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展示会案内  2017年


全国の美術館、博物館の展示会情報については、下記リンク先を参照ください。

観 仏三昧 ─ 仏像と文化財の情報ページ─
〈展覧会情報、仏像の公開情報、講演会・シンポジウム情報などを詳細に紹介しているサイト。〉
インターネットミュージアム
〈全国の美術館、博物館の検索と展覧会情報を掲載〉
Museum Information Japan
〈全国の美術館案内〉
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●京都文化博物館で「至宝をうつす〜文化財写真とコロタイプ複製のあゆみ展」開催(12/16〜1/28) (2017年11月19日‎)


京都市中京区の京都文化博物館で、便利堂創業130周年記念展覧会「至宝をうつす〜文化財写真とコロタイプ複製のあゆみ」が開催されます。



展覧会ポスター〜背景写真は焼損前の法隆寺金堂壁画撮影風景(昭和10年・1935)



開催期間は、2017年12月16日(土)〜2018年1月28日(日)です。
詳しくは、
京都文化博物館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、近代文化財写真・仏像写真の歴史に興味関心がおありになる方には、大注目で見逃すことのできない展覧会だと思います。

便利堂と云えば、文化財写真、美術印刷の老舗として定評があり、学術図書の仏像写真や、美しいデザインの絵葉書などで、皆さんよくご存じのことと思います。

      
便利堂製の美麗なコロタイプ印刷絵葉書

本展覧会の開催趣旨については、展覧会HPにこのように記されています。

「(便利堂の手により)撮影された文化財の象徴的な存在に、法隆寺金堂壁画があります。
昭和24年(1949)の不慮の火災で壁画が焼損したことから、その14年前(昭和10年・1935)に便利堂によって撮影された焼損前の壁画のガラス乾板は、その価値が評価されて国の重要文化財に指定されています。

      
昭和10年便利堂により撮影された法隆寺金堂壁画(6号壁)と、撮影写真の印刷風景

明治以降に写真技術を応用して生み出された技術にコロタイプがあります。
コロタイプは撮影された写真を原版とする印刷技法で、自然な濃淡や階調の表現に優れており、国宝・重要文化財の絵画や書跡などの複製に利用され、文化財を後世に伝える役割を果たしています。

本展覧会では、明治20年(1887)に京都の地で創業し、今年で130周年を迎える便利堂が手掛けてきた文化財写真撮影と複製の歴史をたどります。
法隆寺金堂壁画や高松塚古墳の撮影の歴史を紹介し、また、便利堂が製作した文化財複製を展示します。」


国華創刊号掲載のコロタイプ写真
興福寺無着像(小川一眞撮影)

コロタイプという製版印刷技法は、大変自然な濃淡階調の美しい技法で、我が国を代表する美術誌「国華」には、創刊号(明治22年・1889)からコロタイプ印刷の写真が掲載されています。

現在では、効率の悪さから、世界でも、ほとんど消えた技術になっているものです。

日本では、便利堂と、巧芸版複製で知られる大塚巧芸社だけが現在もこの技術をこの技術を継承しています。
「コロタイプの技法」について解説した映像が、展覧会公式サイト の 「展覧会のみどころ」ページにアップされていますので、是非ご覧になってください。

今回の展覧会は、このコロタイプ複製の歴史と、便利堂の130年の歴史を重ね合わせて振り返るという、興味深い展覧会です。
撮影ガラス乾板が重要文化財になっている、焼損前の法隆寺金堂壁画写真・全12面が展示されるほか、高松塚古墳壁画写真やコロタイプ複製の美術作品が展示されます。

このような、文化財写真、複製といった視点からの展覧会は、めったに開催されないのではないでしょうか。
是非とも、出かけてみたいと思っています。





●島根・出雲歴博で「島根の仏像〜平安時代のほとけ・人・祈り展」開催(10/20〜12/4) (2017年10月7日‎)



島根県出雲市大社町の島根県立古代出雲歴史博物館で、特別展「「島根の仏像〜平安時代のほとけ・人・祈り〜」が開催されます。

開催期間は、2017年10月20日(金)〜12月4日(月)です。
詳しくは、
島根県立古代出雲歴史博物館HP展覧会ページをご覧ください。

本展覧会は、島根県に遺る「平安時代の仏像」にスポットを当てた特別展です。
島根県の平安時代の指定文化財の仏像のほとんどが集結するといってもよい、大注目の展覧会です。

島根県の平安古仏は、かつては「出雲様式」と云われる独自の造形形式がみられるなど、以前から注目をされ、その魅力が語られています。
その代表格といえば、大寺万福寺の四天王・薬師像、仏谷寺の薬師・四菩薩像、安来清水寺の十一面観音像、禅定寺の聖観音像あたりでしょう。
今回の「島根の仏像展」には、これらすべての像が出展されます。
それだけでも注目ですが、展覧会には全部で35件の島根の平安古仏が出展されます。

出展仏像は、展覧会HP・出陳目録をご覧ください。
出陳目録をみますと、まさに出雲の平安古仏の総出動で、出展されていない著名像は、巖倉寺の聖観音、帝釈天像と安来清水寺の阿弥陀三尊、阿弥陀像ぐらいではないかと思います。

島根の平安古仏だけを、これだけ一堂に集めた展覧会は、なかなか開催されることのないのではないかと思います。
島根の平安仏のすべてを一気に観ることが出来る、得難い機会なのではないでしょうか。

私も、島根の仏像観仏には2度ほど出かけたことがありますが、雲南市長安寺の諸仏、浜田市多陀寺の諸仏、出雲市高野寺の観音像などは、未見の興味深い像で、この展覧会に出かけて観ることが出来るのを、愉しみにしています。

       
左から    仏谷寺・薬師如来像    大寺万福寺・四天王像    安来清水寺・観音像    禅定寺・観音像  (共に平安時代・重要文化財)




●和歌山県博で「道成寺と日高川〜道成寺縁起と流域の宗教文化展」開催(10/14〜11/26) (2017年10月7日‎)



和歌山県立博物館で、特別展「道成寺と日高川〜道成寺縁起と流域の宗教文化〜」が開催されます。

開催期間は、2017年10月14日(土)〜11月26日(日)です。
詳しくは、
和歌山県立博物館HP展覧会ページをご覧ください。

本展は、道成寺縁起(室町時代・重要文化財)の修理完成を記念して、上下巻全巻を展示公開するとともに、道成寺の仏像をはじめ新発見資料、日高川流域の寺社の文化財を展示するものです。
展示される仏像等々については、展覧会・展示資料目録をご覧ください。

本展示会の、私の注目は、

・道成寺に遺されている3躯の本尊、千手観音像の内、「根本本尊・千手観音像」 (奈良時代〜乾漆造・木彫併用、重要文化財)が展示されることと、

・今回の展覧会の事前調査で、寺内から見つかった、根本本尊の合掌手などの旧部材13点が展示されること

です。

ご存じのとおり、「根本本尊・千手観音像」は、本堂背面に安置される「北向き本尊・千手観音像」(南北朝時代・重要文化財)の胎内から、昭和62年(1990)、バラバラの部材に損傷した形で発見されました。
根本本尊像は、奈良時代に制作された像で、平成6〜7年度(1994〜5)に、欠損部を大幅に補う復元制作が行われ、立派なお姿となっています。
復元像は、重要文化財に指定され、現在は本堂内陣正面に安置されています。

      
復元修復された根本本尊・千手観音像(奈良時代・重要文化財)と北向本尊体内から発見された根本本尊の破損部材


道成寺の3躯の本尊・千手観音と、現根本本尊の部材発見、復元制作の話については、【観仏日々帖・新刊旧刊案内〜「道成寺の仏たちと『縁起絵巻』」】に詳しく触れていますので、ご覧ください。

昭和62年に体内から発見された部材の他に、今般、新たに根本本尊の「本来の合掌手や足先部の部材」が見つかったということのようです。

根本本尊の復元修理にあたっては、その制作年代が8世紀前半であろうとの推定の下に、復元制作が行われ、現在の復元合掌手も、そのような姿に造られています。
新発見の合掌手と、復元制作合掌手を見較べてみると、どのような違いがあるのでしょうか?

      
今般、新たに見つかった根本本尊の合掌手

           
平成6〜7年度に復元修復された現在の根本本尊の合掌手


展覧会や図録の解説において、新発見の合掌手などの部材の造形表現などから、根本本尊の制作時期等について、どのような見解が述べられているのかどうか、興味津々です。





●京都国立博物館で開館120年記念「国宝展」開催(10/3〜11/26) (2017年9月29日‎)



京都国立博物館で開館120周年記念特別展覧会「国宝」が開催されます。

開催期間は、2017年10月3日(火)〜11月26日(日)です。
詳しくは、京都国立博物館HP・
展覧会ページ並びに展覧会公式サイトをご覧ください。

この「国宝展」、今更ご紹介するまでもなく、この秋一番の大特別展として、皆さん注目されていることと思います。
我が国を代表する綺羅星の如き珠玉の国宝、約200点が展示されます。
出展目録は、展覧会HP・出品一覧をご覧ください。

仏像の出展は、以下、ご覧のとおりとなっています。


  


出展仏像の中での最大の注目は、なんといっても 仁和寺・薬師如来坐像(円勢・長円作) の出展だろうと思います。
展示期間は10/31〜11/26となっています。

この薬師坐像は、霊明殿に祀られる秘仏で、ほとんど公開されることがないので、直にご覧になったことのある方は、多くはいらっしゃらないのかと思います。

      
仁和寺・薬師如来坐像(平安後期・国宝)                  薬師如来坐像が祀られる仁和寺・霊明殿

この像は、像高10.3pという極めて小さな白檀像ですが、極めて精巧な彫刻、超絶技巧といえる美しく微細な截金文様は、驚愕すべきものです。
短眼鏡などで拡大して観れば観るほど、目を瞠ります。

1103年に円勢・長円により造られ、仁和寺北院に祀られていましたが、北院が明治20年(1887)に焼失し、霊明殿に移されました。
長らく秘されていましたが、昭和61年(1986)の学術調査の時に、初めて公開、調査がされ、その全容が明らかになりました。
平成元年(1989)に重要文化財に、翌平成2年に「国宝」に指定されました。

一般の人が、この檀像薬師如来像を目にすることが出来たのは、これまで、次の2回の展覧会に出展された時だけだと思います。

宇多天皇開創1200年記念「仁和寺の名宝」展  (京博:1988年5月〜6月、東博:1989年1月〜3月)
「金と銀ーかがやきの日本美術」展  (東博:1999年10〜11月)

以来、18年ぶりに公開されることとなった訳で、このチャンスを見逃すわけにはいきません。


ただし、
この仁和寺薬師像、来年2018年1〜3月に、東京国立博物館で開催される、 「仁和寺と御室派のみほとけ〜天平と真言密教の名宝」展 にも出展される予定ですので、そちらで観ることも可能です。





●小浜市若狭歴史博物館で「知られざるみほとけ〜中世若狭の仏像〜展」開催(9/30〜10/29) (2017年9月23日‎)



福井県小浜市遠敷の福井県立若狭歴史博物館で、リニューアル3周年記念特別展「知られざるみほとけ 〜中世若狭の仏像〜」が開催されます。

開催期間は、2017年9月30日(土) 〜 2017年10月29日(日) です。
詳しくは、
若狭歴史博物館HP展覧会ページをご覧ください。

展覧会では、普段、若狭小浜地域では、注目されることが少ない「中世の仏像」にスポットライトを当てた展覧会のようです。

開催趣旨には、次のように記されています。
「若狭の仏像は、穏やかな雰囲気の平安時代の作例が多いことで知られていますが、この特別展では、生き生きとして力強い表現が見所の、中世若狭の仏像の知られざる魅力をご紹介いたします。

見所の一つが、初めて寺外でそろって公開される明通寺十二神将立像で、十二体の仏像が立ち並ぶ様は圧巻です。福井県内では唯一鎌倉時代の十二体がそろう貴重な十二神将像を、この特別展では一体ずつ間近でご覧いただけます。

寺外初公開の仏像や重要文化財、通常非公開の仏像など28体の仏像が、1ヶ月間の期間限定で当館に集結します。」


  


なお、この展覧会期間は、毎年恒例の「みほとけの里 若狭の秘仏 特別公開」の期間となっています。
「平成29年度の若狭の秘仏 特別公開」の開催期間は、9月16日(土)〜11月26日(日)です。
詳しくは、福井県HP・若狭の秘仏特別公開ページ並びに、特別公開パンフレットをご覧ください。


    
.                            明通寺・十二神将像                                      大智寺・十一面観音像




●鹿児島黎明館で「かごしまの仏たち〜守り伝える祈りの造形〜展」開催(9/28〜11/5) (2017年9月23日‎)



鹿児島市城山町の鹿児島県歴史資料センター「黎明館」で、企画特別展「かごしまの仏(ほとけ)たち〜守り伝える祈りの造形(かたち)〜」が開催されます。
詳しくは、鹿児島県HP・
黎明館企画展ページ鹿児島県歴史資料センター黎明館ページをご覧ください。

「鹿児島で仏像の展覧会!」と知って、ちょっとビックリしました。
鹿児島県、当時の薩摩は、明治の廃仏毀釈による仏像破壊が徹底的に行われ、古い仏像がほとんど残されていない地域だからです。

鹿児島県の仏像では、重要文化財はゼロで、県指定文化財となっているものも、全部で11件しかありません。
全国地方仏の集大成書として知られる「仏像集成」にも、鹿児島県の仏像は、石仏を含めて7件が掲載されているだけです。
重要文化財の仏像が一つもない都道府県は、鹿児島県と沖縄県だけだと思います。

その鹿児島地域の「仏像展」開催というのは、大変興味深いものがあります。

展覧会開催趣旨には、次のように述べられています。

「鹿児島では,明治期の廃仏毀釈などによって,仏像は全て失われたかのように考えられ,遠い存在と思われてきました。
今回,鹿児島県内の多くの市町教育委員会や博物館・美術館などの協力を得て,仏像調査を行ったところ,それぞれの地域で守り続けられている仏像が,予想以上に多く残っていることが分かり,鹿児島の仏像を集めた本格的な展覧会を初めて開催できることになりました。」

これまで知られていなかった、新出の仏像が、沢山展示されるのではないかと思います。
調査研究成果を盛り込んだ、立派な展覧会図録も発刊される予定とのことです。

鹿児島まで出かけるのは、ちょっと無理かと思うのですが、展覧会図録は、是非とも入手の値打ちがありそうです。





●東京国立博物館で「運慶展」開催(9/26〜11/26) (2017年9月12日‎)


東京国立博物館で、興福寺中金堂再建記念特別展「運慶」が開催されます。
開催期間は、2017年9月26日(火)〜2017年11月26日(日)です。

詳しくは、東京国立博物館HP・
展覧会ページ並びに運慶展特設サイトをご覧ください。






この「運慶展」は、春の奈良博の「快慶展」と並んで、今年の仏像展覧会の超大目玉という展覧会です。
皆さん先刻ご承知で楽しみにしておられることでしょうし、わざわざご紹介する必要もないのかと思います。

展覧会には、康慶、運慶父子の作品他、関連仏像が全部で74体出展されるようです。
展示作品リストは、東博展覧会HP・展示作品リストページをご覧ください。

「運慶展」の広報では、展覧会公式サイトや新聞等で、

「全国に 31体ある  とされる運慶作品のうち、22体が 出揃う」

と、大きく報道されています。

「〈31体のうち22体〉 というのは、どの像を指すのかな?」      とチェックしてみました。

展覧会主催者が、「運慶作品と判断している 31体」を、リストにしてみると、以下のとおりです。


       .  


東博HPの「展示作品リスト」に、「運慶作」と明記されているのは19体です。
「出そろう22体」には、3体足りません。

その3体の運慶作品というのは、東大寺・重源像、光得寺・大日像、真如苑・大日像です。

展示リストに「〈運慶作〉とは明記しないが、運慶作品」と判断している作品ということであろうと思われます。
展示リストに「運慶作と明記」するかしないかの基準についてみると、六波羅蜜寺・地蔵像が、展示リストに「運慶作」と明記され、前記の3体が外されているのは、興味深い処です。
金剛峯寺・八大童子像、滝山寺・聖観音、梵釈像も含めて、
「(後世のものでも)運慶作伝承史料が、存在するか否かによる差」
なのでしょうか?

また、近年の研究進展で、原所在が興福寺北円堂で運慶作とみられるようになってきた「興福寺南円堂・四天王像」が、「全国で31体あるとされる運慶作品」から除外されているのも、またまた興味深い処です。

展覧会でのキャプション、図録の解説などで、このあたりの考え方などが、どのような見方で説明されているのでしょうか?
これまた、愉しみな処です。



なお、運慶展の期間に合わせて、東京国立博物館・本館で、

企画展「運慶の後継者たち―康円と善派を中心に」

が開催されています。

開催期間は、2017年8月29日(火)〜2017年12月3日(日)です。
詳しくは、東京国立博物館HP・企画展ページ並びに展示作品リストをご覧ください。

この企画展は、運慶の次々世代にあたる康円および、奈良を拠点に独自の展開を遂げた善円(善慶)を代表する善派仏師の作品を中心に、運慶以後の鎌倉彫刻の展開について紹介するものです。
東博所蔵作品を中心に14躯が出展され、これまたなかなか興味深い企画展です。

       
.        文殊菩薩坐像(康円作 興福寺伝来)            菩薩立像             文殊菩薩立像〜〜3躯共に東博蔵



●東京藝大美術館で「素心伝心〜クローン文化財 失われた刻の再生展」開催(9/23〜10/26)(2017年9月9日‎)



東京藝術大学美術館で、シルクロード特別企画展「素心伝心〜クローン文化財 失われた刻の再生」が開催されます。
開催期間は2017年9月23日(土)〜10月26日(木)です。
詳しくは、東京藝術大学美術館HP・
展覧会ページ並びに、展覧会公式サイトをご覧ください。

本展覧会は、東京藝術大学130周年記念事業のスペシャルプログラムとして開催されるもので、「クローン文化財」の展示のみで構成されるユニークなものです。
「クローン文化財」とは、東京芸術大学が取り組んでる文化財の超精密複製です。

「単なるコピーなどとは一線を画すもので、文化財の素材や形状・技法の研究・科学分析から入り、3Dプリンターなどで再現できることは再現し、細かい部分は美術生が色や質感まで完全に再現する」

というものです。

展覧会の開催趣旨については、HPでこのように述べられています。

「文化財は唯一無二の存在であり、その真正性は本来、複製が不可能です。その一方で、文化財の複製の歴史は古く、文化財の記憶をより広く長く継承したいという思いは、普遍的・根源的なものであるといえます。
東京藝術大学は、劣化が進行しつつある或いは永遠に失われてしまった文化財の本来の姿を現代に甦らせ、未来に継承していくための試みとして、文化財をクローンとして復元する特許技術を開発しました。本展では古代シルクロードの各地で花開いた文化を代表する遺産がクローン文化財として甦ります。」

展覧会では、

法隆寺釈迦三尊像、焼損した法隆寺金堂壁画12面、高句麗古墳群江西大墓四神図をはじめ、敦煌莫高窟第57窟、新疆ウイグル自治区キジル石窟第212窟等々シルクロードに遺された諸壁画など

の復元、再現されたものが展示されます。

「文化財の保存と公開」という難しい課題を考えるうえでも、大変興味深い展覧会です。

   
展示されるクローン文化財〜法隆寺釈迦三尊像、  焼損した法隆寺金堂壁画、  高句麗古墳群江西大墓四神図



●奈良博「源信展」に葛城・高雄寺の観音像が出展(7/15〜9/13)(2017年7月16日‎)



奈良国立博物館で開催される特別展「源信〜地獄・極楽への扉」において、奈良県葛城市の高雄寺・観音菩薩立像が出展されます。

高雄寺は、当麻寺の近くにあるのですが、そこに祀られる観音菩薩立像は、平安中期、10世紀末頃の制作とみられる一木彫像です。
像考101.3p、クスノキの一木彫で内刳りはなく、短躯で平安前期の雰囲気を残す像で、重要文化財に指定されています。

この仏像の安置される高雄寺は、近隣のお寺さんが管理されており、昔はお願いすれば拝観可能であったようなのですが、近年は、管理の都合もあり拝観は謝絶されているようです。
私も、拝観のお願いをしたことがありましたが、叶いませんでした。

その高雄寺・観音菩薩像が「源信展」に出展されるということで、これは必見ではないかと思います。
「源信の母が、高雄寺の観音に祈願したところ、その霊験によって源信を授かった。」
という伝えがあることから、今回出展の運びとなったようです。

「源信展」では、仏像の出展はほとんどありませんが、この高雄寺像は、このチャンスに是非とも観ておきたいものです。

開催期間は、2017年7月15日〜9月3日(日)です。
詳しくは、奈良博HP・
展覧会ページをご覧ください。

        
高雄寺・観音菩薩立像(平安時代・重要文化財)




●東博で「タイ〜仏の国の輝き〜展」開催(7/4〜8/27)(2017年6月18日‎)


東京国立博物館で、日タイ修好130周年記念特別展「タイ〜仏の国の輝き〜展」が開催されます。
開催期間は、2017年7月4日(火) 〜 2017年8月27日(日)です。
詳しくは、東博・
展覧会ページ、ならびに日経・展覧会情報サイトをご覧ください。

本展覧会は、日タイ修好130周年にあたり、修好記念事業として開催されるものです。
この展覧会は、本年4月から6月まで、九州国立博物館で開催されていました、7月から東博での開催となるものです。

東博HPの開催概要によると、

「タイでは、仏教は人々の暮らしに寄り添う大きな存在であり、長い歴史のなかで多様な仏教文化が花開きました。
本展では仏教国タイについて、タイ族前史の古代国家、タイ黎明期のスコータイ朝、国際交易国家アユタヤー朝、現王朝のラタナコーシン朝における仏教美術の名品を通じて、同国の歴史と文化をご覧いただきます。
また、日本とタイの交流史についても合わせて紹介します。」

とのことです。

タイの仏像については、あまり馴染がありませんが、一見はしてみたいと思っています。

        





●東博で「平成29年 新指定 国宝・重要文化財展」開催(4/18〜5/7)(2017年4月14日‎)


東京国立博物館で、「平成29年 新指定 国宝・重要文化財展」が開催されます。

開催期間は、2017年4月18日(火) 〜 2017年5月7日(日)です。
詳しくは、東京国立博物館HP・
展覧会ページをご覧ください。

毎年恒例で、ゴールデンウィーク周辺で開催される、平成29年度に新指定になった、国宝、重要文化財を一堂に集めた展示会です。
今回展示される、彫刻作品・仏像は、ご覧のとおりです。


  


今回の国宝・重要文化財になった仏像については、先に、当HP特選情報・平成29年の新指定・国宝重要文化財が発表〜彫刻は7件(3/10)で、ご紹介していますので、そちらをご覧ください。
出展仏像の詳しい解説は、文化庁HP・文化審議会答申〜国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定について〜解説ページをご覧ください。

毎年恒例ですが、見逃せない展示会です。
法華寺・維摩居士像は、法華寺では、本堂入り口の傍の格子戸のなかに目立たず祀られており、今回の展示で、眼近に観ることが出来るのではないかと期待していたのですが、パネル展示となり、残念です。





●兵庫県立博物館で「ひょうごの美みほとけ〜五国を照らす仏像展」開催(4/22〜6/4)(2017年4月1日‎)



姫路市の兵庫県立博物館で「ひょうごの美みほとけ〜五国を照らす仏像展」が開催されます。

開催期間は、2017年4月22日(土)〜6月4日(日)です。
詳しくは、
兵庫県立博物館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、この四半世紀に兵庫県内各地の文化財調査や市町史関係の調査で確認された、注目すべき仏像など、、いままであまり公開される機会のなかった仏像等を一堂に会して「ひょうごの仏像」を新たな視点から紹介するものということです。

約50点の仏像、関連資料が展示されるそうですが、主な展示仏像は次のとおりです。


  


ご覧の通り、あまり知られていない兵庫の仏像が、出展されるようです。

多可町・金蔵寺の阿弥陀如来像は、頭部だけが奈良時代の脱活乾漆造りの仏像ですが、近年、発見された横浜市・龍華寺の菩薩踏下像と一具であった像であろうとみられている注目の像です。
ご存じのとおり、龍華寺の菩薩踏下像は、1998年にお寺の土蔵から発見された、奈良時代の脱活乾漆像です。
大きく破損していましたが、当初の美しい天平仏の姿に修復復元され、注目を浴びました。
両像は、伝来等からは一具であった記録は全く残されていないのですが、顔貌の造形が極めて近似することなどから、当初は一具の像であったとみられています。

       
多可町・金蔵寺・阿弥陀如来像                                    横浜市・龍華寺・菩薩踏下像


ちょっと地味な感じがする仏像展示会のように一見しますが、愛好者には出かけてみる値打ちのある興味深い展覧会のように思います。




●三井記念美術館で「奈良西大寺展」開催(4/15〜6/11)(2017年3月25日‎)



東京都中央区日本橋の三井記念美術館で「奈良西大寺展〜叡尊と一門の名宝」が開催されます。

開催期間は2017年4月15日(土)〜6月11日(日)です。
詳しくは、
三井記念美術館HP展覧会ページをご覧ください。

なお、この展覧会は、大阪・あべのハルカス美術館(7/29〜9/24)、山口市・山口美術館(10/20〜12/10)にも巡回して開催されます。

本展覧会は、西大寺創建1250年を記念して開催されるもので、西大寺に伝わる文化財とともに、元興寺、浄瑠璃寺、白毫寺など真言律宗一門の珠玉の美術作品を一堂に展示する展覧会ということです。

出展目録は、HP上に掲載されていないのですが、展覧会ページに紹介されている主要な仏像をピックアップすると次のようなものとなっています。

  


西大寺の著名仏像の他に、浄瑠璃寺でも限られた日しか開扉されない吉祥天像が6/6〜6/11の5日間だけですが、出展されるのは注目です。
常時公開されていない、不空院の不空羂索観音像が、お寺を出て展覧会出展されるのも、私の記憶にはありません。
眼近に拝することが出来るのも、愉しみです。


         
浄瑠璃寺・吉祥天像                         不空院・不空羂索観音像         .




●興福寺仮講堂で、特別公開「天平乾漆群像展」を開催(3/15〜6/18)(2017年3月18日‎)


興福寺仮講堂(仮金堂)で、「天平乾漆群像展」が開催され、非公開であった仮金堂安置の仏像も併せて特別公開されます。

開催期間は、2017年3月15日(水)〜6月18日(日)です。
秋期の9月15日(金)〜11月19日(日)にも開催される予定となっています。
詳しくは、なら旅ネットHP・
興福寺国宝特別公開2017 阿修羅 〜天平乾漆群像展ページをご覧ください。
興福寺公式HPには、詳細決定次第掲載となっており、まだ詳しい内容の掲載がありません。(3/17現在)

ご存じのとおり、興福寺は、2018年の竣工を目指して、中金堂の再建事業を推進中です。
併せて、国宝館が耐震改修工事で年内休館することに伴い、従来仮金堂と呼んでいた現仮講堂で、特別公開「天平乾漆群像展」が開催されることとなりました。
この特別公開では、江戸時代に焼失した興福寺・西金堂に祀られていた諸仏像を仮講堂の一堂に集めて、焼失前の安置を再現する形にして展示するというものです。

  
仮講堂での西金堂内陣の姿を再現する安置展示の様子

西金堂は、天平6年(734年)、光明皇后が、生母橘三千代の菩提のために建立したものとされ、堂内には釈迦集会像が安置されました。
建立当初の天平仏像は、阿修羅像をはじめとする八部衆像、十大弟子像が現在残されているだけですが、今回は、西金堂鎌倉再興期以降造立の仏像も含めて、西金堂内陣の姿のイメージを再現する形に安置して、特別公開されるものです。

仏像など26体が展示されるとのことです。
特別公開で展示される諸像は、以下のとおりです。

  


今回の注目は、普段は非公開で、拝することのできなかった旧仮金堂安の四天王像の拝観が叶うことです。

四天王像は、近年、鎌倉復興期南円堂の四天王像として康慶が制作した像が、後世入れ替わって、仮(中)金堂に安置されていることが明らかになり、俄然、注目を浴びた像です。
普段拝することが出来ず、残念に思っておられた方も多いのではないでしょうか。
愛好者にとっては必見ではないかと思います。

 


       
興福寺旧仮金堂安置の四天王像〜当初は南円堂安置の康慶作像と考えられる


今回展示の安置状況の写真を見ると、本来、西金堂の向かって一番左奥に安置されていた筈の阿修羅像が、一番前方の真ん中あたりの場所になっているようなところもありますが、このような釈迦集会像として祀られる有様も、是非一度は拝しておきたいものです。



●大阪市立美術館で「木×仏像〜飛鳥仏から円空へ日本の木彫仏1000年展」開催(4/8〜6/4)(2017年3月11日‎)


大阪市立美術館で、特別展「木×仏像(きとぶつぞう)〜飛鳥仏から円空へ 日本の木彫仏1000年」が開催されます。

  


開催期間は、2017年4月8日(土)〜6月4日(日)です。
詳しくは、
大阪市立美術館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、私の大変注目している展覧会です。
仏像の素材のなかの「木」に注目し、木彫像の樹種や、木材の用いられ方などをテーマに、樹木と仏像との関わり、霊験性などについて考え、深い理解を目指すという展覧会なのです。

本展覧会の開催趣旨をみると、次のように述べられています。

「本展覧会は日本の木彫仏の魅力を再発見することを目的とし、素材である「木」に注目しながら鑑賞していただく企画展です。
一本の樹木にこだわり、由緒ある古材にこだわって造られた仏像。
その造形に親しみ、楽しむ空間を提供いたします。
・・・・・・
本展覧会では仏像の素材となった木の種類、あるいは木材の用いられ方など素材に注目することによって、仏像に込められた深い意味を理解する手掛かりとし、その魅力を再発見します。」

「今回展示する仏像には、木と仏像のかかわりについて深く考えさせられる作例を含みます。 用材に特定の樹種の木材を意図的に選択したと考えられる例や、寺社の建築部材等を転用することで古材の持つ霊験性を仏像に転嫁させようとしたことがうかがえる作例、あるいは木材から仏像を造り始める儀式「御衣木加持」の痕跡と思われる木札を像内に納入する例などです。
さらに、仏像の修理時に得られた知見や樹種同定調査、年輪年代測定など最新の調査成果を踏まえた展示で、木と仏像についてより深い理解を目指します。」

「仏像の用材、樹種の変遷と、それらが用いられるようになった背景、事由」というのは、私には、大変強い興味関心があるテーマです。
珍しい切り口での展覧会、どのようなものになるのか、大きな期待感で愉しみしています。

ご覧のような仏像をはじめ、約60点の木彫像が出展される予定とのことです。

  


また、次のような講演会が開催されます。

  





●奈良博で「快慶〜日本人を魅了した仏のかたち展」開催(4/8〜6/8)(2017年3月11日‎)


奈良国立博物館で、特別展「快慶〜日本人を魅了した仏のかたち」が開催されます。

開催期間は、2017年4月8日(土)〜6月4日(日)です。
詳しくは、
奈良国立博物館HP展覧会ページ展覧会公式サイト(読売新聞社)をご覧ください。

この展覧会については、当HPでわざわざご紹介するまでもなく、仏像愛好の方は、大注目で期待されている展覧会かと思います。
国立博物館で「快慶」という仏師だけ、単独の特別展が開催されるのは、初めてのことです。

        
快慶展のポスター3種(写真は左から、京都遣迎院・阿弥陀如来像、キンベル美術館・釈迦如来像、和歌山金剛峯寺・広目天像〜いずれも快慶作)

名だたる著名な快慶作品、推定作品が、約50点出展されます。
詳しい出展仏像については、奈良博快慶展・出陳品目録をご覧ください。

これだけの快慶作品が一堂に会する展覧会は、もう当分の間は開催されることがないのだと思います。
今年一番の、仏像愛好者必見の仏像展覧会です。

「快慶展」に伴い、開催される講演会は以下のとおりです。

  


詳しくは、特別展・講演会ページをご覧ください。

展覧会公式サイト(読売新聞社)に、面白いコーナーが設けられています。

「快慶仏講座」と題する動画で、奈良博の岩田茂樹氏、山口隆介氏の解説が、全部で11テーマ設定され、今後逐次掲載されるようです。
1回、10分程度の長さで、「耳について」「三尺阿弥陀像の比較」「衣紋の変化」「姿勢の変化」「安阿弥様」などのテーマとなっており、大変興味深い内容のようです。
是非、ご覧になってください。

これまたみなさんご存知のことでしょうが、秋には東京国立博物館で「運慶展」が開催される予定となっています。
開催期間は、2017年9月26日(火)〜11月26日(日)です。

  


春は奈良博で「快慶展」、秋は東博で「運慶展」、いずれも見逃すことは出来ません。




●安土城考古博物館で「大湖南展〜栗太・野洲郡の風土と遺宝展」開催(2/25〜4/9)(2017年2月4日‎)



滋賀県近江八幡市安土町の滋賀県立安土城考古博物館で「大湖南展〜栗太・野洲郡の風土と遺宝展」が開催されます。

開催期間は、2017年2月25日(土)〜4月9日(日)です。
詳しくは、
安土城考古博物館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、これまで同館で開催されている<風土と遺宝>シリーズとして開催されるものです。
今回は、旧栗太・野洲郡域を取り上げ、彫刻を中心とする優秀な作品が濃密に分布するにもかかわらず、意外と知られていない湖南地域の文化遺産の文化的水準の高さとその特質を紹介する企画展ということです。


出展仏像を調べて見ましたら、以下のような神像、仏像が出展されるようです。
あまり知られていない神像、仏像ばかりのようですが、その分一見の価値があるように思えます。

  


また、この展覧会の関連講座として、次のとおりの連続講座が開催されます。
これまた、興味深いテーマの講座になっているようです。

  





●豊橋市美術博物館で「普門寺と国境のほとけ展」開催(1/21〜2/26)(2017年2月4日‎)



愛知県豊橋市の豊橋市美術博物館で「普門寺と国境のほとけ展」か開催されています。

開催期間は、2017年1月21日(土)〜2月26日(日)です。

詳しくは、
豊橋市美術博物館HPをご覧ください。


普門寺は奈良時代の創建を伝える真言宗の古刹です。
博物館HPによれば、

「普門寺旧境内の発掘調査結果を紹介するとともに、総合調査によって明らかにされた事実をもとに、重要文化財に指定された諸寺院の仏像や金工品、平安時代の貴重な木札を含む古文書などを紹介し、三河・遠江の国境地域に栄えた仏教文化を俯瞰します。」

ということです。


普門寺をはじめ、豊橋市近隣の以下の仏像が出展されます。

  

詳しくは、「普門寺と国境のほとけ展」展示目録をご覧ください。

        
普門寺・伝釈迦如来坐像(平安・重文)            林光寺・薬師如来坐像(平安・重文)            赤岩寺・愛染明王坐像(鎌倉・重文)




●根津美術館で「再会〜興福寺の梵天・帝釈天」開催(1/7〜3/31)(2016年12月29日‎)


東京都港区の根津美術館で、特別展示「再会〜興福寺の梵天・帝釈天」が開催されます。
開催期間は、2017年1月7日(土)〜3月31日(金)です。
詳しくは、
根津美術館HP特別展示ページをご覧ください。

        
.           展覧会ポスター                 興福寺・定慶作梵天像       根津美術館蔵・定慶作帝釈天像

興福寺の定慶作梵天・帝釈天像(共に重要文化財)は、元来、一具の像でしたが、帝釈天像は明治年間に寺外に出て、現在、根津美術館の所蔵となっています。
梵天像は、興福寺に残され、普段は、国宝館に展示されています。
梵天・帝釈天像共に、像内に墨書銘が残されており、梵天像は建仁2年(1202)、帝釈天像は建仁元年(1201)、共に、大仏師定慶によって造立されたことが明らかになっています。

根津美術館・展覧会ページ解説によると、
「興福寺・多川貫首のご厚意により、112年ぶりに梵天と帝釈天が当館で再会する特別展示が実現することとなりました。」
ということです。


帝釈天像が、興福寺を出て、現在根津美術館の所蔵となっているいきさつについては、次のようなものだと思われます。

明治初年の神仏分離、廃仏毀釈の嵐の中で一時は廃寺になった興福寺は、明治13年(1880)再興が叶うものの、財政的には大変苦しい時期が続きました。
興福寺は、維持のための基本金を調達するため、「破損仏その他の庫一つ」を払い下げることになります。
この時、明治39年(1906)に、破損古仏等を購入したのは、三井の益田鈍翁でした。
77点を3万5千円で引き受けたといわれています。

この時の引き受け仏像の中に、定慶作・帝釈天像も含まれていたのです。
益田鈍翁は、払い下げ仏像のうち60点ほどを弟の英作氏に譲渡、転売処分を託するのですが、定慶作・帝釈天像は、それらの古仏のうちの1体でした。
青山・根津嘉一郎が入手し、現在根津美術館の所蔵となっているのです。

興福寺から益田鈍翁に譲与された時の、仏像の一部の古写真がありますので、ご覧ください。

        
明治39年(1906)興福寺から破損仏等が益田鈍翁に譲与された時の写真           ボストン美術館蔵・快慶作弥勒菩薩像

古写真の、一番奥の左の仏像が、根津美術館所蔵の帝釈天像です。
ご覧の通り、頭部面部は欠失しており、現在の頭部は、復元・後補となっています。
ちなみに、前列の真ん中は、有名な、ボストン美術館蔵の快慶作・弥勒菩薩像です。
岡倉天心の旧蔵となっていましたが、天心の死後、ボストン美術館が天心遺品を購入したものです。

明治以降の、多難であった興福寺の歴史を物語るともいえる、根津美術館・帝釈天像と、興福寺・梵天像が出会う特別展示です。
是非、こうした近代奈良、興福寺の歴史も振り返りながら、鑑賞したいと思っています。







【過去の展示会情報】

2000年上半期

2000年下半期

2001年上半期

2001年下半期

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

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