は、実物資料の徹底的な観察に立脚し、既存の研究に大転換を迫るものでした。
その業績は、『日本彫刻史基礎資料集成』、『奈良六大寺大観』、『大和古寺大観』などの仏教美術研究におけるの基本文献の作成、康尚、定朝時代の定位、霊木化現仏の発見と奈良時代〜平安時代彫刻史のドラスティックな書き換え、エネルギー化生表現による荘厳の読み解きなど、実に多岐にわたります。
・・・・・・・・・・
佛教大学四条センターとの御縁は1989年から始まり、以後20年以上にわたって、多くの受講生に仏教美術の持つ奥深い魅力を豊かな表現で伝えてこられました。
本講座は、井上先生と縁のある方々をお招きし、先生から受け継いだそれぞれの想いをお話しいただきます。それぞれの講師に受け継がれた眼の人・井上正の姿を皆様にお伝えできるような講座になればと思います。」

井上正氏といえば、
「古仏」・「続・古仏 古密教彫像巡歴」(共に法蔵館刊)の著作や、
芸術新潮での梅原猛氏と共同企画特集の「美術史の革命 出現!謎の仏像」・「【出現! 謎の仏像】第2弾! 謎の仏像を訪ねる旅」(1991年1〜2月号)
などにおいて、きわめてユニークで画期的な木彫史論を主張したことで、よく知られていることと思います。
近年よく使われる「霊木化現仏」という言葉も、井上正氏が用いたことに始まるのではないでしょうか。

その主張のエッセンスなどについては、
観仏日々帖:新刊・旧刊案内〜井上正著「続・古仏 古密教彫像巡歴」【その1】 【その2】
でご紹介していますのでご覧ください。

この井上正氏の、既存の木彫史観に大きな問題提起をなした彫刻史研究の業績を回顧し、思い出を語るという連続講座が、10回にもわたって開催されるというのは、驚きました。
まさに異色の講座で、また興味津々といったところです。

私も、出来ることなら参加したいと思うのですが、関東から都度都度出かけるというのはなかなか難しく、叶いそうにありません。
関西在住の皆さんは、開催の都度、個別に出席可能ということですので、是非出かけて見られれば如何でしょうか。





●山本勉氏によるスペシャルトーク「運慶作品の認定」開催(5/17)(2016年3月26日)



東京都中央区銀座の社団法人・日本アート評価保存協会の5月スペシャルトークにて、山本勉氏「運慶作品の認定」の講演が開催されます。
開催日は、2016年5月17日(水) 18:00〜です。

一般の参加も、申し込めば可能ということです。

スペシャルトークの内容等概要は、次の通りです。

〇テーマ:「運慶作品の認定」
○日時:5月17日(火) 18:00〜 (1時間程度)
○講師: 清泉女子大学 文化史学科教授 山本 勉 氏
○会場:日本アート評価保存協会事務所(東京都中央区銀座7−4−12)
○聴講料:\500
○申込先:日本アート評価保存協会 事務局
メール:info@ja2pa.or.jp   電話:03−3569−1250

申込み締め切り日:先着順です。席がなくなり次第、締め切りと致します。

詳しくは、
日本アート評価保存協会HPスペシャルトークページをご覧ください。


このスペシャルトークがあることは、山本勉氏のTwitterに掲載されていたので、知りました。

(社)日本アート評価保存協会というのは、全く知らなかったのですが、
HPによりますと、
「美術品の公正・適正な価値を提示し、美術品の健全な市場を形成するための施策を総合的に考え、実行していくために設立されました。
多くの方々が安心して市場に参加できるよう、美術に対する正しい知識と情報を提供してゆきます。」
【スペシャルトーク】については、
「若手コレクターの育成事業の一環として、アート業界で活躍する皆様を講師に迎え、スペシャルトークを開催しております。」
ということのようです。

これまでも、
・加島勝氏「法隆寺献納宝物灌頂幡と斑鳩地方の工芸品」
・有賀祥隆氏「再見:法隆寺金堂壁画−第6号壁を中心にして−」
・浅井一春氏「白鳳の仏像−金銅仏を中心に−」
などといった、大変興味深いテーマで開催されています。

ちょっと敷居が高そうな感じもしますが、一般の参加もOKということなので、ご関心ある方へのご参考ということで、お知らせいたしました。


今回のトークテーマ、「運慶作品の認定」という話についてですが、

運慶研究で著名な山本勉氏は、運慶作品もしくは可能性の高い作品として、14件・47躯を示しています。
山本氏は、運慶作品とみられる像を、4つの要件に区分して整理しています。

私の自己流で一覧にしてみると、以下の通りとなります。



昭和30年代に、願成就院像、浄楽寺像が運慶作品と確定するまでは、運慶作と考えられていたのは、円成寺、南大門、北円堂、金剛峯寺、滝山寺、六波羅蜜寺の諸像、重源像ぐらいであったと思います。
ご存じのように、山本勉氏によって、光得寺・大日如来像、眞如苑・大日如来像が運慶作品である可能性が高いとする研究論文が発表され、大きな話題となりました。
その後も、近年続々と運慶作品、推定作品が発見され、あっという間に推定作品を含めれば47躯にもなりました。
これら47躯の諸像は、山本氏編集の最新刊「日本美術全集7巻・鎌倉南北朝時代T・運慶快慶と中世寺院」(2013.12・小学館刊)に、全て掲載されています。

今回のスペシャルトーク「運慶作品の認定」では、運慶研究の第一人者・山本勉氏から、これらの諸像の運慶作品、推定作品と考えられていったプロセスなど、興味深い話が聴けるのではないでしょうか。





●日本橋・奈良まほろば館で、講演会「天皇の棺から阿修羅像へ〜夾紵技術の謎」開催(5/18)(2016年3月26日)



東京都中央区日本橋室町の奈良まほろば館で、宮路淳子氏(奈良女子大学・人文科学系教授)による講演会「天皇の棺から阿修羅像へ〜夾紵技術の謎」開催されます。

開催日時等の要領は、次の通りです。

1.日 時 : 平成28年5月18日(水) 16:30〜(1時間半程度)
2.演 題 : 「天皇の棺から阿修羅像へ―夾紵技術の謎」
3.講 師 : 宮路淳子 氏(奈良女子大学 人文科学系教授)
4.会 場 : 奈良まほろば館2階
5.資料代等: 無料
6.定 員 : 70名(先着順)

詳しい内容、申込方法については、
奈良まほろば館HP講座案内ページをご覧ください。

この講演会は、奈良女子大学連続講座「奈良を拓く」の第13回として開催されるものです。

講演内容の概要については、次の通り記されています。

「古代日本には、ほんの百数十年だけ使われ途絶えた夾紵という漆技術がありました。
夾紵とは、布と漆とを互層に塗りかためながら造形を行うもので、古くは古代中国の戦国時代から使われてきた技術です。
日本では、7世紀の飛鳥時代に、遺体を埋葬する際の棺を作るためにその技術が採用されました。
その技術は一般には広がらず、天皇もしくは非常に身分の高い人が葬られるときにのみ使用されるものでした。

その技術が、その後仏像の造形にも用いられてゆきます。
当麻寺四天王立像や興福寺八部衆立像がその代表例です。
しかしこの技法は、8世紀の奈良時代をもってほぼ途絶えます。
奈良に都が置かれた短い期間だけ、天皇の棺と仏像にのみ用いられた夾紵技術について、最近の科学分析の成果もあわせて解説します。」

なかなか興味深そうな講演会です。
出かけてみようかなと思っています。





●新刊情報「平安密教彫刻論」津田徹英著(2016年3月26日)



東京文化財研究所・企画情報部室長の津田徹英氏の仏教美術論文集が刊行されました。

「平安密教彫刻論」津田徹英著 2016年3月 中央公論美術出版社刊 【808P】 17000円

本書は、2015年に津田徹英氏が慶應義塾大学にて博士の学位をえた、博士論文「平安密教彫刻論」に新たに付論3編を加え単行本化した、大著の論文集です。

新刊案内によれば、
「本書は密教図像学的研究手法を用い、四百年に及ぶ平安密教彫刻のありょうを、図像を忠実に彫像として再現する動向、経典・儀軌の所説に則って図像表現を改変しながら彫像化する動向、既知・既存の図像をもとにして日本独自の新たな密教像を創造する動向に大きく分かち、それぞれの動向が平安密教彫刻に多種・多様な展開を促したことを実作例に即して論じ、あわせて、その後の展望を見据えようとするものである。」
と紹介されています。

難しい研究論文集ですが、「平安密教彫刻論」というテーマが大変魅力的なので、ご紹介させていただきました。
博士論文の内容の要旨・要約については、

慶應義塾大学学術情報リポジトリ(KOARA)「平安密教彫刻論(要約)」
平安密教彫刻論(内容の要旨)

が、NET上に掲載されていますので、そちらをご覧いただければと思います。

高価で、腰が引けてしまったのですが、題名の魅力に惹かれて、買ってしまいました。

まだ、内容には、全く目も通していないのですが、難し過ぎて、きっと積読で、読まないと思います。

    






●新刊情報「四国の仏像〜いにしえの祈りのかたち」青木淳著・大屋孝雄撮影(2016年3月26日)



四国の仏像の美麗な写真集が発刊されました。

「四国の仏像〜いにしえの祈りのかたち」青木淳著・大屋孝雄撮影
2016年1月 淡交社刊  【188P】 2592円

淡交社の出版案内によりますと、
「四国の遍路道およびその周辺には、重要文化財指定の仏像のほかにも、巡礼者をはじめ、安置寺院自身がいまだその価値に気づかれていない奈良・平安?鎌倉時代の仏像が数多く存在します。
本書では、四国4県の32か寺、約50体の仏像を撮りおろした圧倒的な迫力のある写真と、その魅力を語る文章を中心に据えながら、仏像を通じて八十八ヶ所霊場を形成した四国地方の宗教文化の深層に迫ります。」
と、紹介されています。

解説は、四国の仏像、とりわけ高知県の仏像調査研究で知られる、多摩美術大学美術学部教授の青木淳氏です。
2014年には、青木氏の企画で、多摩美術大学美術館で「祈りの道へ〜四国遍路と土佐のほとけ展」が開催されました。
写真は、近年、青木淳氏とコンビで地方仏写真撮影されている大屋孝雄です。

大屋氏の美麗な仏像写真と、青木氏の優しい語り口の判りやすい解説で、四国の地方仏像の名品を愉しめる一書かと思います。





●山梨県・福光園寺で「シンポジウム・吉祥天信仰 〜祈りとかたち」開催(3/19)(2016年2月27日)


福光園寺
山梨県笛吹市の福光園寺で「歴史シンポジウム・ 吉祥天信仰 〜祈りとかたち〜」が、2016年3月19日(土)」に開催されます。

開催概要は、以下の通りです。

◇大野山福光園寺 第3回  歴史シンポジウム吉祥天信仰 〜祈りとかたち〜

◇日 時 2016年 3月19日(土)13:30〜16:30(13:00開場)

◇会 場 笛吹市御坂町大野寺 福光園寺
<申込不要・資料代1,000円>




福光園寺の吉祥天像と、甲斐での慶派造像活動という、大変興味深いテーマのシンポジウムとなっています。
本シンポジウムは、主催:大野山福光園寺、協力:山梨県立博物館にて開催されるということです。
詳ししい開催要領等については、福光園寺・TEL: 055-263-4395にお尋ねください。

福光園寺は、創建は不明ですが、保元元年(1157)、大野対馬守重包により再興され、賢安和尚を中興開山とする寺院です。
当寺には、鎌倉時代制作の重要文化財・吉祥天及び二天像が遺されていることで知られています。
吉祥天坐像(像高110p)を中尊に、持国天、多聞天を脇侍とした三尊像です。
吉祥天像内銘文から、寛喜3年(1131)仏師・蓮慶によって制作されたことが知られる、貴重な基準作例となっています。
吉祥天像は、安定感ある堂々とした造形で、強い存在感を感じさせます。

         
福光園寺・吉祥天像及び二天像

私は、此の像を拝したとき、山梨の地には出色の見事な出来栄えの仏像だと、驚くとともに心撃たれた記憶があります。
一度は拝しておくべき、仏像だと思います。

本シンポジウムに参加するとともに、福光園寺・吉祥天三尊像をじっくり拝観するというのは、なかなか得難い機会かもしれません。





●青梅市郷土博物館で、山本勉氏講演会「塩船観音寺の仏像」開催(3/21)(2016年2月27日)



青梅市郷土博物館では、企画展「中世青梅の信仰と文化」〜2016年2月6日(土)から4月17日(日)〜が開催されていますが、その関連講座として、山本勉氏による講演会「塩船観音寺の仏像」が開催されます。

開催概要は、以下の通りです。

◇日時:3月21日(月曜日・振替休日)午後2時から

◇会場:塩船観音寺普門閣2階和室、塩船観音寺本堂

◇講師:山本勉氏(清泉女子大学文学部文化史学科教授)

◇定員:50名(応募者多数の場合は抽選)

申し込み:3月5日(必着)までに
往復ハガキに<往信裏>住所、氏名、年齢、電話番号<返信表>住所、氏名を記入し、
〒198-0053青梅市駒木町1-684青梅市郷土博物館「中世青梅の信仰と文化」係へお送りください。
同伴者は1枚につき1人まで可(同伴者名も必ずご記入ください)

詳しくは、青梅市郷土博物館HP・
企画展ページをご覧ください。

塩舟観音寺(青梅市塩船)は、大化年間(645〜 650)創建という伝承があり、「塩船」の名は、天平年間(729〜749)に行基がこの地を訪れた際、周囲が小丘に囲まれて船の形に似ているところから、名付けられたものと伝えられています。

当寺には、以下のような文化財指定仏像をはじめとして、多くの古仏が遺されています。




本尊・千手観音像は秘仏で、1月1〜3日、1月16日、5月1〜3日、8月第2日曜日に開扉されるとのことです。
私は、当寺は訪ねたことがなく、どのような仏像なのかはよく判りませんが、東京都で、年紀の明らかな像をはじめ、これだけの仏像が残されているのは、貴重なことだと思います。

山本勉氏の講座、ご関心のある方は出かけられてはいかがでしょうか。

         
塩舟観音寺・千手観音立像                        二十八部衆像





●椙山女学園大学〜地域文化・仏像バーチャルミュージアムのご紹介(1/30)(2016年1月30日)


椙山女学園大学の文化情報学部によって、「地域文化・仏像バーチャルミュージアム」という地方仏像の映像作品が、制作公開されていることを知りましたので、ご紹介します。


椙山女学園大学「地域文化・仏像バーチャルミュージアム」のトップページ

1月21日付けの中日新聞WEBニュースに、
「椙山女学園大文化情報学部の栃窪優二教授(映像ジャーナリズム)のゼミ生が、稲沢市の貴重な仏像を紹介した映像を制作してDVDにまとめ二十二日、同市に寄贈する。
専門家によると、稲沢は奈良時代から戦国時代ごろまで、尾張地方の中心として栄えた地。
制作に携わった学生は『仏像を通じて尾張の歴史の一端を伝えたい』と話す。
・・・・・・・・」
という記事が、掲載されたのを見つけました。

どのようなものなのだろうかと、椙山女学園大学HPを見てみると、「地域文化・仏像バーチャルミュージアム」というのがあるのを見つけました。
このバーチャルミュージアムは、地域に残される仏像を映像作品として記録し、発信する試みを進めようとするもので、地方仏像の紹介、解説映像がラインアップされています。

作品を見てみると、県や市指定の文化財など文化的価値が高い仏像が選ばれ、一作品4分程度で、詳細なクローズアップ映像とともに、丁寧な解説が付されていました。
現在、愛知県稲沢市の仏像を中心に、21件の仏像の映像作品がラインアップされています。
他にも、名古屋市・七寺の観音・勢至菩薩坐像宮城県登米市・横山不動尊の不動明王坐像といった興味深い仏像の映像作品も掲載されています。


名古屋市・七寺の観音・勢至菩薩坐像の紹介映像作品

これだけ、しっかりとした地方仏の映像作品のバーチャルミュージアムは、大変貴重で意義深いものだと思います。
早速、いくつかの仏像映像を、愉しく興味深く、見てしまいました。
これからも、作品数がどんどん増えていけば、大変うれしいことです。

是非一度、ご覧になってみてください。





【過去の ご 紹 介 情報】


2001〜14年

2015年

 

 

 

 
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