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展示会案内  2015年

全国の美術館、博物館の展示会情報については、下記リンク先を参照ください。

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●奈良県文化会館で「仏像写真家・永野太造の軌跡展」開催(12/12〜13)(2015年11月28日‎)

永野太造氏撮影・大安寺楊柳観音像
2日間限りという、ちょっと目立たない展示会を見つけました。
仏像写真作家にご関心のある方には、興味ある企画ではないかと思いますので、ご紹介します。

奈良市登大路町の奈良県文化会館で、「仏像写真家・永野太造の軌跡展」が開催されます。
開催期間は、2015年12月12日(土)と13日(日)の2日間限りです。

詳しくは、大和路アーカイブ奈良県観光情報HP・
イベントページをご覧ください。

この「仏像写真家・永野太造の軌跡展」は、帝塚山大学「新奈良学」プロジェクト「奈良の文化・再発見」の一環として開催されるようです。

HPの展覧会解説によれば、
「永野太造氏は戦後、仏像を中心に文化財を撮影した写真家です。 帝塚山大学は新・奈良学プロジェクトとして永野太造氏が撮影したガラス乾板資料約7000枚の調査、研究を行うことになりました。 それを記念し、ガラス乾板資料、永野氏使用写真機材、写真パネルなどを展示します。」
ということです。

展示会情報については、ご紹介HP以上のことはよくわかりませんので、お出かけの方は、開催時間など、よくご確認ください。

ご存知の通り、永野太造氏は奈良国立博物館前で古美術写真販売・出版の「鹿鳴荘」を営んだ仏像写真家です。
奈良六大寺大観や大和古寺大観の写真撮影者の一人で、仏像写真家としてよく知られていましたが、平成2年(1990)、68歳で没しました。
「鹿鳴荘」は、現在では、古美術写真店は廃業し、飲物土産物販売店として営業されています。
鹿鳴荘・永野太造氏については、本HP「埃まみれの書棚から〜奈良の仏像写真家たちと、その先駆者〈その10−1〉」で、ご紹介していますのでご覧ください。

   
.           2006年当時の永野鹿鳴荘・店内の様子(写真販売は閉店)                     飲物・土産物店として賑わう永野鹿鳴荘(2011年)

帝塚山大学「新奈良学」プロジェクトによって、鹿鳴荘・永野太造氏が遺した仏像写真や原板が保存、研究されることになったことは、大変うれしいことです。
どのような調査研究が進められるのか、愉しみです。

本展は、2日間限りで小規模スペースでの展示のようで、「展覧会」という感じではないと思いますが、近代奈良の文化の保存ということでは、意義深い展示会だと思います。

私は、ちょうど開催日に奈良を訪れる予定ですので、寄ってみようと思っています。



●大阪大学総合学術博物館で「金銅仏きらきらし展」開催(10/24〜12/22)(2015年11月14日‎)


大阪府豊中市の大阪大学総合学術博物館で「金銅仏きらきらし〜いにしえの技にせまる〜展」が開催されています。

開催期間は、2015年10月24日(土)〜2015年12月22日(火)で、入場無料です。
詳しくは、大阪大学総合学術博物館HP・
展覧会ページをご覧ください。

この展覧会には、東京芸術大学美術館、白鶴美術館、大阪市立美術館、逸翁美術館など所蔵の古代金銅仏、約40点が展示されます。
この展覧会は、金銅仏の作品展示を目的としたというものではなく、「いにしえの技にせまる」という展覧会名副題の通り、金銅仏の制作技法を掘り下げその謎に迫ろうとする企画展です。
科研費成果報告「5〜9世紀東アジアの金銅仏に関する日韓共同研究」の発表の場として開催されています。

博物刊HPの展覧会趣旨にも、このように記されています。

「ブロンズは銅に錫や鉛などを混ぜた合金です。
金銅仏はそれを溶かし、型に流し込んで作ります。
このように一言で説明すると簡単なようですが、実際にはさまざまな工夫が凝らされました。
原型には土型と蝋型の2種があり、それぞれ制作工程が異なります。
ブロンズ自体も配合の具合で融点や流動性、色や硬さに違いが生じます。
他にも、中型と外型の固定方法、溶銅の注ぎ口や出口の作り方など、金銅仏の制作技法には多くの謎があります。
この展覧会では、そうした金銅仏の制作技法の謎―いにしえの技―にせまるべく、興福寺仏頭の制作工程模型、そしてアジア各地の金銅仏約40点を成分分析調査等の成果とともに展観いたします。」

ちょっとマイナーで小規模な展覧会ですが、金銅仏の制作技法にスポットライトを当てた、大変興味深い企画展です。
仏像の制作技法や、金銅仏に関心のある方には、見逃せない展覧会ではないでしょうか。

関連イベントとして、国際シンポジウム「金銅仏の制作技法の謎にせまる」が、12月12日(土)10:00〜17:10に開催されます。
これまた、興味津々のシンポジウムです。
このシンポジウムについては、本HP・ご紹介で、その内容を紹介させていただきましたのでご覧ください。



●会津八一記念博物館で「日吉館をめぐる文化人展」開催(10/17〜11/28)(2015年10月24日‎)


東京都新宿区の早稲田大学・会津八一記念博物館で「「日吉館をめぐる文化人〜会津八一と奈良展」が開催されています。

開催期間は、2015年10月17日(土)〜11月28日(土)です。
詳しくは、
会津八一記念博物館HP展覧会ページをご覧ください。

博物館HPには、次のような開催趣旨が記されています。

「日吉館は、奈良を愛する文学・絵画・彫刻・歴史・建築・美術史などの研究者が奈良を訪れるたびに定宿として利用していた風格のある旅館でした。
早稲田大学會津八一記念博物館は、2010年と2014年に日吉館関係資料の寄贈を受けました。
寄贈品は、會津八一の書作品や宿帳など、すべてが芸術的かつ文化史的価値の高いものです。
寄贈を記念いたしまして2014年度には日吉館関係のシンポジウムも行ないました。
本企画展では、日吉館旧蔵の會津八一の書作品の紹介とともに、シンポジウムの成果の一端も披露いたします。」

ご存じのとおり「日吉館」は、奈良を愛する学者や文化人、学徒たちに、愛された奈良の宿です。
昭和57年(1982)年末に看板を下ろし、平成7年(1995)に完全廃業となりましたが、「日吉館」に泊まったことのある方には、懐かしい展覧会なのではないかと思います。

私も、さっそく出かけてみました。
展覧会というには小ぢんまりした展示でしたが、会津八一揮毫の名物看板や、部屋にかけられていた会津八一の横額、掛け軸などが展示されており、何度か日吉館に泊まった思い出を懐かしく偲ぶことができる展覧会でした。

図録も作られており、大変興味深く、楽しく読める内容となっています。
A4版・80P、販売価格1000円、おすすめの図録です。

  
興味深い内容の図録の「目次」

なお、日吉館については、
本HP「埃まみれの書棚から〜奈良の宿あれこれ」、観仏日々帖「『奈良・日吉館をめぐる文化人』というシンポジウムが開催されました 」
に、日吉館の歴史やエピソード、シンポジウムの内容などについて掲載していますので、ご覧いただければと思います。

          
奈良・日吉館(昭和52年・1977)                                   会津八一揮毫・日吉館看板




●大津市歴史博物館で「比叡山〜みほとけの山展」開催(10/10〜11/23)(2015年9月17日‎)

滋賀県大津市御陵町の大津市歴史博物館で、開館25周年記念企画展「比叡山〜みほとけの山展」が開催されます。

  


開催期間は、2015年10月10日(土)〜11月23日(月・祝)です。
詳しくは、
大津市歴史博物館HP展覧会ページをご覧ください。

本展覧会は、大津市歴史博物館・開館25周年という節目の年を記念して、日本仏教の聖地の一つ、「比叡山」の仏教文化を紹介する展覧会が開催されるものです。
展覧会では、博物館HPの開催趣旨に
「今回は、世界文化遺産の比叡山延暦寺をはじめ、広範囲にわたる比叡山の山麓に伝わる仏像や仏画、さらには比叡山の知識の宝庫である、叡山文庫の古文書や絵図などを展示することによって、その秘められた美しさと歴史を紹介します。」
とあるとおり、
比叡山延暦寺の仏像だけでなく、周辺近江エリアの興味深い仏像も数多く展示されるようです。
おもな出展仏像は、博物館HP・展覧会ページをご覧ください。

私の注目の出展仏像は、次の仏像です。

・伊崎寺(滋賀県近江八幡市) 不動明王坐像  平安時代(10C) 重要文化財
・西教寺(滋賀県大津市)    聖観音立像   平安時代(10C) 重要文化財
・西方寺(大津市木戸?)    十一面観音坐像 奈良時代

伊崎寺(滋賀県近江八幡市)の不動明王坐像は、10世紀後半の制作とみられており、2006年、重要文化財に新指定されました。
現在は、延暦寺の國寳殿に収蔵されています。

西教寺(滋賀県大津市)の聖観音立像は、古様ながらも10世紀後半のおだやかさをたたえた美しい観音像です。
普段は公開されておらず、拝観には事前予約等が必要であったかと思います。
今回の出展は、じっくり拝することが出来る絶好の機会です。

木戸・西方寺の十一面観音坐像は、博物館HP・展覧会ページに「奈良時代」の制作として掲載されています。
私も、この仏像については、全く知らない仏像です。
写真では、細かい像容等がはっきりわからないのですが、誠に興味深い仏像のようです。
展覧会で見ることが出来るのを、愉しみにしています。

   
                
伊崎寺・不動明王坐像(平安・重文)         西教寺・聖観音立像(平安・重文)         西方寺・十一面観音坐像(奈良時代)


比叡山周辺の興味深い仏像が多数出展される、注目の展覧会といえそうです。
是非お出かけください。



●京都・龍谷ミュージアムで「アンコールワットへのみち展」開催(10/10〜12/20)(2015年9月17日‎)



京都市下京区の龍谷ミュージアムで「アンコールワットへのみち展」が開催されます。

開催期間は、2015年10月10日(土)〜12月20日(日)です。
詳しくは、
龍谷ミュージアムHP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、アンコール朝時代のカンボジア石造彫刻を中心に、タイ・ミャンマーの彫刻もあわせ、神秘的な造形の変遷を紹介するものです。


展覧会は、2015年4月から、次のとおり、全国6ヶ所を巡回展覧中です。

4/28〜6/14 福岡市美術館、7/18〜8/30 いわき市立美術館、10/10〜12/20 龍谷大学龍谷ミュージアム、1/6〜2/28 姫路市書写の里・美術工芸館、4/16〜6/19 名古屋市博物館、7/16〜9/19 東北歴史博物館



●島根県立石見美術館で「祈りの仏像〜石見の地より展」開催(9/19〜11/16)(2015年8月29日‎)


島根県益田市の島根県立石見美術館で「祈りの仏像〜石見の地より展」が開催されます。

開催期間は、2015年9月19日(土)〜11月16日(月)です。
詳しくは、
島根県立芸術文化センター・石見美術館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、島根県立石見美術館開館10周年を記念して開催される展覧会です。
展覧会HPには、開催趣旨がこのように記されています。

「本展では5つの特徴的なテーマにそって、石見の仏像はもとより、中国地方5県から仏像・仏画が大集結。
この地に生きる人々に受け継がれた祈りの造形(かたち)に迫ります。
2009年の企画展『千年の祈り 石見の仏像』から6年の歳月を経て、当館による仏像調査は石見全域に及びました。
これにより得られた最新の研究成果を中心に、さらに壮大なスケールで開館10周年を記念します。

国宝2点、重要文化財16点、新発見・初公開作品12点を含む展示総数約60点。」


主な展示仏像は、以下のとおりです。

  

ご覧のように、山口・神福寺、島根・萬福寺、広島・古保利薬師堂といった有名処の仏像が展示されるようです。

              
新発見の圓福寺・観音菩薩立像                島根萬福寺・天部立像      広島古保利薬師堂・四天王立像

なんといっても注目は、今般、新発見仏像として報道された、奈良時代から江戸時代の文化財級の石見地方の仏像11体が、出展されることです。
なかでも、太田市・圓福寺の観音菩薩立像は、奈良時代の8世紀の制作と考えられ、中国地方最古の木彫仏として、大きな話題となっているようです。
この、圓福寺・観音菩薩立像をはじめとする新発見仏像については、
本HP・特選情報〜「島根県で仏像11体新発見・1体は奈良時代の木彫像」にて、報道内容とのご紹介をしていますので、ご覧ください。

島根県益田市と、ちょっと遠いところで開催される仏像展ですが、注目の展覧会です。



●三井記念美術館で「蔵王権現と修験の秘宝展」開催(8/29〜11/3)(2015年8月15日‎)


東京都中央区日本橋室町の三井記念美術館で「蔵王権現と修験の秘宝展」が開催されます。

開催期間は、2015年8月29日(土)から11月3日(火)です。
詳しくは、
三井記念美術館HP展覧会ページをご覧ください。

三井記念美術館HPの展覧会開催趣旨には、このように記されています。

「この特別展は、修験道の根本聖地である金峯山寺ほかの、奈良県吉野金峯山修験にかかわる仏像、曼荼羅図と経筒、経箱、鏡像、懸仏など経塚遺品、そして早くから地方の山岳宗教の地で修験の拠点となり、崖上に建てられた平安時代の『投入堂(投入れ堂)』で知られる鳥取県三徳山三仏寺の多数の蔵王権現を一堂に展示する、まさに『天空の神と仏の世界』が眺望できる画期的な展覧会です。」

藤原道長が金峯山寺に埋納した経筒、経箱、藤原師通が埋納した経箱、白河上皇が埋納した経箱など、国宝の金峯山寺経塚出土遺物が出展されるのが、大注目です。

仏像では、
吉野・如意輪寺の源慶作・蔵王権現立像(嘉禄2年1226年作・重要文化財)
鳥取・三仏寺の蔵王権現像2躯(平安時代・重要文化財)、十一面観音像(平安時代・重要文化財)
などが出展されます。

なお、今回出展される三仏寺・蔵王権現像は、素木の6躯の蔵王権現像のうちの2躯で、仁安3年(1168)造立願文墨書の発見された、有名な蔵王権現像(重要文化財)は出展されていませんのでご注意ください。

         
如意輪寺・源慶作蔵王権現立像(嘉禄2年1226・重文)         三仏寺・蔵王権現像2躯(平安・重文)         三仏寺・十一面観音像(平安・重文)



●奈良国立博物館で「白鳳〜花ひらく仏教美術展」開催(7/18〜9/23)(2015年6月27日‎)

奈良国立博物館では、開館120年記念展として、「白鳳〜花ひらく仏教美術」が開催されます。
開催期間は、2015年7月18日(土)〜9月23日(水・祝)です。
詳しくは、
奈良国立博物館HP展覧会ページをご覧ください。


   


この展覧会は、仏像愛好の方々なら、このHPでお知らせするまでもなくご存じで、開催を心待ちにされていることと思います。
奈良博では、1998年に東新館開館記念展として、天平美術の粋を集めた特別展「天平」が、開催されました。
その時以来の時代横断的な大仏教美術展で、今回も、白鳳美術の名品仏像が数多く出展されます。

奈良博HPは、白鳳展開催趣旨がこのように記されています。

「白鳳は7世紀の半ばから710年に平城京に遷都するまでの間の文化や時代を指す言葉として、美術史学を中心に用いられてきました。
・・・・・・・・・・・・・・・
新羅をはじめ朝鮮半島の国々との交流は毎年使節が往来するなど盛んであり、大陸の先進的な文化がもたらされました。
白鳳美術の魅力は金銅仏に代表される白鳳仏にあると言って良いでしょう。
白鳳仏は若々しい感覚にあふれ、中には童子のような可憐な仏像も見ることができます。
神秘性や厳しさを感じる飛鳥彫刻や、成熟した天平彫刻とはまた違う魅力です。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
 奈良国立博物館は平成27年に開館120年を迎えます。
これを記念し、仏教美術の専門館として長年にわたり構想を温めてきた白鳳美術を取り上げ、その魅力を追求します。」

出展仏像は、名品ぞろい過ぎて、どれをご紹介しようかと迷ってしまいますので、奈良博展覧会ページ主な出陳品一覧をご覧ください。
近畿エリア以外の地域からも、東京・深大寺釈迦如来倚像、千葉・龍角寺薬師如来坐像、島根・鰐淵寺観音菩薩立像、大分・長谷寺観音菩薩立像などが出展されるのも楽しみです。


4回の公開講座も実施されます。
ご覧のとおりです。

  

これだけの白鳳仏の名品を一堂に観ることのできる機会は、めったにありません。
是非とも、お出かけください。



●東京国立博物館で「平成27年新指定国宝・重要文化財展」開催(4/21〜5/10)(2015年4月17日‎)

東京国立博物館で「平成27年新指定国宝・重要文化財展」が開催されます。

開催期間は、2015年4月21日(火)〜5月10日(日)です。
詳しくは、文化庁報道発表・
「特集陳列 平成27年新指定国宝・重要文化財展の開催について」をご覧ください。

この展示は、新指定となった国宝・重要文化財を一堂に展示するもので、毎年恒例でこの時期に開催されています。
今年は,46件の文化財が出展されます。

仏像等の展示は、次のとおりです。

  


東大寺・弥勒仏坐像(通称:試みの大仏)と、醍醐寺・虚空蔵菩薩立像(重文指定名称は聖観音立像)が、新国宝として出展されるのが愉しみです。

新指定仏像等の詳しい内容等については、本HPの特選情報東大寺・試みの大仏などを国宝・重要文化財指定答申(2015年3月7日)をご覧ください。



●和歌山県立博物館で「高野山開創と丹生都比売神社展」開催(4/25〜6/7)(2015年4月11日‎)

ポスター写真は丹生神社女神像
和歌山県立博物館で「特別展・高野山開創と丹生都比売神社〜大師と聖地を結ぶ神々」ならびに、「特集展示・高野山と有田川流域の仏教文化」が開催されます。

開催期間は、2015年4月25日(土)〜6月7日(日)です。
詳しくは、
和歌山県立博物館HP展覧会ページをご覧ください。

「特別展・高野山開創と丹生都比売神社」に展覧会開催趣旨は、次のように記されています。

「高野山麓・かつらぎ町天野の地に鎮座する丹生都比売神社は、開創1200年を迎えた高野山の鎮守社として古くから篤い信仰を集めてきました。
・・・・・・
この特別展では弘法大師空海と地域の関わりや伝承を、丹生都比売神社の神々にまつわる歴史とともに紐解き、世界遺産・高野山とその山麓に広がる文化圏の豊かな魅力をご紹介します。」

また、本展覧会と併せて、「特集展示・高野山と有田川流域の仏教文化」が開催されます。

両展覧会では、丹生明神坐像・女神坐像(鎌倉時代)が展示されるほか、薬師寺・地蔵菩薩像(平安・県指定)、法福寺・観音菩薩像(平安・町指定)、法音寺・十一面観音像(平安・重文)など、興味深く魅力ある平安古仏が出展されます。


                
薬師寺・地蔵菩薩立像(平安時代・県指定)    法福寺・観音菩薩立像(平安時代・町指定)    法音寺・十一面観音立像(平安時代・重要文化財)



●大阪・吹田市立博物館で「生誕100年西村公朝展」開催(4/25〜6/7)(2015年4月11日‎)

大阪府吹田市の吹田市立博物館で「生誕100年西村公朝展〜ほとけの姿を求めて」が開催されます。

開催期間は、2015年4月25日(土)〜2015年6月7日(日)です。
詳しくは、
吹田市立博物館HP展覧会ページをご覧ください。

西村公朝氏の名前は、皆さん、良くご存知のことと思います。
長らく、美術院にて仏像修理に携わり、美術院国宝修理所の所長を務めた仁で、国宝・重要文化財クラスの彫像の修理件数は約1300体にもおよんでいます。
一方で、仏像修理の世界よりも、嵯峨野・愛宕念仏寺の住職として、仏像彫刻作家として、また数多くの著作でも著名であった仁です。
その著作は数えきれないほどで、AMAZONで検索すると30〜40冊あります。

また、本展覧会の開催される吹田市立博物館の初代館長に就任しました。

展覧会の開催趣旨について、HPには、

「本展覧会では、生誕100年を記念して、公朝の多くの業績の源というべき「仏像修理者」としての活動に注目いたします。
これまで修理してきた仏像彫刻や、修理資料等によって、その卓越した技術を紹介し、仏像修理の足跡をたどります。
また、自らを「仏像彫刻家」とし、みずからも精力的に仏像制作を行ってきました。本展では、集大成というべき《十大弟子》や《ふれ愛観音》を通して「仏像彫刻家」としての姿も紹介いたします。
  このような作品や資料によって、仏像の修理技術の向上に努め、仏の心と造形を探究し続けた西村公朝の精神や生き様を感じ取っていただけましたら幸いです。」

と記されています。

仏像そのものの展覧会ではないのですが、文化財の修理修復という視点からの仏像にご関心ある方には、興味深い展覧会だと思います。



●山形美術館で藤森武写真展「みちのくの仏像」開催(4/11〜5/10)(2015年4月4日‎)

山形県山形市の山形美術館では、藤森武写真展「みちのくの仏像」が開催されます。

この写真展は、東日本大震災復興祈念として東北新聞五社事業協議会連携企画として開催されるものです。
開催期間は、2015年4月11日(土)〜5月10日(日)です。
詳しくは、
山形美術館HP展覧会ページをご覧ください。

藤森武氏は、ご存じのとおり、山形県酒田市出身の写真家・土門拳の直弟子であり、現在、仏像写真家として活躍中です。
藤森氏の仏像写真をご覧になった方、ファンの方も数多いことと思いますが、藤森氏自身の眼、視点から見た仏像の魅力を、最大限に引き出した写真には、強く惹きつけられるものがあります。

本展覧会の開催趣旨には、

「土門(拳)本人は、いずれ自らの出身地でもある東北での撮影を思い描いていたという。
そんな遺志を受け継ぐように、土門の直弟子だった写真家の藤森武(土門拳記念館理事・学芸員)が東北各地の仏像を撮り続けている。
本展は、東北各地に残る魅力的な仏像の数々を、藤森の迫力ある写真によって紹介し、発生から4年を過ぎてなお深い傷跡の残る東日本大震災被災地の復興を祈念し、みちのくの民の信仰を集めてきた仏像たちに思いをはせる機会とする。」

展覧会では、藤森氏撮影のみちのくの仏像写真、約100点が展示されます。
私の注目は、山寺立石寺の秘仏・薬師如来坐像のカラー写真が、展示されることです。
立石寺・薬師如来坐像は、2013年に50年に一度のご開帳がありましたが、この仏像写真は、1961年に調査された時のモノクロ写真しか残されていなかったのではないかと思います。
今回、藤森氏撮影の、美しいカラー写真が、全身写真と顔部写真の2枚展示されるということです。

写真展図録(1500円)も販売されるということで、楽しみにしています。

この展覧会は、山形のほか、秋田、岩手、青森、福島の東北5県で、今後巡回展が開催されることになっています。



●神奈川県立金沢文庫で「日向薬師・秘仏鉈彫本尊開帳展」開催(4/24〜6/14)(2015年3月21日‎)

横浜市金沢区の神奈川県立金沢文庫で「平成の大修理記念〜日向薬師(ひなたやくし)・秘仏鉈彫本尊開帳展」が開催されます。

開催期間は、2015年4月24日(金)〜6月14日(日)です。
詳しくは、
金沢文庫HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、昨年10月からの開催予定で、告知されていましたが、金沢文庫の館内収蔵庫の一部にカビが発生し、緊急に燻蒸(くんじょう)作業を行う必要が生じたため、急遽、臨時休館となり、展覧会開催も延期、未定となっていたものです。
期待の展覧会であっただけに、開催の運びとなったことは、嬉しいことです。

ご存じのとおり、日向薬師・本尊薬師三尊像は、平安時代の鉈彫りの代表的作例として、広く知られています。
時々、展覧会などに出展されていますが、お寺では秘仏として厨子の中に祀られており、普段は、正月三が日のご開帳の時以外には拝することが出来ません。

展覧会には、薬師三尊像(重要文化財)と十二神将像(平安時代・県指定文化財)が出展されます。

現在、薬師堂(重要文化財)の大修理が行われていますが、今回の展覧会では、これまで調査結果の紹介されるようで、HPには、次のような開催趣旨が掲載されています。

一方、重要文化財・薬師堂(本堂)は、平成28年の完成を目指し、平成22年より平成の大修理が現在行われています。
修理では一部の部材に鎌倉時代に遡るものも発見され、話題となっております。
本展覧会では、普段拝観する機会の少ない本尊薬師三尊像をはじめ、日向薬師の仏像・宝物などを公開します。

また、併せて本堂の平成の大修理や、昭和30年代初頭に金沢文庫で行なった大規模な総合調査を紹介し、 広く一般の方々に、日向薬師宝城坊の歴史と文化について知っていただく機会になればと思います。

「日向薬師」一寺だけを採り上げた展覧会というのは、大変興味深い特別展で、どのような展示になるのか楽しみです。
是非とも出かけてみたいものです。

         
日向薬師・鉈彫り薬師三尊像(平安時代・重要文化財)                     解体修理中の本堂




●根津美術館で「救いとやすらぎのほとけ・菩薩展」開催(3/7〜4/6)(2015年2月28日‎)


東京都港区南青山の根津美術館で「救いとやすらぎのほとけ・菩薩展」が開催されます。

開催期間は、2015年3月7日(土)〜4月6日(月)です。
詳しくは、根津美術館HP・
展覧会ページをご覧ください。

展覧会では、根津美術館の仏教美術コレクションから、菩薩を表した飛鳥時代から江戸時代の彫刻・絵画、約40件が展示されます。


展示品目録は掲載されていませんが、主な出展仏像としては、金銅・観音菩薩立像(重美・飛鳥時代)、菩薩立像(平安時代)、地蔵菩薩坐像(鎌倉時代)が展示されます。


        
観音菩薩立像(重美・飛鳥時代)         菩薩立像(平安時代)          地蔵菩薩坐像(鎌倉時代)   .



●長野県信濃美術館で「信濃の仏像と国宝土偶展」開催(4/4〜5/31)(2015年2月28日‎)

長野県長野市(善光寺隣)の長野県信濃美術館で、「善光寺御開帳記念〜"いのり"のかたち・信濃の仏像と国宝土偶『仮面の女神』『縄文のビーナス』展」が開催されます。

開催期間は、2015年4月4日(土)〜5月31日(日)です。
詳しくは、
長野県信濃美術館HPお知らせページをご覧ください。

この展覧会は、善光寺前立本尊ご開帳を記念して開催されるものです。

長野県信濃美術館HPの開催趣旨には、
「この展覧会は、2009年「いのりのかたちー善光寺信仰展」の続編として、主に銘文や像内納入品によって、制作時期や来歴がわかる、平安時代後期から鎌倉時代の仏像に焦点を当てます。
善光寺信仰の広がりを示す善光寺仏師妙海の仏像をはじめ、重要文化財を含む、普段は拝観できない県内各地の秘仏や、善光寺ゆかりの宝物を一堂に会します。」
と記されています。

展示品目録は、まだ掲載されていませんが、主要な展示仏像をみると、
松川村・観松院〜金銅菩薩半跏像(重文・飛鳥時代渡来仏)、長野市・松代清水寺〜千手観音立像(重文・平安時代)、松本市・真光寺〜阿弥陀如来坐像(重文・鎌倉〜室町時代)、大町市・藤尾覚音寺・持国天立像(重文・平安時代)などが出展されるようです。

また、併せて特別出展として、国宝土偶「仮面の女神」「縄文のビーナス」も展示されます。


        
松川村・観松院〜金銅菩薩半跏像     長野市・松代清水寺〜千手観音立像       大町市・藤尾覚音寺・持国天立像    .



●長野市博物館で「信仰のみち 善光寺・戸隠・飯縄・小菅・斑尾・妙高展」開催(4/25〜5/31)(2015年2月28日‎)

長野市の長野市博物館では、善光寺前立本尊の御開帳を記念して、「信仰のみち 善光寺・戸隠・飯縄・小菅・斑尾・妙高展」が開催されます。

開催期間は、2015年4月25日(土)〜5月31日(日)です。
詳しくは、
長野市博物館HP特別展・企画展ページをご覧ください。

博物館HPの展覧会開催趣旨には、
「 北信濃から上越にかけては、善光寺をはじめとして、戸隠山や妙高山を信仰対象とするなど、多様な信仰があった。
(善光寺御開帳と新幹線延伸を記念して)
新幹線の始発駅である関東を、善光寺信仰とからめて紹介する。
また、長野から新幹線に沿って、信仰の山である、 戸隠・飯縄・小菅・斑尾・妙高について、信仰にかかわる文化財を展示する。」
と記されています。

注目は、妙高市・関山神社の銅像・菩薩立像(重要文化財)が出展されることです。

関山神社のご神体である菩薩像は、総高20.9pの小像ですが、6〜7世紀の朝鮮渡来仏と考えられている興味深い像です。
天衣の形式などに、夢殿・救世観音像に近いものがあり、両手も宝珠を執る形式であったと思われます。

この像が知られるようになったのは、近年です。
この関山神社の菩薩像は、神社御神体として長年秘仏とされてきています。
昭和36年(1961)に研究者などの懇請を受け初めてご開帳され、田中一松氏(当時国立文化財研究所長)が拝見、新羅仏と判断したということです。
その後、昭和40年(1965)に、久野健氏(当時国立文化財研究所員・文部技官)が、現地調査し、朝鮮渡来の古像の発見として論文や著書で紹介された頃から、広く知られるようになりました。
調査の有様は、久野健著「渡来仏の旅」(1981年・日本経済新聞社刊)で、活き活き語られています。

久野氏によると、古代の朝鮮文化渡来ルートに、日本海沿岸から信濃へといったルートが想定され、この関山神社・菩薩像、長野松川村観松院・金銅菩薩半跏像、長野善光寺・絶対秘仏一光三尊阿弥陀如来などの存在が、それを裏付けるものではないかとしています。


今回の、善光寺・前立本尊ご開帳で、長野県信濃美術館で観松院・菩薩半跏像、長野市博物館で関山神社・菩薩立像を一度に観ることが出来ることになります。

セットで鑑賞ということで、出かけて見られてはいかがでしょうか。


         
.                       関山神社の銅像・菩薩立像(重要文化財)                   長野松川村観松院・金銅菩薩半跏像(重要文化財)



●京都・龍谷ミュージアムで「聖護院門跡の名宝展」開催(3/21〜5/10)(2015年2月28日‎)

京都市下京区の龍谷ミュージアムで「聖護院門跡の名宝展」が開催されます。

開催期間は、2015年3月21日(土)〜5月10日(日)です。
詳しくは、
龍谷ミュージアムHP展覧会ページをご願ください。

ご存じのとおり、聖護院は有名な門跡寺院ですが、本山修験宗の総本山でもあり、修験にかかわる仏教美術も多く伝えられています。
本展は、聖護院の開山・増誉大僧正の9 0 0年遠忌にあたり、これを記念して開催されるものです。
寺外初公開を含む約1 4 0 件(うち国宝1件、重要文化財13件)が展示されます。

仏像では、聖護院の2躯の不動明王立像(重文・平安後期)、峯定寺・不動明王二童子立像(重文・平安後期)などが出展されます。
いずれの像も、平安後期らしいおだやかで優美な表現の像です。
峯定寺・不動明王二童子立像は、久寿元年(1154)の制作で、鳥羽法皇の寄進による像です。

この展覧会は、京都文化博物館との共催で、テーマ「門跡と山伏の歴史」はそちらで開催されます。


           
.   聖護院の2躯の不動明王立像(重文・平安後期)〜左・本尊、右・大仏間安置像〜       峯定寺・不動明王二童子立像(重文・平安後期)



●東博で「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流展」開催(3/17〜5/17)(2015年2月21日‎)

東京国立博物館・表慶館で、特別展「コルカタ・インド博物館所蔵 インドの仏 仏教美術の源流が開催されます。

開催期間は、2015年3月17日(火) 〜 2015年5月17日(日)です。
詳しくは、東京国立博物館HP/
展覧会ページをご覧ください。

博物館HPの開催趣旨には、このように記されています。

「インド東部の大都市コルカタ(旧カルカッタ)には、1814年に創立したインド博物館があります。
アジア最古の総合博物館であるばかりでなく、古代インド美術のコレクションは世界的にも有名です。
このたび、同博物館の仏教美術の優品を紹介する展覧会を開催いたします。
古代初期を代表するバールフット遺跡の出土品、仏像誕生の地であるガンダーラやマトゥラーの美術など、インド仏教美術のあけぼのから1000年を超える繁栄の様子をたどります。」

博物館所蔵の仏教美術名品、約90点が来日、インド美術発生の歴史をたどる展覧会ということです。

4月11日(土)(13:30〜15:00)には、小泉惠英氏による記念講演会「インドの仏−古代初期から密教まで」が開催されます。
詳しくは、講演会ページをご覧ください。


      
.         仏伝「出家踰城」クシャーン朝(2世紀頃)          仏坐像 クシャーン朝(1世紀頃)         弥勒菩薩坐像 クシャーン朝(2世紀頃)



●野洲市歴史民俗博物館で宗泉寺の仏像特別公開(2/7〜3/15)(2015年1月31日‎)

滋賀県野洲市辻町の野洲市歴史民俗博物館で、普段は秘仏の宗泉寺の仏像が特別公開されます。

公開されるのは、次の3躯の仏像です。

・木造薬師如来坐像(重要文化財・平安時代)87p
・木造毘沙門天立像(重要文化財・平安時代)66p
・木造不動明王立像及両童子像(重要文化財・鎌倉時代)95p

      
.      木造薬師如来坐像(平安時代)          木造毘沙門天立像(平安時代)      木造不動明王立像及両童子像(鎌倉時代)

詳しくは、野洲市歴史民俗博物館HP・特別公開「宗泉寺の仏像」ページをご覧ください。

これらの仏像は、普段は宗泉寺の薬師堂に秘仏として祀られており、毎年8月8日の薬師千日会法要で一年に一度のみ一般公開されているとのことです。

博物館HPによれば、
「平成25年9月の台風18号による土砂災害発生に伴い、宗泉寺(野洲市妙光寺)の薬師堂に安置される仏像を、文化財保護のため博物館で一時保管しています。
今回、宗泉寺のご協力により特別公開いたします。」
ということで、特別公開されます。

これらの仏像は「仏像集成」によれば、次のように解説されています(要約)。

・薬師如来坐像(重要文化財・平安時代)
「ヒノキの一材彫成、前後割り矧ぎ、割り首、12世紀に入っての作例と思われる。」

・毘沙門天立像(重要文化財・平安時代)
「背面2か所から大きく内刳り、截金文様も残り当初は華麗な像であったと思われる。全体に彫りは穏やかで、面相も古様をとどめるが、制作期は鎌倉期に入ってからのものと思われる。」

・不動明王立像及両童子像(重要文化財・鎌倉時代)
「中尊は一木割り矧ぎ、割り首と思われる。両脇侍は一木内刳りなし。黄不動の姿であるのに何か童子を思わせるのは興味深い。両脇侍は作風が異なり後世に三尊とされたものと思われる。中尊の制作期は鎌倉初期。」



●兵庫県立歴史博物館で川西市栄根寺・薬師如来像を公開(1/10〜3/15)(2014年12月27日‎)

兵庫県姫路市本町の兵庫県立歴史博物館で、川西市栄根寺の薬師如来坐像(県指定文化財)が公開されます。

兵庫県立歴史博物館でで開催される、「阪神・淡路大震災20年・災害と歴史遺産〜被災文化財等レスキュー活動の20年〜展」に出展されるものです。
この展覧会の開催期間は、2015年1月10日(土)〜3月15日(日) です。
詳しくは、
兵庫県立歴史博物館HPをご覧ください。

栄根寺・薬師如来坐像は、川西市では最古の平安古仏と云われ、形相のうえでも特異なものがあることから知られる仏像です。

長らく栄根寺の薬師堂に祀られて地元の人々に信仰されてきましたが、阪神・淡路大震災において、お堂が完全に倒壊し再建不能の状態に陥ってしまいました。
仏像は、本寺の池田市・西光寺の所蔵とされ、現在は川西市文化財資料館で保管されています。
栄根寺の跡地は、発掘調査などが行われたのち遺跡公園として整備され「栄根寺廃寺遺跡公園」となっています。
発掘調査では、平安時代後期に建立された中央に須弥壇がある仏堂跡が発見されています。

      
大震災で倒壊する前の栄根寺・薬師堂                公園として整備された栄根寺廃寺遺跡公園

こうした経緯から、「阪神・淡路大震災20年・災害と歴史遺産」に出展されることになったのだと思います。

この栄根寺・薬師如来坐像、井上正氏が古密教仏として採り上げている仏像で、是非とも拝したい仏像であったのですが、かなわずにいました。
震災後は、一度特別展観されたほかは、通常公開されていませんので、チャンスがなかったのです。


さて、この薬師仏像は、一般には平安時代の古様を伝える仏像とみられています。
像高108.1p、カヤとみられる一木彫で、背刳りがあり背板があてられています。

      
川西市〜栄根寺・薬師如来坐像(県指定文化財)

川西市史によると、
「体躯から受ける迫力ある充実感は強烈であるが、それにしても衣文の彫りは比較的浅い方である。
・・・・・・
平安時代前期の様風を伝えているが、制作されたのは後期に入ったころとみるべきであろうか。」
(毛利久氏執筆)
と述べられています。

一方、井上正氏は、例のごとく、奈良時代の古密教像と考えられています。

「本例の方が神護寺(薬師如来)像よりも古いのではないかと考えている。
完全一木造りへの強い志向、衣にみられる乾漆像的なタッチ、白鳳金銅仏にみるような大きな平たい耳、天平仏に多い子供のような手、そして体躯・足膝の奥行きを浅くとる設定など、筆者が八世紀前半頃と推定している諸像と各処で符合するものがある。
本像の不可思議な精神をのぞかせる相貌、一種の熱気を宿す剛直な体型、これらは他のいくつかの一木彫とともに、神護寺像以前に広がる古密教薬師如来のフィールドを想定させるものがある。」
(井上正著「古仏〜彫像のイコノロジー」)

ということです。

いずれにせよ、迫力あふれ、また古様を伝え、惹きつけるものがある仏像であるようです。

私にとっては注目の古仏で、姫路まではちょっと遠いのですが、この機会に是非出かけて、直接観てみたいと思っています。



●東京国立博物館で「みちのくの仏像展」開催(1/14〜4/5)(2014年12月20日‎)

東京国立博物館で、特別展「みちのくの仏像」が開催されます。

開催期間は、2015年1月14日(水) 〜 2015年4月5日(日)です。
詳しくは、東京国立博物館HP・
展覧会ページをご覧ください。

博物館HPの開催趣旨には、このように記されています。

「みちのくの仏像といえば、一木造、素地(きじ)仕上げ、力強い表現などが思い浮かびます。
その顔は悟りを開いた超越者ではなく、人間味があります。
厳しい自然に生きた人々の強さと優しさが表れているようです。
この展覧会には、東北の三大薬師と称される、黒石寺(岩手県)、勝常寺(福島県)、双林寺(宮城県)の薬師如来像をはじめ、東北各県を代表する仏像が出品されます。
会期中には東日本大震災から4年を迎えますが、仏像をとおして東北の魅力にふれていただくことで復興の一助になればと祈っています。」

この展覧会は、愛好家必見の東北仏像展だと思います。
なんといっても、東北の仏像を代表する、平安古仏の三大薬師一木彫像が勢揃いして、一堂に観ることが出来るという、またとない機会です。

     
勝常寺・薬師如来坐像(国宝・平安前期)    黒石寺・薬師如来坐像(重文・平安前期・貞観4年862)     双林寺・薬師如来坐像(重文・平安前期)


そのほかの出展仏像も、ご覧のとおりで、興味深く、素晴らしい仏像が粒ぞろいです。

  


皆さんも、この出展一覧を見て、「あの仏像も出てくるのか!」と、ぐっと身を乗り出されたのではないかと思います。


なかでも、私は、秋田・小沼神社の聖観音立像が出展されるというのは、嬉しき限りです。

小沼神社には、2013年秋に訪れました。
神仙境のような小沼のほとりにたたずむ社殿に祀られた、観音像を拝した時の感動は、未だに忘れられません。
「心洗われる、心ゆすぶられる」小沼神社と観音像でした。
        
小沼神社と聖観音立像

あの観音像に、また東京で出会えるかと思うと、いまから大変心待ちにしています。
「観仏日々帖」に「小沼神社・観音像」をご紹介していますので、ご覧いただければと思います。

東北歴史博物館で巡回開催される、「みちのくの観音さま〜人に寄り添うみほとけ展」とセットで観ると、東北の見どころある仏像が堪能できるのではないかと思います。

1月24日(13:30〜15:00)には、丸山士郎氏による記念講演会「みちのくの仏像」が開催されます。
詳しくは、講演会ページをご覧ください。



●宮城・東北歴史博物館で「みちのくの観音さま展」開催(1/24〜3/12)(2014年12月20日‎)

宮城県多賀城市の東日本大震災復興祈念「みちのくの観音さま〜人に寄り添うみほとけ展」が開催されます。

この展覧会は、11/1〜12/14に福島県立博物館で開催されていた「みちのくの観音さま展」の巡回展として、東北歴史博物館で開催されるものです。
開催期間は、2015年1月24日(土)〜3月12日(木)です。
詳しくは、東北歴史博物館HP・
展覧会ページをご覧ください。

展覧会概要・出展仏像などについては、本HPで先に福島県立博物館展出品仏像目録をご紹介しましたので、そちらをご覧ください。

なお、小沼神社・聖観音像は、今回の東北歴史博物館展には出展されません。
東京国立博物館で2015年1月14日〜4月5日に開催される、「みちのくの仏像展」の方に出展されます。

関連行事として、次のような講座が開催されます。

 



●京都国立博物館で「島根鰐淵寺の名宝展」開催(1/2〜2/15)(2014年12月20日‎)

京都国立博物館で、特別展観「山陰の古刹・島根鰐淵寺の名宝展」が開催されます。

開催期間は、2015年1月 2日(金) 〜 2015年2月15日(日)です。
詳しくは、京都国立博物館HP・
展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、10/10〜11/24に古代出雲歴史博物館で開催された「修験の聖地出雲国・浮浪山鰐淵寺展」の展観内容と、ほぼ同じもののように思われます。

古代出雲歴史博物館展の展観概要・出展作品などにつきましては、本HPでご紹介していますので、そちらをご参照ください。



過去の展示会情報

2000年上半期

2000年下半期

2001年上半期

2001年下半期

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