展示会案内 2013
■
全国の美術館、博物館の展示会情報については、下記リンク先を参照ください。
--------------------------------------------------------------------------------
●葛城市歴史博物館で「今在家観音寺の仏像」特別公開(12/20〜1/19)(2013年11月30日)
奈良県葛城市忍海の葛城市歴史博物館で、今在家区に所在する観音寺本堂の本尊、「観音菩薩立像」(平安時代)が、特別公開されます。
公開期間は、2013年12月20日(金)から2014年1月19日(日)です。
この仏像は、知られていない仏像だと思います。写真をご覧になって、どの様に感じられるでしょうか?
もちろん無指定です。私もその存在を知りませんでした。
葛城市の北部、今在家区で檀家が管理する観音堂の本尊としてお祀りされている観音像で、観音堂の改修工事に伴って、葛城市歴史博物館がお預かりすることになり、特別公開の運びとなったとのことです。
門外不出であったこの観音立像が、寺を離れて博物館などの場所で公開されるのは、今回が初めてのことだそうです。
詳しくは、
葛城市歴史博物館HPをご覧ください。
葛城市歴史博物館HPの解説によれば、次のとおりです。
「本像は、当初は頭部から足先、その下の蓮肉部まで一材を彫り刻んで造られたと考えられる、平安時代の一木造の仏像です。
像高は約56cmと小像ながら、全体的に均整のとれたプロポーションで、腹部は細く括れ腰部分は重量感があり、安定した姿で台座の上に立っています。
そして顔の表情は、厳しそうな目の奥に静かな慈愛をたたえる眼差しをしています。
また、天冠の上に前髪を結上げ、部分的ながら正面に天冠を見せる髪形などは個性的で、一風異なる風貌は同時代の他の観音菩薩像にはあまり見られない本像の特徴であるといえます。」
写真、解説をみると、ムッチリとした体躯が印象的で、なかなか興味深い平安仏のようです。
歴史博物館のご担当にお教えいただいたところによると、
・制作年代は11世紀と考えられ、当初は漆下地に彩色像であった。
・この像は、これまでに郷土史などの本にも詳しく解説されたことがなく、また普段は一般の人には拝観は難しい。
仏像だそうです。
私は、葛城まで出かけるのはちょっと難しそうですが、観に行ってみる値打ちはありそうな平安仏のようです。
●サントリー美術館で「天上の舞・飛天の美展」開催(11/23〜1/13)(2013年11月30日)
東京都港区のサントリー美術館で「平等院鳳凰堂平成修理完成記念〜天上の舞・飛天の美展」が開催されています。
開催期間は2013年11月23日(土)〜2014年1月13日(月)です。
詳しくは、
サントリー美術館HPをご覧ください。
京都・平等院鳳凰堂の平成修理完成を記念し、修理落慶に先立ち開催されたもので、堂内の国宝 「雲中供養菩薩像」のほか、寺外初公開となる国宝 「阿弥陀如来坐像光背飛天」などが展示されます。
「雲中供養菩薩像」は、52躯中14躯が、「光背飛天」は12躯中6躯が、出陳展示されます。
これらの像を、ごく眼近に観ることが出来るというのは、大変愉しみです。
. 展覧会ポスター 平等院鳳凰堂・雲中供養菩薩像 阿弥陀如来坐像光背飛天
展覧会HPには、このように案内されています。
空を飛び、舞い踊る天人は「飛天」と呼ばれ、インドで誕生して以来、優美で華麗な姿で人々を魅了し続けてきました。
本展覧会では、地域・時代を超えて展開 した飛天の姿を、彫刻・絵画・工芸の作品によってたどります。
この開催主旨のとおり、平等院の雲中供養菩薩、光背飛天だけではなく、インド、中国、日本の飛天にかかわる像や荘厳品などが、数多く展示されています。
私の注目は、岐阜・常楽寺の菩薩坐像2躯(重文)、大阪・四天王寺の阿弥陀三尊像脇侍1躯(重文)、岩手・松川二十五菩薩堂の菩薩・飛天12躯が出陳されることです。
なかでも、岐阜県関市・常楽寺の2躯の菩薩坐像は、2010年に新たに重要文化財に指定された像で、平安前期の製作といわれています。
私もまだ拝したことがありません。
小像ながら、なかなかボリューム感もあり魅力的な像のようで、この展覧会で拝するのを、愉しみにしています。
. 岐阜県関市・常楽寺〜菩薩坐像 岩手・松川二十五菩薩堂〜菩薩・飛天像 .
●東北歴史博物館で「神さま仏さまの復興〜被災文化財の修復と継承展」開催(11/16〜1/13)(2013年11月22日)
宮城県多賀城市の東北歴史博物館では「神さま仏さまの復興〜被災文化財の修復と継承展」が開催されています。
開催期間は、2013年11月16日(土)〜2014年1月13日(月)です。
詳しくは、
東北歴史博物館HPをご覧ください。
この展覧会は、東日本大震災で傷み、修復された宮城県内の神像や仏像を紹介する復興祈念特別展です。
大震災で損傷した栗原市築館の双林寺・薬師如来坐像(平安時代・重要文化財)ほかの諸仏や、登米市津山町の大徳寺・不動明王坐像(平安時代・重要文化財)などが、損傷の修復を終えた姿で展示されています。
東北歴史博物館HPには、このような開催主旨が述べられています。
「東日本大震災により,宮城県内の文化財も甚大な被害を受けたものが少なくありません。現在,復興事業の一環として,これらの修復が進められています。
この特別展は,修復された文化財のうち神像や仏像などに特に焦点を当て,修復された姿を公開するとともに,文化財を修復することや未来へ引き継ぐ意義について考えていこうとするものです。」
NHK・NEWSWEB:HPには〜「退院」進む 被災仏像 宮城で展示〜と題し、この展覧会の開催と仏像修復の状況などが、詳しく報道されています。
展覧会ポスター 双林寺・薬師如来像 大徳寺・不動明王坐像
●岐阜市歴史博物館で「岐阜の至宝〜伝承と創造展」開催(10/11〜11/17)(2013年10月12日)
岐阜市大宮町の岐阜市歴史博物館では、「岐阜の至宝〜伝承と創造展」が開催されます。
開催期間は10月11日(金)〜11月17日(日)です。
詳しくは、
岐阜市歴史博物館HPをご覧ください。
本展では岐阜県を代表する国宝・重要文化財38点を含む文化財が展示されます。
仏像は、美江寺・乾漆十一面観音立像(奈良時代・重文)、護国之寺・塑造仏頭(奈良時代・県指定)、願興寺・普賢菩薩坐像(鎌倉時代・重文)などが出展されます。
美江寺・十一面観音立像(像高:176.6p)は、地方には稀な脱活乾漆造りの優品で、奈良時代の制作、岐阜県最古の仏像と云われています。
年に一回、4月18日のみのご開帳の仏像で、普段はなかなか拝観が難しい仏像ですので、この機会に観ておくチャンスかもしれません。
展覧会ポスター 美江寺・十一面観音立像 護国之寺・塑造仏頭
●横浜市・金沢文庫で「東大寺〜鎌倉再建と華厳興隆展」開催(10/11〜12/1)(2013年10月12日)
神奈川県横浜市金沢区の金沢文庫では、「東大寺〜鎌倉再建と華厳興隆展」が開催されます。
開催期間は、2013年10月11日(金)から 12月1日(日)です。
詳しくは、
金沢文庫HPをご覧ください。
この展覧会は、治承四年の南都焼討以降の再建事業や、華厳学の興隆を中心とする、鎌倉時代における東大寺の意義を考え、鎌倉再建期の東大寺の至宝を中心に展示、初公開を含む金沢文庫の東大寺関係の収蔵品を含めて紹介されるとのことです。
東大寺から、重源上人坐像(国宝)、地蔵菩薩立像(快慶作・重文)、四天王立像(戒壇院千手堂安置・重文)弥勒仏坐像(試みの大仏・重文)などが出展されます。
称名寺塔頭光明院から近年発見された、運慶作・大威徳明王像(重文)も特別出展されます。
重源上人坐像(国宝) 地蔵菩薩立像(快慶作・重文) 弥勒仏坐像(試みの大仏・重文) 運慶作・大威徳明王像(重文)
●山梨県立美術館で「山梨の名宝展」開催(10/19〜12/2)(2013年10月12日)
山梨県笛吹市の山梨県立美術館では「山梨の名宝展」が開催されます。
本展は、
「国民文化祭の開催にあわせて、国宝・重要文化財を中心とした「山梨の名宝」を一堂に会し、それらを育んできた山梨の豊かな歴史をふりかえるとともに、さらに将来へと受け継いでいく」
として開催されるものです。
詳しくは、
山梨県立美術館をご覧ください。
主な仏像の出展は、以下のとおりです。
. 「山梨の名宝展」ポスター 大善寺・薬師如来坐像 宝珠寺・大日如来坐像
●茨城・五浦美術館で「岡倉天心と文化財展」開催(10/12〜11/24)(2013年9月28日)
茨城県北茨城市の茨城県天心記念五浦美術館では、「岡倉天心と文化財展〜まもり、つたえる、日本の美術」が開催されます。
開催期間は、2013年10月12日(土)から 11月24日(日)です。
詳しくは、
五浦美術館HPをご覧ください。
この展覧会は、岡倉天心生誕150年・没後100年を記念して、天心ゆかりの五浦美術館で開催されるものです。
展覧会案内に、
「伝統美術を守り後世に伝えるため幅広い活動を行った天心。
天心が創設した日本美術院で当初から行われた国宝彫刻修理事業は現在も美術院・国宝修理所へと発展的に受け継がれている。
天心の活動を示す資料や美術院が修理した仏像、修理記録などを展示紹介します。」
とあるように、
新納忠之介に始まる美術院国宝修理所の明治期からの歴史をたどりつつ、美術院による模刻仏像や、美術院が修理にあたった茨城の仏像などを中心に展示されるようです。
宇治平等院・雲中供養菩薩(国宝)、熊野速玉大社・国常立命坐像(国宝)、常陸太田市西光寺・薬師如来坐像(重文)、水戸市薬王院・十二神将像(県指定)、三島市佐野美術館・大日如来坐像(重文)などが展示されます。
この展覧会は、明治初期の廃仏棄釈の嵐のなかで古文化財、仏像の保存保護に努めた、岡倉天心の業績や、仏像の保存修理に偉大な貢献を果たしてきた美術院国宝修理所の歴史を振り返ることが出来る、大変興味深い展覧会です。
五浦美術館は、茨城県の北端、福島県の県境にあり、交通面は少々大変ですが、天心ゆかりの六角堂や日本美術院跡地をはじめとする史跡が点在しており、散策がてら是非訪れてみられてはいかがでしょうか。
. 熊野速玉大社・国常立命坐像 西光寺・薬師如来坐像 薬王院・十二神将像 佐野美術館・大日如来坐像
●下田市・上原仏教美術館で、「伊豆の薬師如来像展」開催(10/26〜12/8)(2013年9月28日)
静岡県下田市の上原仏教美術館では、開館30周年記念企画展「癒しの仏・薬師如来〜伊豆の薬師如来像〜」が開催されます。
開催期間は10月26日(土)〜12月8日(日)です。
詳しくは、
上原仏教美術館HPをご覧ください。
上原佛教美術館では、これまでも伊豆の古仏を紹介する、「伊豆の女神像」「伊豆の観音像」「伊豆を守護する仏たち」といった展覧会が開催されてきましたが、今回は開館30年を記念して、伊豆の薬師如来像を紹介する記念展が開催されるものです。
まだ展示仏像目録は掲載されていませんが、伊豆最古の仏像である河津町・南禅寺薬師如来坐像、南伊豆町・青龍寺薬師如来坐像、下田市・曹洞院薬師如来坐像、厳重秘仏で寺外初公開の下田市・観音寺薬師如来坐像(10世紀)などが展示されるとのことです。
なかなか興味深い展覧会だと思います。
河津町・南禅寺薬師如来坐像 南伊豆町・青龍寺薬師如来坐像
●東京藝術大学大学美術館で「国宝 興福寺仏頭展」開催(9/3〜11/24)(2013年9月9日)
東京藝術大学大学美術館では「興福寺創建1300年記念・国宝 興福寺仏頭展 」が開催されます。
開催期間は、2013年9月3日(火)から 11月24日(日)です。
詳しくは、
興福寺仏頭展公式サイトHPをご覧ください。
この展覧会については、皆さんよくご存じで、公式サイトでも詳しく案内説明されていますので、開催のご紹介だけにとどめさせていただきます。
興福寺仏頭のほか、板彫十二神将像、東金堂十二神将像が全て展示されるほか、深大寺・銅造釈迦如来倚像も展示されます。
●京都産業大むすびわざ館で「勝林院の仏教文化と歴史展」開催(9/3〜10/20)(2013年9月9日)
京都大原の勝林院は法然上人がいわゆる「大原問答」を行った寺として知られていますが、開基一千年の節目を迎えることから、本尊阿弥陀如来の成立年代や変遷などを解明することを目的に調査を実施されました。
京都産業大学・むすびわざ館ギャラリーでは、その調査成果の資料などを展示する「京都大原 勝林院の仏教文化と歴史展」が開催されます。
開催期間は、9月3日(火)〜10月20日(日)です。
詳しくは、
京都産業大学むすびわざ館HPをご覧ください。
本尊阿弥陀如来像は、1736年に焼失、翌年に現在の像(約280p)が安置されたと伝わっていますが、今回の調査で、胴部は江戸時代であるのに、頭部は室町時代の制作であることが判明しました。
また、阿弥陀像胎内からは、平安時代後期・鎌倉時代・江戸時代のものであると考えられる3体の小仏像が見つかりました。
展覧会では、発見された小仏像3体が、展示されています。
勝林院・本尊阿弥陀如来像 本尊胎内仏・平安後期 胎内仏の納入状況
●東京国立博物館で「運慶・快慶周辺とその後の彫刻」を特集陳列(8/27〜11/17)(2013年9月9日)
東京国立博物館、本館14室では、「運慶・快慶周辺とその後の彫刻」を特集陳列中です。
陳列期間は、2013年8月27日(火)〜2013年11月17日(日)です。
詳しくは、
東京国立博物館HPをご覧ください。
陳列されている仏像は、皆さんもうお馴染の、光得寺・大日如来坐像、真如苑・大日如来像などです。
「大仏師運慶」の銘が腹内に残されているという伝えがあると云われる、浄瑠璃寺伝来・十二神将4躯、静岡・願情寺阿弥陀如来像なども展示されています。
. 光得寺・大日如来坐像 真如苑・大日如来像 浄瑠璃寺伝来・十二神将 静岡・願情寺阿弥陀如来像
●大阪市立美術館で「北魏・石像仏教彫刻の展開展」開催(9/7〜10/20)(2013年9月9日)
大阪市立美術館では「北魏・石像仏教彫刻の展開展」が開催されます。
開催期間は、9月7日(土)〜10月20日(日)です。
詳しくは、
大阪市立美術館HPをご覧ください。
この展覧会では、大阪市立美術館が収蔵する中国石仏・山口コレクションを中心に、北魏石造仏教彫刻約60件が展示されます。
山口コレクションは、故山口謙四郎氏が多年にわたって蒐集した中国美術のコレクションです。
山口謙四郎氏は、明治19年生まれの関西の実業家で、大正末年頃から東洋古美術の蒐集と研究に力を注いだ人です。
とりわけ中国仏教彫刻蒐集には情熱を傾け、個人としてこれだけの蒐集に意を注いだ人は稀といわれています。
山口氏が昭和32年に逝去後、昭和53〜55年にわたり、このコレクションを大阪市立美術館が購入し、「山口コレクション」の名で知られるようになっているものです。
大阪市立美術館では、時々、この山口コレクションを核とした中国石仏の展覧会が開催されています。
「北魏・石像仏教彫刻の展開展」ポスター 展示される北魏石仏(山口コレクション) .
●泉屋博古館(京都)で「仏の美術〜ガンダーラから日本まで展」開催(9/7〜10/20)(2013年9月9日)
京都の鹿ケ谷の泉屋博古館では、「仏の美術〜ガンダーラから日本まで展」が開催されます。
開催期間は、9月7日(土)〜10月20日(日)です。
詳しくは、
泉屋博古館HPをご覧ください。
泉屋博古館では、折々、所蔵品を中心とした仏像展が開かれていますが、本展ではガンダーラの石仏、中国の金銅仏、日本の平安・鎌倉の木彫仏など、各地域の仏像を取りあわせて、仏像の源流から日本の風土に溶け込んだ仏像までをたどる展示となっています。
. 「仏の美術〜ガンダーラから日本まで展」ポスター 毘沙門天像(鎌倉時代) 如来立像(五胡十六国時代)京博蔵
●香雪美術館で「仏教美術の輝き展」開催(9/23〜10/27)(2013年9月9日)
神戸市東灘区御影の香雪美術館では、開館40周年記念名品展が、分野別に順次開催されていますが、記念展の第3期として仏教美術編「仏教美術の輝き展」が開催されます。
開催期間は、9月23日(月・祝)〜10月27日(日)です。
詳しくは、
香雪美術館HPをご覧ください。
香雪美術館は、朝日新聞社の創業者・村山龍平が蒐集した日本、東洋の古美術コレクションなどを収藏する、昭和47年(1972)に設立された美術館です。
今回の「仏教美術の輝き展」での注目は、普段展示されていない、薬師如来立像が展示されることです。
この薬師如来像は、9世紀前半を降らない平安前期彫刻の優品として知られています。
像高129pの漆箔彩色像で、頭頂から蓮肉まで木心を込めた一材から彫り出され、内刳りはありません。
最澄が比叡山根本中堂に安置した「朱衣金体」の薬師像の伝統をひく像ではないかと云われています。
堂々たる重量感ある肉躰に豊満感ある面相で、迫力を感じる像です。
また、眼鼻や耳、衣文などは特異で個性的な造形です。
是非一度、見て観られることをお薦めしたい仏像です。
「仏教美術の輝き展」ポスター 香雪美術館蔵・薬師如来立像
●広島県・三原市で「御調八幡宮と三原市の文化財展」開催(9/7〜10/6)(2013年9月1日)
広島県三原市では、「御調八幡宮と三原市の文化財展」が、御調八幡宮(みつきはちまんぐう)と三原リージョンプラザの2会場において、開催されます。
この展覧会では、平安時代の初期の神像として、近年大きな注目を浴びている御調八幡宮の神像が展示されます。
開催期間は、2013年9月7日(土)から10月6日(日)です。
詳しくは、
三原市教育委員会のHPをご覧ください。
展覧会では、御調八幡宮の神像・行道面(国指定重要文化財)のほか、大日堂の宝冠阿弥陀如来坐像(県指定文化財)や善根寺の菩薩立像(県指定文化財)といった、三原市にのこる平安彫刻も展示されます。
何と言っても最大の目玉は、御調八幡宮所蔵の重文指定7躯の神像全てが、御調八幡宮収蔵庫で展示されることです。
|
御調八幡宮・本殿
|
御調八幡宮の神像は、近年、その存在が知られるようになったものです。
平安時代の制作と考えられていますが、なかでも、最も古様な女神像などは、神像彫刻初期の9世紀の制作とみられており、神像彫刻の遺例の中で、場合によっては最も古い作品とみられるという考えもあるようです。
この神像が、どのような経緯でその存在が注目されるようになったのかは、私はよく知らないのですが、平成15年(2003)に7躯の神像が重要文化財に指定されています。
この御調八幡宮の神像が、初めて公開されたのは、平成19年(2007)に奈良国立博物館で開催された「神仏習合展」でした。
女神坐像2躯(重要文化財)が展示され、大変注目を浴びました。
最も古様な女神坐像(像高71.7p・カヤと思われる材の一木彫)は、9世紀前半から半ばまで遡る初期神像彫刻の秀作と云われます。
私も、この像をはじめて観た時、鋭い彫口で、内から発するオーラというか霊気の迫力に、圧倒され魅了されてしまいました。
その後は、今年・平成25年(2013)春、東京国立博物館で開催された「大神社展」に、この女神坐像と八幡神坐像(重要文化財)、男神坐像(無指定)の三躯が展示されました。
そして、今回の展覧会では、この7躯の重文指定神像全躯が、はじめて公開されることになったとのことです。
7躯は、前期と後期にそれぞれ分けて展示されるようですので、展示期間にご注意ください。
広島・三原まで出かけるのは大変かもしれませんが、観に行く値打ちのある展覧会のように思います。
最古様の女神坐像(神仏習合展・大神社展展示) 八幡神坐像(大神社展展示) 女神坐像(神仏習合展展示)
●佛教大学宗教文化ミュージアムで「魅惑の仏たち―大阪・孝恩寺の木彫群―」写真展開催(7/20〜8/25)(2013年8月4日)
京都市右京区嵯峨広沢西裏町の佛教大学宗教文化ミュージアムでは、夏期パネル展示「魅惑の仏たち―大阪・孝恩寺の木彫群―」写真展を開催中です。
展示期間は7月20日(日曜)〜8月25日(日曜)です。
詳しくは、
佛教大学宗教文化ミュージアムHPをご覧ください。
今展示会は、これまで佛教大学で調査等のために撮影した、孝恩寺仏像群の写真の中から約50点を写真パネルにして展示されているものです。
写真パネルだけの展示ですが、孝恩寺の仏像群の写真がこれだけまとまって展示されたのは、初めてではないかと思われます。
孝恩寺は大阪府の南部、貝塚市木積に在る行基開基の伝承のある古刹です。
孝恩寺の仏像群は、ご存じのとおり、特異で個性的な造形表現で、強烈な個性を主張している仏像として知られています。
これらの仏像は、平安時代の仏像と考えられていますが、佛教大学の井上正氏は、その多くが奈良時代の制作に遡ると論じており、近年注目を集めています。
また、今回の「魅惑の仏たち―大阪・孝恩寺の木彫群―」の写真集図録(55P)が、刊行されています。
宗教文化ミュージアム様より、来館された方には余部があれば一人一冊、無料配布頂けるとのご案内を頂戴しましたので、お知らせします
お問い合わせ先
佛教大学宗教文化ミュージアム
〒616−8306 京都市右京区嵯峨広沢西裏町5-26
Tel:075-873-3115 Fax:075-873-3121
●東京国立博物館で「平成25年 新指定 国宝・重要文化財展」開催(4/16〜5/6)(2013年4月20日)
東京国立博物館・本館特別1~2室で、恒例の「平成25年 新指定 国宝・重要文化財展」が、開催されます。
開催期間は2013年4月16日(火) 〜 2013年5月6日(月)です。
詳しくは、
東京国立博物館HPをご覧ください。
今回は、新たに国宝、重要文化財に指定された53件が展示されます(写真パネル展示4件含む)。
仏像の展示は、次のとおりとなっています。
今年度は、運慶作、快慶作の鎌倉彫刻が揃って国宝に追加してされました。
運慶は、伊豆韮山の願成就院の阿弥陀如来以下の諸像です。
願成就院・阿弥陀如来坐像 不動明王及び二童子立像 毘沙門天立像
快慶は、奈良桜井の安倍文殊院の文殊菩薩及び脇侍像です。
運慶作(含む推定)の国宝は、円成寺・大日如来坐像、東大寺南大門・仁王像、興福寺北円堂・弥勒如来坐像・無着世親像、金剛峰寺・八大童子像、東大寺俊乗堂・重源像と願成就院諸像ということになります。
一方快慶作の国宝は、浄土寺・阿弥陀三尊像、東大寺・僧形八幡神坐像、東大寺南大門・仁王像と阿部文殊院像ということになります。
私は、個人的には、安倍文殊院の文殊菩薩像が国宝になるのなら、東大寺俊乗堂の阿弥陀如来立像が国宝になっても良いのではないだろうかという気がしています。
俊乗堂の阿弥陀如来立像は、三尺阿弥陀の小像ですが、その素晴らしい出来にはいつも惚れ惚れとしています。
阿部文殊院・騎獅文殊菩薩及脇侍像 東大寺俊乗堂・阿弥陀如来立像
重要文化財指定の中での私の注目像は、福井・青蓮寺の観音菩薩立像と、滋賀・天満神社の天王立像です。
青蓮寺は、福井県三方郡美浜町にあり、泰澄創建と伝えられています。
観音菩薩立像は、像高53.5pの「代用檀像」で、なかなか美しい像です。普段は小浜市の県立若狭歴史民俗資料館に寄託されています。
天満神社は、比良天満宮として知られ、比良山地の東側、大津市北比良にあります。
天王立像は、近年注目されるようになった「鉈彫り」像です。
重量感ある体躯と眼をむいた表情には迫力があり、天満宮創建期(947)の10世紀の作と考えられています。
福井・青蓮寺 観音菩薩立像 滋賀・天満神社 天王立像 .
今回は、願成就院から不動三尊像、毘沙門天像も出展されていますし、見ておきたい諸仏像が展示されています。
是非、お出かけください。
●東博ミュージアムシアターで「三蔵法師の十一面観音」上演(4/6〜6/30)(2013年4月13日)
|
|
東京国立博物館のTNM&TOPPANミュージアムシアターで、「三蔵法師の十一面観音」と題し、東博蔵・十一面観音菩薩立像(重文)を紹介する、バーチャルリアリティ作品が上演されています。
上演期間は、2013年4月6日(土)〜6月30日(日)。上演時間は40分程度で、鑑賞料は大人500円です。
上演スケジュールなど、詳しくは
東博ミュージアムシアターHPをご覧ください。
東博ミュージアムシアターでは、これまでもいろいろな作品が上演されていますが、今回は、唐将来の檀像十一面観音の超高精細映像が大画面で観ることができるということなので、鑑賞してきました。
作品の筋立て、内容は、さほどに深みがある突っ込んだものではありませんでしたが、流石に、デジタルデータによるバーチャルリアリティと銘打っているだけあって、観音像の超精密映像を、いろいろな角度から、愉しむことが出来ました。
ご存じのとおり、この檀像は、多武峰談山神社に伝わった檀像です。
大化の改新で著名な藤原鎌足の長男、定恵(643〜665)が、留学僧として唐に渡り、天智4年(665)に帰国した時に、この十一面観音像を持ち帰った可能性が高く、その後鎌足ゆかりの多武峰に伝来したと考えられています。
この観音像の像容は、インドに渡った僧・玄奘が、新たに漢訳した「十一面神呪心経」に説かれるものと、ぴったり一致しています。
白檀像、像高、数珠をかけた施無畏手としていることなどです。
また、インド風の風貌をしていることも、玄奘がインドから持ち帰った仏像の影響によるものだろうと考えられています。
唐時代、7世紀の制作と考えられており、我が国に残る檀像の最古の作品で、推定とはいえ、伝来をたどることができる大変重要な仏像です。
この作品が、「三蔵法師の十一面観音」と題されているのは、このような伝来像であることによるものです。
この像が、東京国立博物館蔵になっているのは、明治以降、このような来歴をたどったからです。
多武峰談山神社は、明治初年の神仏分離・廃仏棄釈で、もともと多武峰妙楽寺といった寺院を神社に改称しましたが、これにより仏像などが売却・棄却されました。
この十一面観音像は、フェノロサが明治21年以前に多武峰圓城院から50円で購入、明治22年に東京美術学校の蔵品となり、明治25年に東京帝室博物館に140円で譲渡されて、現在に至っています。
お蔭で、本像は失われずに済み、また博物館でいつでも間近に鑑賞することができるようになったというわけです。
東博にお出かけのついでに、ミュージアムシアターによってこの檀像の精密映像を鑑賞されてはいかがでしょうか。
東京国立博物館蔵(多武峰談山神社伝来)十一面観音立像〜東洋館展示〜
●千葉市美術館で「仏像半島〜房総の美しき仏たち展」開催(4/16〜6/16)(2013年3月16日)
千葉市美術館で「仏像半島〜房総の美しき仏たち展」が開催されます。
開催期間は4月16日(火)から6月16日(日)です。
詳しくは、
千葉市美術館HPをご覧ください。
今回の展覧会は、房総の仏像約150体が展示されるという、なかなか大規模なもののようです。
HPの展覧会案内には、このように書かれています。
「展示室に集うのは、房総半島各地から選りすぐられた仏像約150体。
関東の白鳳仏としてきわめて重要な龍角寺の薬師如来坐像に始まり、平安前期の森厳な作例を経て、定朝様や鎌倉様式を受容してゆく流れを追う一方で、『七仏薬師と妙見菩薩』『房総の鋳造仏と上総鋳物師』といったこの地ならではのテーマも検証します。
また造立当初の雰囲気を再現すべく、小松寺や東明寺、真野寺の諸尊を群像として立体的に配置。
いつもの千葉市美術館とはひと味違った、劇的な展示空間を体感していただきます。」
展示仏像目録は、まだ公開されていないようですが、パンフレットによれば、
龍角寺・薬師如来坐像、東明寺・薬師如来立像ならびに十二神将像、小松寺・薬師如来立像、常燈寺・薬師如来坐像、東光院・七仏薬師像などが展示されるようです。
私の注目の一つは、小松寺・薬師如来立像(県指定)です。
この像は、秘仏でなかなか拝することができませんが、平安前期と思われる迫力あふれる仏像です。
もうひとつの注目は、東光院・七仏薬師像(県指定)です。
この七仏薬師は、33年に一度のご開帳で、本年がちょうどご開帳の年にあたります。
東光院HPによると、この千葉市美術館への出展をもって、平成25年の秘仏御開帳とすることとしたそうです。
6月9日には、武笠朗氏(実践女子大学教授)による、記念講演会「房総の仏像ー鎌倉時代を中心に」が開催されます。
房総の仏像の、これだけ充実した展覧会は、そう見られないことと思います。
必見の展覧会と、期待しています。
小松寺・薬師如来立像 東光院・七仏薬師像 .
●奈良国立博物館で「当麻寺〜極楽浄土へのあこがれ展」開催(4/6〜6/2)(2013年3月16日)
奈良国立博物館で当麻曼荼羅完成記念特別展、「当麻寺〜極楽浄土へのあこがれ展」が開催されます。
詳しくは、
奈良国立博物館HPをご覧ください。
なんといっても大注目は、国宝・綴織當麻曼荼羅(つづれおりたいままんだら)の展示です。(展示期間:4/6〜14、4/23〜5/6)
中国・唐または奈良時代(8世紀)の制作で、一般公開は、実に30年ぶりとなるそうです。
重文・當麻曼荼羅(文亀本)、室町時代・永正2年(1505)制作も、展示されます。(展示期間:4/16〜21、5/21〜6/2)
仏像では、重文・四天王像のうち持国天立像(脱活乾漆・7世紀)や重文・妙幢菩薩立像(10世紀)などが展示されるようです。
5月25日(土)には、岩田 茂樹氏(奈良博・学芸部長補佐)の「當麻寺の彫像」と題する講演会も開催されます。
国宝・綴織當麻曼荼羅 重文・持国天像 重文・妙幢菩薩立像 .
●東京国立博物館で「国宝大神社展」開催〜神像40体出展(2013年2月23日)
東京国立博物館 平成館で「国宝大神社展」が開催されます。
開催期間は、2013年4月9日(火)〜6月2日(日)です。
詳しくは、
東京国立博物館・国宝大神社展HPをご覧ください。
「日本全国の神社パワー大集結。過去最大の神道美術展!
全国の神社の全面協力のもと、日本の神々に関する文化財を総合的に展観する、空前絶後の展覧会です。
国宝・重要文化財が160件! 全国の神像彫刻約40体が大集合!」
大神社展HPには、こんなキャッチコピーが書かれています。
「この展覧会は、伊勢神宮の第62回式年遷宮を機に、神社本庁をはじめ、日本全国の神社の全面的な協力を得て、神社の宝物や日本の神々に関する文化財を総合的にご覧いただく、貴重な機会となります。」
と、開催主旨に記されていますが、確かにこれだけの神道文化財が一堂に集められた展覧会はかつてないもので、キャッチコピーどおりの必見の展覧会だと思います。
なかでも、神像彫刻は、約40体が展示されるということですが、まだ展示目録が掲載されていません。
HP(出品予定)で出展されることになっている神像は次のとおりです。
ラインアップをみると、その凄さにびっくりされたのではないかと思います。
平安時代の名だたる有名神像が、ほとんど全部集められたのではないかと思えるほどで、これだけの神像を一堂で同時に観ることができるのは、未だかつてなかった筈で、もう二度とない機会かもしれません。
40体の展示ということですので、このほかには、どんな神像が登場するのか、本当に楽しみです。
. 松尾大社・男神坐像 東寺・女神坐像 御調八幡宮・八幡神坐像 熊野速玉大社・家津美御子大神坐像 高野神社・随神立像
●龍谷ミュージアムで「若狭・多田寺の名宝展」開催(2013年1月7日)
龍谷ミュージアムで「若狭・多田寺の名宝展」が開催されます。
開催期間は2013年2月9日(土) 〜 2013年4月7日(日)です。
詳しくは、
龍谷ミュージアムHPをご覧ください。
この展覧会には、多田寺の薬師如来立像と、両脇侍の十一面観音立像、菩薩立像(3躯共重要文化財)が、初めて、そろって3点セットで出展されます。
長らく絶対秘仏であった多田寺・薬師如来像が博物館に出展されるのは、平成19年(2007)に奈良国立博物館で開催された「神仏習合展」に出展されたのが初めてで、今回が2度目のことだと思います。
また、両脇侍の十一面観音立像、菩薩立像そろって薬師三尊像の形で、寺を出て出展されるのは、今回が初めてのことです。
多田寺の薬師如来像は、古来絶対秘仏として固く厨子の扉を閉ざしていました。
この厨子の扉を初めて開いたのは、郷土の文化財研究家の野村栄一氏です。
野村氏は、諸々尽力してやっと昭和26年(1951)に開扉に漕ぎ付け、昭和30年、福井県文化財報告書に報告文を掲載しました。
報告書を読んで、この諸像に強い興味を覚えた久野健氏が、昭和32年に開扉調査。
「奈良時代から平安初期制作の古仏」であるとされ、一躍大注目、脚光を浴びた仏像です。
久野健氏は、多田寺薬師像の秘仏開扉のときの有様を、自著「仏像の旅〜多田寺の秘仏〜」で、次のように感慨深く語っています。
「多田寺側の開扉承諾が得られぬまま、他の古佛調査と共に、小浜へ赴いた。
多田寺で開扉拝観を願うも、
『野村栄一さんに頼まれ、扉を開けました時も、それに立ち会った信徒総代5人が5人とも、なくなられたり、病気をされたりしまして・・・・・・』
と、老僧が渋るなか、話し合い2時間。
あきらめかけた頃、読経が始まり1時間の後、厨子の扉が開かれ、待望の秘仏を間近に見ることが出来た。
まさに、奈良から平安初期にいたる古様を残す、古佛であった。」
|
多田寺内陣・厨子
|
いまでは、お願して多田寺を訪ねれば、薬師三尊像の拝観ができるようになりましたが、お寺では、立派な厨子の中に安置され、また薬師像の全面には薄い垂れ幕がかかっていますので、なかなか間近にじっくり拝観というわけにはいかないと思います。
今回の展覧会では、三像セットで、間近にじっくりとみることができるのではないかと思いますので、仏像愛好家には、絶対必見の展覧会でしょう。
十一面観音像は従来から、飛鳥白鳳の金銅仏の作風を思わせるなど極めて古様で、奈良時代8世紀の制作と考えられています。
本尊薬師如来像は、9世紀・平安前期の制作とする考え方が主力でしたが、近年では多田寺縁起に伝える天平勝宝元年(749)・勝行上人建立の本尊、即ち天平17年(745)に聖武天皇不予に際して諸国に造立が命じられた薬師像の再興像とし、制作時期を8世紀・奈良時代の遡らせるという考え方も有力になってきています。
いずれにせよ、多田寺の古仏は、奈良末〜平安初期の木彫と考えられる、大変貴重かつ興味深い仏像で、私も、展覧会でじっくりと観てみたいと楽しみにしています。