ホーム トピックス 観仏日々帖 ぶらり散歩 古仏愛好 古仏礼賛 仏像の基本 アラカルト リンク データ 更新項目




展示会案内   2021年


全国の美術館、博物館の展示会情報については、下記リンク先を参照ください。

観 仏三昧 ─ 仏像と文化財の情報ページ─
〈展覧会情報、仏像の公開情報、講演会・シンポジウム情報などを詳細に紹介しているサイト。〉
インターネットミュージアム
〈全国の美術館、博物館の検索と展覧会情報を掲載〉
Museum Information Japan
〈全国の美術館案内〉
----------------------------------------------------------------------------------------



●城陽市歴史民俗資料館で「神のすがた・仏のかたち〜城陽・井手を中心に展」開催(10/30〜12/19) (2021年10月25日‎)


京都府城陽市の城陽市歴史民俗資料館で、帝塚山大学附属博物館との共催による、秋季特別展「神のすがた・仏のかたち−城陽・井手を中心に−」が開催されます。

 
展覧会チラシ・パンフレット
パンフレット(右下)西福寺・聖観音像(10C)、(中下)西福寺・不動明王像(11C)


開催期間は、2021年10月30日(土)〜12月19日(日) です。
詳しくは、
城陽市歴史民俗資料館HP並びに展覧会ページをご覧ください。

帝塚山大学附属博物館では、数年前から城陽市・井手町を主な対象とする寺社文化財の調査を実施していますが、本展は、城陽市歴史民俗資料館との共同調査の成果を加えた企画展として開催されるものです。

主な出展作品は展覧会ページに掲載されています。
小ぢんまりした特別展のようですが、城陽井手町エリアの興味深い仏像など展示がされているようです。


私が興味深く感じた展示は、次の3つあたりでしょうか。

(1) 城陽市の久世廃寺、平川廃寺からの出土塑像の断片が展示されています。
共に7〜8世紀の寺院址で、それぞれ法起寺式、法隆寺式の伽藍であったと推定されています。
注目は平川廃寺塑像片で、大量(150点余)に出土していますが、断片の調査などによると薬師寺金堂・薬師三尊の脇侍菩薩像とほぼ同じ大きさの菩薩像のものだと推定されるそうです。
平川廃寺には、像高3メートル以上の奈良時代の巨大塑像が安置されていたということになるのです。

(2) 井手町西福寺の聖観音象、不動明王像が出展されています。
聖観音像は、10世紀頃の一木彫、螺髻が印象的で、穏やかさの中にも古様を感じさせる魅力のある像のようです。
寺外初出展とのことです。
不動明王像は、11世紀ごろの一木彫、頭の髪型が、総髪の末端、襟足の処が巻髪となっている珍しいものです。
総髪、巻髪を組み合わせた髪型は、類例がみられないということです。

(3) 極楽寺の行快作・阿弥陀如来像(鎌倉・重文)の像内納入品が展示されています。
この納入品は平成11年(1999)の修理の時に発見されたもので、納入文書から本像が行快作であることと、快慶の没年の最下限が判明したのです。
快慶の生没年は不詳なのですが、納入文書中に、嘉禄3年(1227年)の年紀と「過去法眼快慶」との記述があり、この時には没していたことが明らかになったのでした。

   
極楽寺・行快作阿弥陀如来像(鎌倉・重文)と快慶の没年下限が判明した納入文書
右下に「過去法眼快慶」と記される


本展には阿弥陀如来像は出展されていませんが、極楽寺は歴史民俗資料館から南へ1キロほどのすぐ近くにあります。
事前にお寺に御連絡して拝観のお願いを差し上げれば、阿弥陀如来像を拝することが出来ると思います。


大きな展覧会ではありませんが、ご関心のある方には、ちょっと面白い企画展です。




●九州歴史資料館で「九州山岳霊場遺宝 〜海を望む北西部の山々から展」開催(10/9〜12/5) (2021年10月23日‎)


福岡県小郡市の九州歴史資料館で、特別展「九州山岳霊場遺宝 −海を望む北西部の山々から− 」が開催されています。

  

開催期間は、2021年10月9日(土)〜12月5日(日) です。
詳しくは、
九州歴史資料館HP並びに展覧会ページをご覧ください。

開催趣旨については、展覧会HPにこのように述べられています。

「山とそこに伝わる文化財は、歴史や文化を考える上できわめて重要な存在です。
そのような山について、九州歴史資料館では、九州を中心に調査研究を深めてまいりました。
当館に事務局を置いて活動を続けてきた、九州山岳霊場遺跡研究会による成果の蓄積も進んでいます。
本展は、そのような調査研究の成果に基づくもので、とくに九州ならではの特徴である大陸との交流の痕跡を色濃くのこす、筑前と肥前の山々に絞り、それらの霊山を象徴する御尊像を中心とする、ゆかりの文化財を一堂に会して御紹介するものです。」

仏像については、こうした山岳霊場に残された古仏、30件余が出展されています。
(〈出展目録〉が掲載されていますのでご参照ください。)

九州仏にご関心のある方にはご存じの、
佐谷区文化財保存会・十一面観音像2躯(県指定・11、12C)、若杉霊峰会・千手観音像(県指定・9C)、谷川寺・薬師如来像(県指定・9C)、浮嶽神社・地蔵菩薩像(重文・9C)
など、興味深い仏像が出展されています。

本展覧会、「九州山岳霊場遺宝」という題名が仏像展となじみが薄そうで、ご紹介しなかったのですが、展覧会図録だけでも取り寄せてみると、なかなか充実の仏像展でしたので、急ぎ紹介させていただきました。

また、展覧会図録の内容が、大変充実した素晴らしいものなので、ビックリしました。
目次をご覧いただくとお判りのように、興味深い「特論」が目白押しに収録されているほか、すべての展示仏像の掲載写真が、5方向から撮影したものが掲載され、丁寧な解説が附されています。

 


 

九州までこの展覧会のために出かけるのは難しいかもしれませんが、ご関心のある方は、是非、この図録を取り寄せてみられることをお薦めしまします。
190ページの立派な図録が、格安の1000円でした。





●下田市 上原美術館で「静岡の仏像+伊豆の仏像〜薬師如来と薬師堂のみほとけ展」開催(10/9〜1/10) (2021年10月23日‎)


静岡県下田市の上原美術館で、特別展「静岡の仏像+伊豆の仏像〜薬師如来と薬師堂のみほとけ」が開催されています。

  

開催期間は、2021年10月9日(土)〜2022年1月10日(月・祝) です。
詳しくは、
上原美術館HP並びに展覧会ページをご覧ください。

本展は、
「静岡市と伊豆を仏像から見ると、興味深い共通点があります。
いずれも古い薬師如来像が多く、薬師如来を中心とする群像があるのです。
本展では伊豆に伝わる薬師像と、静岡市に伝わる薬師如来を取り巻く群像の一部を厳選して展示。」
ということです。

展示仏像の作品リストが掲載されてから、ご紹介しようと思っていたのですが、現在(10/23)の処、掲載予定のままでまだ掲載されていません。
展示仏像については、よく判らないのですが、普段は拝しにくい静岡、伊豆の古仏がいくつも出展されているようです。
静岡の仏像で、松野阿弥陀堂と坂ノ上薬師堂の仏像は堂外初公開となるとのことです。

今後、出展作品リストと、展覧会紹介動画が、展覧会HPに掲載される予定になっていますので、そちらをご参照ください。





●和歌山県立博物館で「きのくにの名宝 〜和歌山県の国宝・重要文化財展」開催(10/16〜11/23) (2021年10月9日‎)


和歌山県立博物館で和歌山県立博物館創立50周年記念特別展「きのくにの名宝 ―和歌山県の国宝・重要文化財―」が開催されます。

  

開催期間は、2021年10月16日(土) 〜 11月23日(日・祝) です。
詳しくは、
和歌山県立博物館HP展覧会ページをご覧ください。

本展覧会は、和歌山県立博物館創立50周年を記念して、県内の名宝を一堂に会する特別展です。
「きのくにの仏像と神像」「きのくに荘園の世界」「国宝・熊野速玉大社の古神宝類」「紀州東照宮の名宝」「芦雪・応挙 紀南寺院の障壁画」という5つの視点のテーマが設定され、150件余の県内文化財が出展されます。
詳しい出展内容は、展示資料目録をご覧ください。

仏像・神像は、37件が出展されています。
目に付くところでは、熊野速玉神社の神像群(平安、国宝・重文)、那智山青岸渡寺の諸像(飛鳥〜平安、重文)が一括して展示されています。

私の、ちょっと注目は、有田川町・薬王寺の十一面観音像(平安・県指定)、阿弥陀如来像(平安・重文)の出展です。
十一面観音像は、10世紀頃の製作で、どっしりとした存在感を感じさせ、有田川流域屈指の十一面観音の古像と云われています。
たまに展覧会出展されますが、普段は、拝観がなかなか難しいのではないかと思います。
私の記憶では、1997年の「有田川下流域の仏像展」(和歌山県博)、2012年の「南都大安寺と観音さま展」(パラミタミュージアム)に出展されていました。

このほか、近年新発見の仏像・神像では、林ヶ峰観音寺の菩薩形坐像(平安9世紀・県指定)、大滝丹生神社の丹生明神・高野明神坐像(南北朝)ではないかと思います。
両像については、和歌山県博主任学芸員・大河内智之氏執筆の紹介記事が、リビング和歌山連載「文化財 仏像のよこがお」に、「集落が守り伝えた平安初期の密教仏」「新発見、高野山の歴史を語る神像」と題して掲載されています。

    
(左)薬王寺・十一面観音像(平安10C・県指定)、(右)林ヶ峰観音寺・菩薩形坐像(平安9世紀・県指定)




●東京国立博物館で「最澄と天台宗のすべて展」開催(10/12〜11/21) (2021年9月30日‎)
●九州展は、九州国立博物館で開催(2022.2/8〜3/21)  
●京都展は、京都国立博物館で開催(2022.4/12〜5/22) 


伝教大師1200年大遠忌記念 特別展「最澄と天台宗のすべて」が、東京、九州、京都の国立博物館3館で開催されます。

  

開催期間は、それぞれ、
東京国立博物館:2021年10月12日(火)〜11月21日(日)
九州国立博物館:2022年2月8日(火)〜3月21日(月・祝)
京都国立博物館:2022年4月12日(火)〜5月22日(日)
です。

詳しくは、
東京国立博物館HP展覧会ページならびに展覧会公式サイトをご覧ください。
(九州、京都展については、開催が近づくと、両博物館HPに詳細内容が掲載されると思います。)

本特別展は、2021年が伝教大師最澄の1200年の大遠忌にあたることから、開催されるものです。
開催趣旨には、
「本展では、延暦寺における日本天台宗の開宗から、東叡山寛永寺を創建して太平の世を支えた江戸時代に至るまでの天台宗の歴史をご紹介します。
日本各地で守り伝えられてきた貴重な宝物や、『法華経』の説く万民救済の精神をあらわす文化財を、地域的な特色を示しながらご覧いただきます。
秘仏をはじめ、天台の名宝が集う貴重な機会です。」
と、述べられています。

東京展では、天台の名宝、二百数十点が出展されます。(出展作品リストをご参照ください)
仏像は、約20点が出展されます。

この展覧会、仏像愛好者には、絶対に見逃すことが出来ない展覧会です。
普段は、拝することが出来ない秘仏が、一挙に出展されるのです。

私が出展作品リストを見て、「拝観不可の秘仏」となっていると思う仏像をピックアップしてみると、ご覧の通りです。

 

よくぞ、これほどの秘仏が出展できたものだと、ちょっと驚きです。
これだけの数の秘仏が、一堂に集まって観ることのできる機会は、もう二度とないかもしれません。

私事ですが、これまで随分多くの仏像を拝してきたつもりですが、能福寺・十一面観音像、深大寺・元三大師像、真正極楽寺・阿弥陀如来像は、未だに拝したことがないのです。
展覧会で初めてその姿を直に観ることが出来るのが、今から愉しみです。


出展される秘仏の中でも、よくぞ出展できたものだと、とりわけ注目、話題の仏像は、法界寺、願興寺、深大寺の三像でしょう。

日野法界寺の薬師如来像は、
日野資業が永承6年(1051年)に、伝教大師最澄自作の三寸の薬師像を納入して造立したと伝えられ、厳重な秘仏として守られている仏像です。
開帳の定めもなく、私の知る限りでは、1965年と2016年に京都非公開文化財特別公開で2度開帳公開されただけだと思います。
その時も、正面からではなく、厨子の横脇の扉が開かれ、側面から覗くように拝することが出来ただけでした。
温和な藤原風の像ですが、超絶技巧の繊細華麗な截金模様の見事さには眼を見張ります。
寺外初出展はもちろんのこと、正面からじっくりその姿を観ることが出来るのも、初めてのことだと思います。

岐阜県御嵩町・願興寺の薬師如来像は、
12年に一度子年限りの御開帳の厳重秘仏で、こちらも寺外初出展です。
所謂、藤末鎌初の穏やかながらどっしりキリッとした造形です。
近年では、2008年(子年)と2015年(お堂改修特別開帳)に、数日ずつ開帳されただけです。
(2020年の子年は、コロナ禍で開帳されませんでした。)

深大寺の元三大師・慈恵大師像は、
深大寺・元三大師堂の御本尊で、50年に一度の開扉の厳重秘仏です。
近年では、2009年に元三大師没後1025年を記念して中開帳が行われています。
平安時代天台座主となった慈恵大師良源ですが、深大寺の「厄除け元三大師」として知られています。
製作年代は明らかではありませんが、像容から鎌倉時代に遡ると見られているようです。
昨年特別開帳が予定されていましたが、コロナ禍で見合すこととなり、「東博への特別出陳出開帳」ということで、開帳することになったとのことです。
記録によると元三大師像の出開帳は、文化13年(1816)両国・回向院で行われて以来のことで、205年ぶりになるということです。

   
(左)日野法界寺・薬師如来像(平安後期・重文)〜細密截金文様が美しい〜、(右)願興寺・薬師如来像(平安〜鎌倉・重文)

九州展、京都展では、出展仏像の入れ替えなどがあるようですが、どのようになるのかは、今のところはよく判りません。

仏像愛好者にとっては、絶対必見、今年一番の超目玉の展覧会だと思います。
是非、お出かけになってください。





●大津市歴史博物館で「西教寺〜大津の天台真盛宗の至宝展」開催(10/9〜11/23) (2021年9月30日‎)


大津市歴史博物館で聖徳太子1400年御遠忌・伝教大師1200年御遠忌記念企画展「西教寺〜大津の天台真盛宗の至宝」が開催されます。

  

開催期間は、2021年10月9日(土)〜11月23日(火・祝)です。
詳しくは、
大津市歴史博物館HPならびに展覧会ページをご覧ください。

西教寺は、比叡山の東麓、大津市坂本にある天台真盛宗の総本山です。
天台宗総本山の延暦寺、天台寺門宗総本山の園城寺(三井寺)に比べると、知名度は高くないかもしれませんが、天台真盛宗の総本山として400か寺以上の末寺を有しています。
本展は、西教寺と大津市内の天台真盛宗寺院に伝わる文化財を一堂に集めて展示されるものです。
西教寺の寺宝が一堂に展示される特別展は、1994年に、同じ大津市歴史博物館で開催された「西教寺と天台真盛宗の秘宝展」以来の開催ではないかと思います。

展覧会には、重文17件、県指定4件、市指定2件など約160件、200点の文化財が出展されます。
詳細は、出品リストをご参照ください。

画幅の展示が主なようで、仏像の出展は十数件です。
重文指定の像は薬師如来坐像(鎌倉)、聖観音立像(平安中期)の2躯です。
薬師如来像は、年に一日、節分の日だけの御開帳の秘仏ですが、2018年開催の「神仏のかたち〜大津湖信会の仏像展」(大津市歴史博物館)に出展されていましたので、ご覧になった方もいらっしゃることと思います。

   
(左)西教寺・薬師如来坐像(鎌倉・重文)、(右)西教寺・聖観音立像(平安中期・重文)




●東京国立博物館で特集展示「浅草寺のみほとけ」開催(9/28〜12/19) (2021年9月28日‎)


東京国立博物館で特集展示「浅草寺のみほとけ」が開催されます。

 

展示期間は、2021年9月28日(火) 〜 12月19日(日) です。
詳しくは、
東京国立博物館HP特集展示ページをご覧ください。

浅草寺と云えば、絶対秘仏の観音本尊で知られていますが、そのほかにも多くの仏像が所蔵されています。

特集展示主旨には、
「本特集では、浅草寺からご寄託いただいた仏像13件17体を一堂に展示します。
・・・・・・
また、戦後に寄進されたなかにも注目すべき仏像が含まれることが、近年実施された寺内の総合的な文化財調査で明らかとなりました。
本特集は、これまで公開されることが少なかった浅草寺の仏像を広く紹介する機会となります。」
と、記されています。

実施された総合文化財調査による仏像の調査結果については、「浅草寺什宝目録・第一巻彫刻編 」浅草寺什宝研究会編が2018年に発刊されています。

展示作品リストをみると、鎌倉〜江戸時代の仏像が多く、私も観たことがある仏像はありません。

大注目とか必見というような仏像は見当たらないようですが、実見できる機会は少なそうなので、一度は見ておきたい特集展だと思います。





●上越市立歴史博物館で「上越のみほとけ〜「越後の都」の祈り展」開催(10/9〜11/21) (2021年9月28日‎)


新潟県上越市の上越市立歴史博物館で、特別展「上越のみほとけ〜「越後の都」の祈り」が開催されます。

  

開催期間は、2021年10月9日(土)から11月21日(日)です。
詳しくは、
上越市立歴史博物館HP並びに展覧会ページをご覧ください。

本展覧会は、市制施行50周年を記念して開催される特別展で、国指定重要文化財3体を含む、およそ30体の仏像と懸仏が一堂に会する展覧会です。

主な出展仏像は、博物館・展覧会ページに掲載されていますが、これらの仏像の多くは、2006年に新潟県立美術館で開催された「新潟の仏像展」にも出展されています。

注目仏像は、医王寺・金銅如来坐像(白鳳・重文)、個人蔵・十一面観音像(平安前中期・県指定)、普泉寺・大日如来像(平安後期・県指定)あたりかなという処です。
  
(左)医王寺・金銅如来坐像(白鳳・重文)、(中)個人蔵・十一面観音像(平安前中期・県指定)、(右)普泉寺・大日如来像(平安後期・県指定)

本展のためにわざわざ出かけるのはという感じかもしれませんが、小ぶりながら、興味深い仏像展です。





●奈良県立美術館で「生誕200周年記念 森川杜園展」開催(9/23〜11/14) (2021年9月12日‎)


奈良県立美術館で特別展「生誕200周年記念 森川杜園展」が開催されます。

 

開催期間は、2021年9月23日(木・祝)〜11月14日(日)です。
詳しくは、
奈良県立美術館HPならびに展覧会開催プレスリリースをご覧ください。

「森川杜園」という人をご存じでしょうか?
「幕末から明治へ―激動の奈良を生きた無二の異才、森川杜園。その妙技と芸術の全貌に迫る。」
というのが、展覧会のキャッチコピーです。

展覧会開催趣旨には、次のように記されています。

「森川杜園(もりかわとえん 1820-1894)は、幕末から明治にかけて、奈良人形(一刀彫)の制作を軸に活躍した奈良県出身の彫工です。
・・・・・
明治維新後は、政府による文化財保護活動や、奈良県の振興を目的とする奈良博覧会社の事業に携わり、正倉院宝物や県下の名宝の模写・模造の制作にも取り組みました。
杜園の妙技が発揮されたこれら後年の作品は、シカゴ万国博覧会をはじめとする国内外の博覧会に出品され、日本の彫刻史に確かな足跡を残すこととなりました。
杜園の生誕200周年を記念する本展では、軽妙洒脱な奈良人形や独自の境地を拓いた鹿彫、そして超絶技巧が発揮された名宝の模造作品など、杜園の代表作およそ200点の展示により、その歩みと芸術を振り返ります。」

仏像の展覧会でもないのに、ここでご紹介する訳は、森川杜園がいくつもの仏像模造を制作しているからです。
森川杜園が制作した仏像模造をピックアップすると、次の通りです。

 

仏像模造の制作は、奈良博覧会会社や文部省博物局からの依頼によるものも多かったようで、現在ではすべて東京国立博物館の所蔵となっています。

    
森川杜園作の仏像模造作品〜(左)法隆寺・九面観音像、(中)興福寺・天燈鬼像、(右)興福寺・金剛力士像

その中で、最も知られているのは、法隆寺の九面観音の模造ではないかと思います。
この九面観音像をみると、模造であるとは信じられない、精妙な出来に驚かされます。
杜園の仏像模造は、その造形精神まで移し取った「伝移模写」の彫刻で、まさに「真写し」と云われています。

「模写・摸造と日本美術展」図録(2005)の解説には、
「「伝移模写の彫刻で最高の名手は、森川杜園だろう。
それは九面観音の模造が物語っている。
・・・・・・
それを『模造専一』を掲げた森川杜園が、表現も技法もそのままに完璧な再現をして見せたのである。
これが杜園の言う『真写し』のワザなのだ。」(松浦正昭氏執筆)
と述べられています。

本展覧会では、森川杜園の仏像模造作品が全部出展されるのかどうかわかりませんが、代表作約200点出展ということなので、多くが出展されるのではないかと思います。

「森川杜園と仏像模造」については、本HP・埃まみれの書棚から「明治の仏像模造と修理 【模造編】」で、ご紹介したことがありますので、ご覧いただければと思います。

私にとっては、森川杜園の全貌を知ることが出来る、誠に興味津々の展覧会です。
杜園のこれだけの大規模展は、今後とも当分望めないことと思います。
コロナ禍中なのですが、出来得れば奈良まで出かけて観てみたいものと思っています。





●茨木市文化財資料館で「ほとけの心・木のちから〜蓮花寺と地域の美術展」開催(9/25〜11/29) (2021年9月12日‎)


大阪府茨木市の茨木市文化財資料館で「ほとけの心・木のちから〜蓮花寺と地域の美術展」が開催されます。

  

開催期間は、2021年9月25日(土)〜11月29日(月)です。
詳しくは、茨木市文化財資料館HP・
展覧会ページをご覧ください。

茨木市の蓮華寺をご存じでしょうか?
2017年に大阪市立美術館で開催された「木×仏像展」に、蓮華寺に祀られる地蔵菩薩像が出展されていました。
10世紀の古像で、風喰によって荒れた木目が際立つ姿が、一種近寄りがたいような霊威を感じる雰囲気を醸し出していたのを覚えていらっしゃる方がいるかもしれません。

  
蓮華寺・地蔵菩薩像(平安10C・府指定)

図録解説には、
「伝来不詳ながらも、十世紀に遡る北摂地域屈指の古像である。
本像は昭和34年(1959)、当時の大阪市立美術館長・望月信成を団長とする大阪古文化財調査団が見出し、同年秋に当館で開催された「大阪の新発見文化財展」にご出品いただいた浅からぬ因縁を持っている。」
と述べられています。

蓮華寺は、行基開基と伝える真言宗の寺院です。
本展は、
平成30年度から2年かけて行われた地蔵菩薩立像の修理の完成を記念し、蓮花寺の歴史を紐解きながら、周辺地域の歴史とそれに関わる文化財を紹介するもの
ということです。
仏像は、地蔵菩薩像(府指定・平安10C)、十一面観音像(府指定・平安〜鎌倉)、大日如来坐像(無指定・平安)等が出展されるようです。

小規模で地味な展覧会のようですが、ちょっと注目の企画展です。
藤岡穣氏による講演会「蓮花寺のみほとけ〜その魅力とひみつ」(10/31)も開催されます。(オンライン受講も可能〜抽選)

15年ほど前に、蓮華寺を訪ねたことが懐かしく思い出されます。





●東京藝術大学美術館で「みろく〜終わりの彼方 弥勒の世界展」開催(9/11〜10/10) (2021年9月12日‎)


東京藝術大学美術館「「みろく〜終わりの彼方 弥勒の世界 」展が開催されます。

  

開催期間は、2021年9月11日(土)〜2021年10月10日(日)です。
詳しくは、
東京藝術大学美術館HP及び展覧会公式サイトをご覧ください。

本展は、ガンダーラで誕生した弥勒仏が、仏教伝来の道シルクロードをたどって海を渡って遥か東方の日本に至る弥勒の道を、クローン文化財などによって辿るというものです。
ガンダーラとアフガニスタンの弥勒菩薩像のほか、スーパークローン文化財の技術をもって原寸大復元したバーミヤンE窟仏龕天井壁画の《青の弥勒》を中心に、スーパークローンの敦煌莫高窟275窟交脚弥勒菩薩像、バーミヤン東大仏天井壁画《天翔ける太陽神》、法隆寺金堂9号壁が展示されるようです。

弥勒仏の世界や、近年注目を浴びているクローン文化財にご関心のある方には、興味深い展覧会ではないかと思います。





●大阪市立美術館で「聖徳太子・日出づる処の天子展」開催(9/4〜10/24) (2021年9月4日‎)
●東京展はサントリー美術館で開催(11/17〜1/10)  

大阪市立美術館とサントリー美術館で「千四百年御聖忌記念特別展 聖徳太子〜日出づる処の天子」展が開催されます。

  

開催期間は、それぞれ、
大阪市立美術館:2021年9月4日(土)〜10月24日(日)
サントリー美術館:2021年11月17日(水)〜1月10日(月・祝)
です。

詳しくは、
大阪市立美術館HP展覧会ページならびに展覧会公式サイトをご覧ください。
東京展については、サントリー美術館HP展覧会ページならびに展覧会公式サイトをご覧ください。

本展開催趣旨について、大阪市立美術館HPには、
「令和4年(2022)、聖徳太子が没して1400年目を迎えます。
このような100年に一度の節目にあわせ、聖徳太子の生涯をたどり、没後の聖徳太子信仰の広がりをご紹介する展覧会を企画いたしました。
・・・・
太子生涯の事跡を描いた「太子絵伝」や成長する年齢ごとに表された「太子像」をはじめ、聖徳太子に関わる美術の全貌を、太子が推古天皇元年(593)に創建し常に聖徳太子信仰の中核を担ってきた大阪・四天王寺所蔵の作品を中心に、ご紹介いたします。」
と記されています。

展覧会の出展は、太子絵伝の絵画や、彫刻では鎌倉時代以降の太子像が中心のようです。 仏像は、ほとんど出展されていないようですが、京都三千院・救世観音半跏像(鎌倉時代1246年・重文)、宮城天王寺・如意輪観音半跏像(平安〜桃山時代・市指定)が出展されます。


私のちょっと注目は、宮城県大崎市の天王寺・如意輪観音像の出展です。
展覧会HPの展示紹介には「平安〜桃山時代:12〜17世紀」と書かれているのです。

 
宮城天王寺・如意輪観音半跏像(平安〜桃山時代・市指定)

本像の存在については全く知らなかったのですが、調べてみると1999年に東北歴史博物館で開催された「祈りのかたち〜東北地方の仏像展」に出展されていました。
その解説によると、天王寺には如意輪観音半跏像と四天王像がのこされていて、いわゆる大阪・四天王寺(当初像)模刻像の東北唯一の作例だということです。
制作時期は、「桃山時代」と解説されていました。(四天王像の内1躯は鎌倉後期、そのほかはすべて桃山時代との解説)

今回の展示紹介では「平安〜桃山時代」と、なんと制作年代に500年の幅が持たされています。
そのような見解とされる事由などが、どのように解説されているのかが興味深く、また本像を実見するのが愉しみです。





●奈良大学博物館で「東大寺龍松院 筒井家所蔵拓本展〜大和古寺の国宝重要文化財」開催(6/26〜8/31) (2021年6月28日‎)


奈良市山陵町の奈良大学博物館で「東大寺龍松院 筒井家所蔵拓本展〜大和古寺の国宝重要文化財」が開催されます。

 

開催期間は2021年6月26日(土) 〜 2021年8月31日(火) です。
詳しくは、
奈良大学博物館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、仏像など仏教美術品の実物ではなくて「拓本」の展覧会です。

HPの展覧会概要は、
「今回展観するのは、東大寺龍松院・筒井家が所蔵するコレクションで、今では採拓が不可能な国宝、重文クラスの文化財の拓本が多く含まれ、以前から美術や歴史関係者には貴重なコレクションとして知られていました。 今回は、それらの中から飛鳥時代から平安時代にいたる仏像、光背、装飾品など91点におよぶ作品を展示いたします。
仏像の光背裏面や頭頂の化仏など、ふだんは見ることの難しい部分の拓本も多く、拓本を通して貴重な文化財に接して頂く良い機会になると思います。」
とのことです。

今回展示される拓本は、東大寺龍松院長老・筒井寛昭師とその父・寛秀師、祖父・英俊師の三代にわたる採択蒐集された筒井家秘蔵の拓本コレクションです。
コレクションの中心は、英俊師と東大寺図書館司書であった和田房次郎氏の採拓による拓本です。
展覧会には、
橘夫人念持仏・蓮池模様台盤、薬師寺金堂・薬師如来台座、薬師寺東塔・水煙、石位寺・浮彫三尊石仏、東大寺大仏蓮弁、東大寺大仏殿八角燈籠・音声菩薩、法華堂・不空羂索観音宝冠化仏・光背、聖林寺・十一面観音光背残欠、興福寺・板彫十二神将
などなど、名立たる仏教美術品の拓本が出展されることと思います。

これまで、筒井家の拓本コレクションがまとめて出展されたのは、1999年に新潟市の会津八一記念館で開催された「会津八一の見た寧楽の仏たち 東大寺龍松院秘蔵拓本展」で、そのほかには2010年開催の「奈良の古寺と仏像〜会津八一のうたにのせて展」(奈良市ほか開催)で一部が展示されたぐらいではないかと思います。

今回の展覧会では、秘蔵拓本コレクションが一括して展示されるもので、めったにない機会ではないかと思います。

「仏教美術の拓本」というものに、皆さんどれほどご関心があるのかわかりませんが、実物とはまた違った、格別の味わい、雅趣のあるものです。
私は、結構こうした拓本好きですので、この展覧会、何とか出かけることが出来ればと思っています。
 
なお、雑誌・月刊大和路「ならら」の、直近2021年5月号、6月号には、「東大寺 筒井家所蔵 拓本の世界」(上・下)と題する特集が組まれています。
この拓本コレクションについての詳しい解説や、豊富な拓本の影像が掲載されています。
ご関心のある方には、必読かも知れません。

  
月刊大和路「ならら」5・6月号〜特集「東大寺 筒井家所蔵 拓本の世界」




●東京国立博物館で「国宝 聖林寺十一面観音〜三輪山信仰のみほとけ展」開催(6/22〜9/12) (2021年6月18日‎)


東京国立博物館で特別展「国宝 聖林寺十一面観音〜三輪山信仰のみほとけ」が開催されます。

 

開催期間は、2021年6月22日(火)〜9/12(日)です。
詳しくは、東京国立博物館HP・
展覧会ページおよび展覧会公式サイトをご覧ください。

なお、本展覧会は、来年、奈良国立博物館でも開催される予定です。 (開催期間:2022年2月5日〜3月27日)

ご存じの通り、聖林寺・十一面観音像は、幕末〜明治維新の神仏分離令に伴って、大神神社の神宮寺であった大御輪寺から聖林寺に移された仏像です。
本展覧会は、聖林寺十一面観音像をはじめとした大御輪寺に祀られていた仏像、三輪禁足地からの出土品などが出展されます。

大御輪寺から移坐されたことが判っている諸仏像は、次の通りです。



今回出展される仏像は、聖林寺・十一面観音像、法隆寺・地蔵菩薩像、正暦寺・菩薩像2躯となっています。

聖林寺・十一面観音像の出展は、公式サイトにあるように「東京・初公開」となるものです。
本像は、明治〜大正年間は奈良帝室博物館に出展展示されていましたが、大正末年頃に聖林寺に戻りました。
お寺を出て博物館展示されるのは、1998年、奈良国立博物館で開催された「天平展」に出展されて以来、23年ぶりの事ではないのだろうかと思います。
展覧会では、十一面観音像が360度ビューで観ることが出来るとのことです。
聖林寺の収蔵庫・観音堂では、正面とやや斜めからしか拝することが出来ません。
聖林寺・十一面観音像の新たな魅力を発見することが出来るかもしれません。

聖林寺では、現在観音堂の大改修を計画中で、所要資金の一部のクラウドファンディングも行われています。
観音堂改修完成は2022年4月の計画とのことですが、改修後観音堂では天井も高くなり360度ビューで拝することが出来るようになるとのことです。

また、今回出展の正暦寺の菩薩立像2躯も、注目の出展像です。
現在、正暦寺の本堂に、新造の薬師如来像の両脇侍として安置されていますが、普段は公開されていません。
あまり知られていない像ではないかと思いますが、奈良様を受け継いだ平安時代前中期ごろの制作の見事な像で、2013年に県指定文化財に指定されました。
これまた、必見の像だと思います。

      
(左)法隆寺・地蔵菩薩像(平安前期・国宝)    (右)正暦寺・菩薩像2躯(平安前中期・県指定)




●長浜市高月観音の里歴史民俗資料館で「安念寺・いも観音」全10躯が特別展示(5/12〜7/5) (2021年5月27日‎)


長浜市高月町の高月観音の里歴史民俗資料館で、特別陳列「子どもと川で遊んだホトケたち〜西黒田・安念寺のいも観音さん」が開催されています。

  

開催期間は2021年5月12日(水)〜7月5日(月)です。
詳しくは、
高月観音の里歴史民俗資料館HP特別陳列ページをご覧ください。

特別陳列では、安念寺の朽損仏全10躯が展示されます。
140p以上ある如来形像、菩薩形像をはじめとした朽損した木彫像ですが、平安時代10世紀ごろに遡る制作の古仏と見られています。
豊かなボリュームのある体躯のいかにも平安古仏という造形が伺われます。

長浜市木之本町黒田にある安念寺を訪ねられたことがあるでしょうか。
小さな観音堂に、破損仏が「いも観音さん」と呼ばれて、地元西黒田集落の方々に守られて祀られています。
これらの半分朽ちた仏様を拝していると、あたたかい親しみを感じると共に、よくぞ今日まで守られ伝えられたとの思いがしてきます。
東京藝術大学美術館で2004年と2006年に開催された「観音の里の祈りとくらし展〜びわ湖。長浜のホトケたち」T・Uに、朽ちて痛ましい姿の如来形像、菩薩形像が出展されていたのを覚えておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「いも観音さん」は、仏像の朽損した荒れが、疱瘡の所謂あばた「いも瘡(がさ)」を想起させることから皮膚病に効験のある「身代わり観音」として、「いも観音」と呼ばれるようになったと云われています。
安念寺には17躯の古仏が伝わっていましたが、近年、二度の盗難に遭い、現在は10躯のみ安置されています。

特別陳列ページ解説によると、
「寺伝によれば、信長による兵火の際、この寺も焼失しましたが、仏像は門前の田の中に埋めて隠して難を逃れたといい、その際に、像は大きく損傷したと伝えます。
昭和の初め頃までは、
「夏には子ども達が堂から朽損した像を運び出し、村を流れる余呉川に浮かべて水遊びをしていた」
「村の大人達が川で仏像を洗う風習が伝わっていた」
ともいいます。
また農繁期には田んぼの畦に運び、子どもの守(も)(遊び相手)をしてもらったそうです。」
ということです。

  
(左)いも観音が祀られる安念寺・観音堂、(右)高月観音の里歴史民俗資料館で展示中の「いも観音」

この安念寺観音堂といも観音は、たった10戸の村人によってお守りされてきたのですが、維持改修費用の負担もままならず、クラウドファンディングによってお堂の修復費用を募ることになりました。
昨年(2020年)8月から、目標額200万円でスタートしたところ、560万円余が集まり、このたび改修工事に着工することが出来たそうです。
クラウドファンディングの趣旨や経過については、HP「観音の里・長浜から挑戦! 観音堂を修復して「いも観音さん」を後世へ伝えたい!」に詳しく掲載されています。

今回の特別展示企画は、観音堂改修工事のタイミングで、「いも観音・全10躯」が展示紹介されるものです。
クラウドファンディングのあらましも併せて紹介されているとのことです。





●大磯町郷土資料館で「高来神社神像群・全11躯」が企画展示(4/17〜6/20) (2021年3月26日‎)


神奈川県中郡大磯町の大磯町郷土資料館で、高来神社神像群(鎌倉時代)11躯、すべてが企画展で展示されます。
開催されるのは「旧高麗寺ゆかりの神像・仏像修理」という春季企画展です。

  

開催期間は、2020年4月17日(土)〜6月20日(日) です。
詳しくは、
大磯町郷土資料館HP、および春季企画展ページをご覧ください。

この企画展は、昨年4月に開催される予定でしたが、新型コロナウィルス感染拡大により開催中止となり、一年遅れで開催されることとなったものです。

高来神社の神像群は、平成12年(2000)、建築調査の際、神社の御輿堂から偶然に発見されました。
一部の像に弘安5年(1282)の記銘があったことから、鎌倉時代に製作されたものであることが判明しました。
男神像は、像高1メートル余もある堂々たる木彫像です。
発見以来、20年をかけて保存修復処理が行われていましたが、その修復完了を機に、全11躯を一堂に展示するとともに、発見から保存修復処理経緯についても紹介するものです。

    
高来神社神像群(鎌倉時代・町指定文化財)、(左)男神像・(右)女神像

高来神社神像群は、2006年に神奈川県立歴史博物館で開催された「神々と出会う〜神奈川の神道美術」展に出展されたことがあります。
私は、この時、初めてこの神像群を観たのですが、その威力みなぎる迫力に圧倒された思い出があります。
文化財指定は、大磯町文化財に指定されているだけなのですが、大注目の神像群だと思います。

今回の企画展で、15年ぶりに高来神社の神像群に再会できることを、愉しみにしています。
関東在住の皆様は、是非、一見されることをお薦めします。
此処なら、コロナリスクも少ないのではないでしょうか。





●奈良博・東博で特別展「聖徳太子と法隆寺展」開催(奈良博:4/27〜6/20 東博:7/13〜9/5) (2021年3月26日‎)


奈良国立博物館と東京国立博物館で、聖徳太子1400年遠忌記念 特別展「聖徳太子と法隆寺」が開催されます。

 

開催期間は、それぞれ、
奈良国立博物館:2021年4月27日(火)〜6月20日(日)
東京国立博物館:2021年7月13日(火)〜9月5日(日)
です。
詳しくは、
奈良国立博物館HP展覧会ページ ならびに 展覧会公式サイトをご覧ください。

(なお、東京国立博物館の方は、現在の処(3/25)、特別展ページに、簡略な内容が掲載されているだけです。)

本展開催趣旨について奈良博HPには、
「令和3年(2021)は聖徳太子の1400年遠忌にあたり、これを記念して特別展「聖徳太子と法隆寺」を開催します。
本展覧会では法隆寺において護り伝えられてきた寺宝を中心に、太子の肖像や遺品と伝わる宝物、飛鳥時代以来の貴重な文化財を通じて太子その人と太子信仰の世界に迫ります。
さらに、明治11年(1878)に法隆寺から皇室へと献納された「法隆寺献納宝物」が、奈良へまとまって里帰りする貴重な機会ともなります。」
と記されています。

本展は、国宝、重文の目白押しで200点余の法隆寺関係の文化財が出展されるという、大変充実した展覧会のようです。
奈良博出展作品については、奈良博・展覧会ページ「出陳品一覧」をご覧ください。

 
「聖徳太子と法隆寺展」出陳品掲載チラシ

仏像、彫刻関係のめぼしい出展像(奈良博)をみても、
法隆寺献納諸仏像(重文・飛鳥)、金堂・四天王像〜広目・多聞天(国宝・飛鳥)、六観音像(重文・飛鳥)、夢違観音(国宝・白鳳)、夢殿・行信僧都像(国宝・奈良) 、五重塔・塔本塑像〜11躯(国宝・奈良) 、伝法堂・阿弥陀三尊(重文・奈良) 、夢殿・行信僧都像(国宝・奈良)、地蔵菩薩像(重文・平安前期)、 金堂・毘沙門天像(重文・鎌倉)、
などなどと、注目像の勢揃いです。

今回特別展の大目玉は、なんといっても、次の4作品が出展されることでしょう。

・御物 聖徳太子二王子像(唐本御影・法隆寺献納)〜奈良時代〜4/27〜5/23展示

・御物 法華義疏 巻第三(法隆寺献納)〜飛鳥時代〜5/25〜6/20展示

・国宝 法隆寺金堂・薬師如来像〜飛鳥・白鳳時代〜

・国宝 法隆寺聖霊院・聖徳太子および侍者像〜平安時代・保安2年(1121)

金堂・薬師如来像は、これまで(明治8年の奈良博覧会出陳を除いて)博物館などに出展されたことは無く、ついに「展覧会出展が実現」したのかと、感慨深いものがあります。
明るい照明下で、眼近に細かく観ることが出来るという、得難い機会だと思います。
薬師像出展にまつわる話は、観仏日々帖で、ご紹介しましたのでご覧ください。

聖霊院・聖徳太子および侍者像の展覧会への出展は、平成6年(1994)に開催された「法隆寺昭和資材帳調査完成記念 国宝法隆寺展」(奈良博・東博)に出展されて以来、27年ぶりの寺外公開となるものです。
本像は、毎年、3月22日のお会式の時に開扉されますが、その姿をはっきり拝することは難しいものです。
(法隆寺夏期大学に参加すると眼近に拝観可能ということです)
これまた見逃すことは出来ません。

    
展覧会チラシ (左)金堂・薬師如来像  (右)聖霊院・聖徳太子像

今年一番の注目、必見の展覧会と云っても良いのではないかと思います。


なお、本展出展仏像についての「X線 CT スキャン調査による新知見」が、2月25日にプレスリリースされています。
・法起寺・如来立像の制作年代が飛鳥時代に遡ることが科学的調査で確実となったこと。
・奈良・成福寺の聖徳太子孝養像(重文・鎌倉)の胎内に木造菩薩半跏像などが納入されていることが判明したこと。
が、新知見として発表されています。
詳しくは、奈良博・2021.2.25付け報道発表資料をご覧ください。

法起寺・如来立像の制作年代にまつわる話については、いずれ観仏日々帖でご紹介してみたいと思っています。





●京都国立博物館で「鑑真和上と戒律のあゆみ展」開催(3/27〜5/16) (2021年3月13日‎)


京都国立博物館で凝然国師没後700年 特別展「鑑真和上と戒律のあゆみ」が開催されます。

 

開催期間は、2021年3月27日(土)〜 5月16日(日)です。
詳しくは、
京都国立博物館HPならびに展覧会ページ展覧会公式サイトをご覧ください。

本展は、鎌倉時代後期の東大寺の学僧で、唐招提寺の長老をつとめた、凝然国師没後700年に、鑑真の遺徳を唐招提寺に伝えられた寺宝によって偲ぶとともに、戒律のおしえが日本でたどった歩みを、綺羅星のような名僧の活躍と関係諸寺院の名宝を綴ることで、紹介するものということです。

仏像・彫刻の出展はそう多くはないようで、
唐招提寺の鑑真和上像(国宝・奈良)、伝獅子吼菩薩像(国宝・奈良)、大悲菩薩覚盛像(重文・室町)、西大寺の興正菩薩叡尊像(国宝・鎌倉)、元興寺の弘法大師像(重文・鎌倉)
等となっています。

鑑真和上像の寺外公開は、12年ぶりになるということです。





●浜松市美術館で「みほとけのキセキ〜遠州・三河の寺宝展」開催(3/25〜4/25) (2021年3月7日‎)


浜松市美術館で「みほとけのキセキ〜遠州・三河の寺宝展」が開催されます。

 

開催期間は、2021年3月25日(木)〜4月25日(日)です。
詳しくは、
浜松市美術館HPならびに展覧会ページをご覧ください。

本展は、浜松市美術館開館50周年を記念して、愛知県と静岡県にまたがる遠州・三河地方の主だった仏像、30点ほどが出展される展覧会です。
出展仏像については、展覧会ページ・出陳品一覧をご覧ください。

主だった出展仏像としては、
浜松市・摩訶耶寺の千手観音像(平安中期、重要文化財)、不動明王像(平安後期、重要文化財)
豊橋市・普門寺の阿弥陀如来、釈迦如来像、四天王像(共に平安後期、重要文化財)
浜松市・方広寺の釈迦、文殊、普賢三尊像(院吉・院広・院遵作、南北朝、重要文化財)
といったところでしょうか。

比較的、小規模な仏像展ですが、私にとっては、摩訶耶寺、普門寺の諸仏など未見の仏像が多く出展されるということで、必見の展覧会だと思っています。

また、本展では、出展仏像の写真撮影がOKとなるということです。
展覧会HPには、書かれていないのですが、展覧会案内の新聞記事、ブログなどにそのように報じられています。
大変嬉しいことです。




●八王子市夢美術館で「土門拳×藤森武写真展〜みちのくの仏像」開催(2/11〜3/28) (2021年2月7日‎)


東京都・八王子市夢美術館で、東日本大震災から10年目となる本年「土門拳×藤森武写真展〜みちのくの仏像」開催されます。

 
「土門拳×藤森武写真展」リーフレット〜(左)岩手県天台寺・鉈彫り聖観音像(平安・重文)

開催期間は、2021年2月11日(木・祝)〜3月28日(日)です。
詳しくは、
八王子市夢美術館HPならびに展覧会ページをご覧ください。
本展は、東日本大震災発生から10年を過ぎ、未だ深い傷跡を残す被災地の復興を祈念し、藤森武氏が撮り続けた東北の仏像写真を中心に、師である土門拳のそれらとあわせ紹介するものです。

ご存じの通り、藤森武氏は、土門拳の直弟子として名著写真集『古寺巡礼』の撮影にも携わった写真家で、現在、土門拳記念館学芸担当理事も務める仁です。
藤森武氏は、鉈彫り像をはじめ全国各地の地方仏像の魅力あふれる写真を撮り続け、数多くの写真集も出版しています。
東北・みちのくの仏像写真については、2015年からまった巡回展「藤森武写真展 みちのくの仏像」が開催されたのを覚えておられることかと思います。

 
巡回展「藤森武写真展 みちのくの仏像」チラシ〜(右)山形県立石寺・薬師如来像(平安・重文)

今回の展覧会は、この展覧会の時の写真を中心に展示されているのではないかと思います。
土門拳は山形県酒田市の出身ですが、東北地方の仏像は中尊寺を除いては撮影していません。
今回の展覧会では、どのような土門拳の写真が展示されるのかはわかりませんが、興味深い仏像写真展です。





●京都市歴史資料館で「京都市指定の文化財展」開催(1/22〜3/7)
〜神光院・薬師像、嵯峨薬師寺・地蔵像が出展〜  (2021年1月12日‎)


京都市上京区の京都市歴史資料館で、令和2年度特別展 京都市文化財保護課発足50周年記念「京都市指定の文化財」が開催されます。

開催期間は、2021年1月22日(金)〜年3月7日(日)です。
詳しくは、京都市情報館HPの
歴史資料館の案内ページ、ならびに展覧会開催ページをご覧ください。

京都市歴史資料館では、折々、市指定文化財の展示が行われていますが、本展は、京都市文化財保護課発足50周年記念して、「京都市指定の美術工芸品の名品」が出展されます。

出展作品数は12点ということですが、仏像は次の2躯が出展されます。




2躯だけの出展なのですが、この2像、共に大変興味津々で注目の仏像です。

神光院・薬師如来像(9C・市指定)
神光院・薬師如来像は、2011年に皿井舞氏が「美術研究404号」に、平安前期の制作に遡る古像として紹介、新たに見出された9世紀前半像として大注目となった一木彫像です。
皿井氏は、上賀茂神社における神仏習合と分離の経緯などを詳細に考証して、

本薬師像は、平安前期草創の上賀茂神社佛教施設・岡本堂安置像で、上賀茂神社神宮寺を経て、明治期の神仏分離で神光院に移された可能性が高いとするとともに、
神護寺薬師像と同様、「仏力をもって神威を増す」という神仏習合思想を背景に造立されたものだったと考えられ、9世紀前半の神仏習合による造像の具体的なありようを示す遺品として、きわめて重要な意味を持つ像である。

とする見解を示しました。

私は、2012年にこの像を拝しに行きましたが、バリバリの平安前期一木彫像で、霊威感を発散する迫力を眼前にして、圧倒された思い出があります。
その時には「無指定像」でしたが、2015年に「市指定文化財」に指定されました。
以前に、観仏日々帖「京都・神光院 薬師如来立像」で、ご紹介したことがありますので、ご覧いただければと思います。

この薬師像は、普段公開されておらず、現在は、7月のキュウリ封じの行事の日にしか拝観できないようです。


嵯峨 薬師寺・地蔵菩薩像は、昭和37年(1962)に放火により焼失してしまった壬生寺本尊の地蔵菩薩像(平安末〜鎌倉・焼失当時重文)の形を範とした像と考えられます。
左手に宝珠、右手に錫杖をもつ踏下坐像という、所謂、壬生寺式地蔵像の一例として貴重なものとされています。
元は、嵯峨福生寺の本尊で、同寺の衰退後、薬師寺に移されました。
昭和61年の修理で、胎内から、建長8年(1256)の修理銘が発見され、それ以前の製作像であることが確認されています。

この地蔵像は、普段拝観は叶わず、年に一日、8月24日の地蔵盆の日だけ拝することができます。
私も、一度は拝したいと思いながらも、未見となっている仏像です。

    
(左)嵯峨 薬師寺・地蔵菩薩像(鎌倉・市指定)    (右)昭和37年に焼失した壬生寺本尊・地蔵菩薩像(平安末〜鎌倉)

今回の「京都市指定の文化財展」は、地味な小規模展ですが、普段拝することが難しく、また大変興味深い2躯の仏像が出展されるという、仏像愛好者には見逃せないものだと思います。

私も、このようなコロナ禍下でなければ、是非とも京都まで出かけたい処なのですが、自粛対応で見合わせざるを得ないようです。





●横浜市歴史博物館で「横浜の仏像〜しられざるみほとけたち展」開催(1/23〜3/21) (2021年1月7日‎)


横浜市都筑区の横浜市歴史博物館で特別展「横浜の仏像〜しられざるみほとけたち」が開催されます。

 
「横浜の仏像展」リーフレット〜(左)仏像写真は真福寺・清涼寺式釈迦如来像(鎌倉・重文)

開催期間は、2021年1月23日(土)〜3月21日(日)です。
詳しくは、
横浜市歴史博物館HPならびに展覧会特設サイトをご覧ください。

本展覧会は、横浜市に残る主要な仏像が一堂に集められた注目の展覧会です。

展覧会特設サイトの開催趣旨には、次のように記されています
この冬、横浜の仏像 ここに結集!
本展は横浜市域に伝わる仏像を総合的・体系的に紹介するはじめての展覧会です。
半世紀におよぶ文化財調査の成果にもとづき、平安・鎌倉時代の仏像を中心に、新発見・初公開の“しられざるみほとけたち”を紹介し、横浜の仏教文化の実像にせまろうとするものです。」

展覧会には、横浜市に伝わる古代〜中世の仏像41件が出展されます。
出展仏像については展覧会特設サイト・作品リストをご覧ください。

横浜市にある指定文化財となっている彫刻(仏像)は、全部で58件(重文9件、県指定15件、市指定34件)あるのですが、本展覧会にはそのうち27件(重文3件、県指定8件、市指定16件)が出展されます。
なんと、横浜市内の指定文化財仏像のうち約5割が出展されるという、大注目の仏像展です。
横浜市域の仏像が、これほどまで一堂に集まる仏像展は、今後もなかなか望み得ないのではないでしょうか。

横浜市の仏像と云われても、マイナーな感じでピンとこないという方もいらっしゃると思いますが、昨年秋、神奈川県立博物館で「相模川流域のみほとけ展」に続いて、ちょっと地味ながらも、仏像愛好者にとっては見逃すことのできない必見展覧会です。

出展像をみると、重文指定像3件は、鉈彫り像の傑作で知られる弘明寺・十一面観音像、定朝様の証菩提寺・阿弥陀如来像、清涼寺式の真福寺・釈迦如来像です。
ほかにも、松蔭寺・金銅如来坐像(7〜8世紀・市指定)、龍華寺・脱活乾漆菩薩坐像(8世紀・市指定)は、奈良時代以前の注目古像として、比較的知られている仏像ではないかと思います。

    
(左)松蔭寺・金銅如来坐像(7〜8C・市指定)    (右)龍華寺・脱活乾漆菩薩坐像(8C・市指定)

ただ、むしろ愉しみは、これらの像以外の出展像の方で、私も未見のものが多くこの機会にじっくり観てみたいと思っています。






【過去の展示会情報】

2000年上半期

2000年下半期

2001年上半期

2001年下半期

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

2018年

2019年

2020年

2021年

inserted by FC2 system