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展示会案内  2020年


全国の美術館、博物館の展示会情報については、下記リンク先を参照ください。

観 仏三昧 ─ 仏像と文化財の情報ページ─
〈展覧会情報、仏像の公開情報、講演会・シンポジウム情報などを詳細に紹介しているサイト。〉
インターネットミュージアム
〈全国の美術館、博物館の検索と展覧会情報を掲載〉
Museum Information Japan
〈全国の美術館案内〉
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●京都国立博物館で「文化財修理の最先端展」開催(12/16〜1/31) (2020年12月10日‎)


京都国立博物館で文化財保存修理所開所40周年記念 特別企画「文化財修理の最先端」が開催されます。




開催期間は、2020年12月19日(土) 〜 2021年1月31日(火) です。
詳しくは、
京都国立博物館HPならびに企画展ページをご覧ください。

本展覧会は、京都国立博物館文化財保存修理所設置40年を記念して開催されるもので、

「京都国立博物館文化財保存修理所は、指定文化財を安全に修理することを目的とし、1980年7月に設置されました。
公営修復施設としては日本で初めてのものであり、2020年には開所40周年を迎えました。
これを記念し、近年の修復成果の中でも新発見をともなう、特に注目される作例を厳選し、展示いたします。」

ということです。

仏像の展覧会ではないのですが、
「修理がもたらした奇跡〜修復で得られた発見」「最新の修復成果〜ベストな修理を目指して」「修理 いまむかし〜過去から未来へ」
といった興味深い展示テーマが設定されており、文化財の修理修復と研究成果にご関心のある方には、見逃せないものだと思います。

「彫刻の修理」テーマでの仏像展示は、以下の通りです。



展示会図録が発刊されるかどうか、よく判らないのですが、もし発刊されるなら、図録掲載写真や解説内容の方が、興味深くて面白そうなのではないかと思います。





●東京国立博物館で「館蔵 珠玉の中国彫刻」開催(12/1〜2/21) (2020年12月10日‎)


東京国立博物館・本館で特集展示「館蔵 珠玉の中国彫刻」が開催されています。

 
「館蔵 珠玉の中国彫刻」パンフレット
(左)洛陽白馬寺伝来・早崎吉旧蔵の菩薩立石像(東魏)  (右)天龍山石窟から流出した石仏像頭部


展示期間は2020年12月1日(火) 〜 2021年2月21日(日)です。
詳しくは、
東博HPならびに特集展示ページをご覧ください。

今回の特集展示は、

「当館ではこれまでに収蔵した作品の中から、大型像や著名な作品を選んで東洋館1階で常設展示してきましたが、小さい作品や破損・補修が多い作品はほとんどご覧いただく機会がありませんでした。
そこで、今回これらの中から一部を公開するとともに、中国彫刻を仏像以前に遡って理解するために、墓に副葬された俑(よう)も展示し、中国彫刻の新しい魅力を紹介します。」

というものです。

展示会場は、東洋館ではなくて本館1階の第14室となっています。
私は、中国彫刻の方は疎くて良く知らないのですが、中国の仏像にご関心の高い方には、普段展示されない東博所蔵作品をじっくり観ることができる絶好のチャンスなのではないかと思います。

特集展示の立派な【パンフレットPDF】が、特集展示ページに掲載されています。

パンフレットを見ると、天龍山石窟から流出した石仏像頭部が5躯出展されています。
旧所蔵者、根津嘉一郎氏、矢野鶴子氏(徳富蘇峰六女)等から寄贈されたものです。
他にも、洛陽白馬寺伝来・早崎吉旧蔵の菩薩立石像(東魏)や、森川杜園が明治期に模造した唐伝来・法隆寺九面観音像も展示されています。

ちょっと興味深いものがあり、一見しておきたいと思っています。





●龍谷ミュージアムで「ほとけと神々大集合〜岡山・宗教美術の名宝展」開催(11/21〜1/24) (2020年11月17日‎)


京都市下京区の龍谷ミュージアムで、企画展「ほとけと神々大集合〜岡山・宗教美術の名宝」が開催されます。

 

開催期間は、2020年11月21日(土)〜2021年1月24日(日)です。
詳しくは、
龍谷ミュージアムHPならびに展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、岡山県立博物館の所蔵品、寄託品を中心に、岡山県の「密教」と「神仏習合」という二つのテーマを柱として展示構成されるということです。

岡山県立博物館は、改修工事の為、本年4月から約2年間の予定で休館中となっています。
龍谷ミュージアムでは、博物館改修工事中、その所蔵品、寄託品の一部を預かるこことなったことから、本展覧会の開催となったということです。

仏像、神像では、

明徳寺(真庭市)・聖観音坐像(平安・県指定)、宇南寺(真庭市)・男神坐像(平安・県指定)、県立博物館蔵・女神坐像2躯(平安・県指定)、県立博物館蔵・宝冠阿弥陀如来坐像(嘉暦4年:1329・県指定)

などが展示されるようです。

出展リストは、まだ展覧会ページに掲載されていません。(まもなく掲載されるようです)

個人的には、明徳寺の聖観音坐像(像高:40.9p)が、ちょっとお気に入りの像です。
小像とは思えない、堂々たる豊かな造形のなかにも気品を感じ魅力的です。


明徳寺(真庭市)・聖観音坐像(平安10〜11C・県指定)

岡山県の仏像・神像の展覧会は、近年では、2016年に岡山県立博物館で特別展「カミとほとけの姿〜岡山の信仰文化とその背景」が開催されました。
数多くの岡山県内のの優作が出展されたのを、覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

今回の企画展は、それには及ばないかとは思いますが、普段馴染みの少ない岡山の神仏像を観ることができる機会かと思います。





●宮城県博物館で「奈良・中宮寺の国宝展」開催(11/12〜1/12)
九州国立博物館で「奈良 中宮寺の国宝展」開催(1/26〜3/21) (2020年11月3日‎)


宮城県仙台市の宮城県博物館で東日本大震災復興祈念「奈良・中宮寺の国宝展」が開催されます。

  

開催期間は2020年11月12日(木)〜2021年1月12日(火)です。
詳しくは、
宮城県博物館HPならびに展覧会ページをご覧ください。
本展は東日本大震災から10年を迎える被災地の復興を祈念して開催されるもので、中宮寺の国宝・菩薩半跏思惟像が出展されます。
このほかには、天寿国曼荼羅繍帳(複製)、紙製・文殊菩薩像(鎌倉・重文)などが出展されるようです。


なお、本展終了後、引き続いて、
九州国立博物館で特別展「奈良 中宮寺の国宝」が開催されます。

 

コチラの開催期間は、2021年1月26日(火)〜3月21日(火)となっています。
詳しくは、九州国立博物館HPならびに展覧会ページをご覧ください。

コチラの展覧会には、中宮寺からは菩薩半跏思惟像(飛鳥白鳳・国宝)、天寿国曼荼羅繍帳(飛鳥・国宝) 紙製・文殊菩薩像(鎌倉・重文)などが出展されます。

それに加えて、中国、朝鮮半島、日本の半跏思惟像がいくつか出展されます。
永青文庫・菩薩半跏像〜石像(北魏6C・重文)、長崎日本二十六聖人記念館・菩薩半跏像(三国時代7C・県指定)、東博法隆寺献納宝物・丙寅銘菩薩半跏像(飛鳥・重文)、野中寺・丙寅名弥勒半跏像(666年・重文)
が出展されます。


中宮寺では、現在、1968年に建てられ菩薩半跏像が祀られる本堂の改修計画が進められています。
この本堂は、近代数寄屋建築家として知られる吉田五十八の設計によるものです。

  
吉田五十八設計の中宮寺本堂

完成から50年が経過し修復が必要な時期となったため、クラウドファンディングが実施されるなど、改修プロジェクトが進められています。
改修工事は12月から来年2月の予定ということです。

こうしたことから、国宝・菩薩半跏像が出展される特別展が開催されることになったようです。





●帝塚山大学付属博物館で「木津川をめぐる神と仏展」開催(10/16〜11/28) (2020年10月18日‎)


奈良市帝塚山の帝塚山大学付属博物館で第34回特別展「木津川をめぐる神と仏〜井手・城陽の調査から〜」が開催されます。

開催期間は2020年10月16日(金)〜11月28日(土)です。
詳しくは、
帝塚山大学付属博物館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会、詳しい内容が判らないのですが、HPの開催内容に、

「帝恷R大学が平成30年より行っている京都府井手町内の仏像調査や京都府城陽市の平川廃寺出土塑像の調査成果を公開するとともに、関連する地域の遺物も紹介致します。」

とあり、ちょっと興味深そうですので、ご紹介しました。


関連する耳寄り情報は、本展覧会関連講座として、次の2講座が開催されることです。
【ZOOMによるオンライン講座】 受講方式となっています。



この講演会、大変興味深い「演題」となっています。
南山城、木津川地域の仏像についての、新たな切り口視点からの話や、新知見などを聴くことが出来そうです。
【ZOOMによるオンライン講座】 開催ですので、遠隔地の方も簡単に受講可能です。
本特別展よりも、この講演会の方がずっと興味深く、魅力的という愛好者の方も、結構多いのではないかと思います。

受講申し込み方法は、帝塚山大学付属博物館HP・特別展示ページをご覧ください。




●下田市上原美術館で「知られざる伊豆の仏教美術展」開催(10/10〜1/11) (2020年10月18日‎)


静岡県下田市の上原美術館で特別展「知られざる伊豆の仏教美術」が開催されます。

  

開催期間は、2020年10月10日(土)〜2021年1月11日(月・祝)です。
詳しくは、
上原美術館HP展覧会ページをご覧ください。
「伊豆に今も伝わる仏教美術の中には、人知れず、伝えられてきたものが数多く眠っています。
本展では、こうしたあまり知られていない文化財にスポットを当て、その魅力をご紹介いたします。」

という展覧会です。

展示仏像は、6〜7躯ほどのようですが、まさに知られざる古仏が出展されるようです。
下田市須崎の観音寺・薬師如来像(10世紀・市指定)は、かつて厳重な秘仏として30年に一度だけ開帳された霊像で、下田市内最古の像ということです。
熱海市伊豆山の地蔵菩薩像(安土桃山時代・市指定)は、熱海の北東、日金山中腹にある土沢地蔵堂の本尊で、制作年代には諸説ありましたが、上原美術館の調査で見出された木札解読により、天正20年(1592)鎌倉大仏所の加賀宗圓が復興造像したものと判明した像ということです。

  
(左)観音寺・薬師如来像(10世紀・市指定)熱海市伊豆山       (右)地蔵菩薩像(安土桃山時代・市指定)

こじんまりした仏像展のようですが、ちょっと興味深いものがあります。





●大阪市立美術館で「天平礼賛展」開催(10/27〜12/13) (2020年10月18日‎)


大阪市天王寺区の大阪市立美術館で特別展「天平礼賛」が開催されます。

  

開催期間は、2020年10月27日(火)〜12月13日(火)です。
詳しくは、
大阪市立美術館HP展覧会ページをご覧ください。

本展は
「天平美術の名品とともに刺激を受けた後世の作品をご紹介することで、日本の美の古典としての評価を得るに至った過程を体感していただきます。」
というもので、絵画・彫刻・工芸・書蹟、様々な分野に見られる天平礼賛の歴史をたどる作品が展示されます。

展示作品目録は、まだ掲載されていませんが、仏像では、
横浜市 龍華寺・乾漆菩薩半跏像(奈良時代・市指定文化財)、京都舞鶴市 金剛院・快慶作執金剛神像(鎌倉時代・重文)、竹内久一作・執金剛神像
等が、出展されるようです。


一番の注目は、興福寺伝来の脱活乾漆・十大弟子像頭部が展示されることです。


興福寺・十大弟子像の1躯頭部

この頭部は、興福寺の国宝・十大弟子像の一躯と伝えられているものです。
興福寺・十大弟子像は、現在6躯が興福寺に遺されており、4躯は、破損して残欠や心木のみとなっていたものが、明治〜大正期にそれぞれ寺外に出たようです。
本頭部はそのうちの一つで、関西の代議士、弁護士でコレクターでもあった田万清臣氏が所蔵していました。
田万コレクションは、没後、昭和55年に大阪市立美術館に寄贈されましたが、この十大弟子像頭部も、その時に寄贈されたものです。

興福寺から出た、4躯の破損十大弟子像の残欠等の現所蔵先、来歴などは、私の調べた限りでは次の通りです。




十大弟子像頭部は、大阪市立美術館の所蔵ながら、あまり展示されることがありません。
この機会に、しっかりと実見しておきたいものです。





●神奈川県立歴史博物館で「相模川流域のみほとけ展」開催(10/10〜11/29) (2020年9月26日‎)


横浜市中区の神奈川県立歴史博物館で特別展「相模川流域のみほとけ」が開催されます。

  

開催期間は、2020年10月10日(土)〜11月29日(火)です。
詳しくは、
神奈川県立歴史博物館HP展覧会ページをご覧ください。

神奈川県のほぼ中央を流れる相模川の流域には、奈良時代から仏教文化が栄え、たくさんの仏像が伝えられており、本展覧会は、相模川の流域の仏像が、一堂に会するはじめての機会となるとのことです。

18体の仏像が出展されるとのことで、主な出展仏像は展覧会ページに写真掲載されています。(出展目録は、まだ掲載されていません。)

一番の注目は、海老名市の龍峰寺・千手観音立像が出展されることかと思います。


龍峰寺・千手観音像(平安〜鎌倉・重文)

龍峰寺・千手観音像(像高:192p)は、仏手を頭上にあげ、手を組んでその上に化仏をのせる、所謂清水寺式の観音像の貴重な遺例で、重要文化財に指定されています。
本像は、一木造りなのに玉眼を入れるという珍しい像で、鎌倉前期頃の制作と云われていますが、体部の衣文などには平安時代中期以前の特徴もあり、議論のあるところのようです。
普段は、年に二日のみ(元日と3/17)しか御開帳されず、近年では2008年の奈良博「西国三十三ヶ所展」で展示されて以来の博物館出展になるということです。

あまり知られていない相模川流域の仏像を一堂に観ることができる貴重な展覧会で、ちょっと地味ですが必見の仏像展ではないかと思います。





●大津市歴史博物館で「聖衆来迎寺と盛安寺展」開催(10/10〜11/23) (2020年9月26日‎)


大津市御陵町の大津市歴史博物館で開館30周年記念企画展「「聖衆来迎寺と盛安寺〜明智光秀ゆかりの下阪本の社寺」が開催されます。

  

開催期間は、2020年10月10日(土)〜11月23日(月・祝)です。
詳しくは、
大津市歴史博物館HP展覧会ページをご覧ください。

本展は、聖衆来迎寺、盛安寺を中心に明智光秀ゆかりの古刹の仏像、宝物を一堂に展示するものです。

盛安寺には、近江を代表する観音像である十一面観音立像(平安・重文)伝えられています。
聖衆来迎寺にも、いくつもの古仏が伝えられていますが、金銅仏・薬師如来像(奈良時代・重文)、十一面観音像(平安・重文)、釈迦如来坐像(鎌倉・重文)は、よく知られた優作だと思います。
盛安寺・十一面観音像は、正月と春秋の限られた日には拝観可能ですが、普段は公開されていません。
聖衆来迎寺の諸仏像は拝観できるのは、年に一度、8月16日の宝物虫干しの日、一日限りとなっています。
盛安寺・十一面観音像はじめ、これらの仏像は、展覧会に個別に出展されることは折々あるのですが、諸仏がまとめて一堂に展示されることは、めったにないことかと思います。

    
(左)盛安寺        (右)聖衆来迎寺

この展覧会では、両寺の諸仏像をはじめ、絵画、工芸品などが勢ぞろいで展示されます。
聖衆来迎寺の宝物が一堂に展覧会展示されるのは、私が確認した限りでは、1984年に琵琶湖文化館で開催された「特別展 聖衆来迎寺」以来、30数年ぶりのことではないかと思います。
この機会に、是非、観ておきたい展覧会だと思います。





●滋賀・栗東歴史民俗博物館で「栗太郡の神・仏展」開催(9/15〜11/15) (2020年9月5日‎)


滋賀県栗東市の滋賀・栗東歴史民俗博物館で、栗東歴史民俗博物館開館30周年記念展「栗太郡の神・仏〜祈りのかがやき」が開催されます。

  

開催期間は、9月19日(土)〜11月15日(火)です。
詳しくは、
栗東歴史民俗博物館HP展覧会ページをご覧ください。

本展覧会は、現在休館中の滋賀県立琵琶湖文化館との地域連携企画展として開催されるもので、この2館が長年にわたる活動の中で、旧栗太郡域の寺社から寄託を受けてきた貴重な文化財・名品の数々を一堂に展示し、旧栗太郡に関わる幅広く、奥深い宗教文化を紹介する企画展ということです。

展示作品については、出品資料目録をご覧ください。
旧栗太郡にかかわる神仏像が展示されるという、ちょっとマイナーな展覧会ですが、出展像の顔ぶれを見ると、なかなか興味深いものがあります。

琵琶湖文化館は、財政的理由から2008年に休館となって以来、県立近代美術館との一体化による「新生美術館」が計画されましたが、それも現在は頓挫し、新たな目途が立たず停滞したままとなっています。
ご存じの通り、琵琶湖文化館には滋賀県内の諸社寺から多くの神仏像をはじめとする文化財が寄託されており、この貴重な文化財が、今後しっかりと守られていくのだろうかと本当に心配です。

休館後は、琵琶湖文化館寄託の神仏像などを展示する企画展が、各地の博物館で時々開催されていますが、本展もその一つです。





●京都国立博物館で「西国三十三所 草創1300年記念 特別展」開催(7/23〜9/13) (2020年7月29日‎)


京都国立博物館で「西国三十三所 草創1300年記念 特別展〜聖地をたずねて─西国三十三所の信仰と至宝─」が開催されます。




開催期間は、2020年7月23日(木・祝)〜9月13日(火) です。
詳しくは、
京都国立博物館HP展覧会ページならびに展覧会公式サイトをご覧ください。

本展覧会は、西国三十三所草創から1300年を記念して開催される特別展です。
西国三十三所の観音菩薩などの諸仏像、各札所の寺宝、170点余が出展されます。
出展される品目については、出品一覧をご覧ください。

仏像は、超有名仏像というものは無いようですが、観音像を中心に数十点が出展されます。

私の注目は、第33番札所「華厳寺」の毘沙門天像です。
平安前期の堂々たる9世紀の一木彫像で、塊量的で重量感たっぷり、圧倒的な威圧感、緊張感を感じる毘沙門天像です。
2月に奈良国立博物館で開催された「毘沙門天〜北方鎮護のカミ展」に出展されたのですが、新型コロナウィルスで早々に閉幕したため、見逃された方が多いのではないでしょうか。





●半蔵門ミュージアム・日本カメラ博物館で「永野太造仏像写真展」同時開催(3/4〜) (2020年2月22日‎)

【半蔵門ミュージアム は新型コロナウィルス感染対応で休館中でしたが、開館されて、「大和路の仏にであう〜奈良に生きた写真家・永野太造と仏像写真」は9月27日(日)まで延長開催されることとなりました。 なお、入館は時間予約制です。
日本カメラ博物館で「永野太造仏像写真展」は、当初予定通り終了しました】(2020.06.28)


東京都千代田区の半蔵門ミュージアムと日本カメラ博物館で、鹿鳴荘・永野太造撮影の仏像写真展が同時開催されます。

それぞれの展覧会名、開催期間は、次の通りです。

半蔵門ミュージアム 「大和路の仏にであう〜奈良に生きた写真家・永野太造と仏像写真」 2020年3月4日(水)〜6月14日(日)

日本カメラ博物館 「永野太造写真展 仏像〜永野鹿鳴荘ガラス乾板より」 2020年3月4日(水)〜3月29日(日)


   
半蔵門ミュージアム展覧会チラシ            永野太造氏             奈良博前・永野鹿鳴荘(2006年当時)


奈良国立博物館前の茶店兼仏像写真売店であった「永野鹿鳴荘」は、皆さんご存じのことと思います。
今は、飲物などの販売だけになっていますが、年配の方は、此処で仏像写真を買ったことがある方も多いのではないでしょうか。

永野太造(1922〜90)は「鹿鳴荘」の三代目店主で、独学で写真技術を習得した仏像写真家として著名な人物です。
永野は、奈良文化財研究所の草創期に調査へ同行し社寺の文化財を撮影するほか、数多くの仏像写真を撮影しました。
「奈良六大寺大観」「大和古寺大観」の掲載写真の一部の写真撮影も、永野太造が担当しています。
奈良の近代仏像写真史を語る上では、忘れることのできない人物です。

永野太造の業績や人物については、観仏日々帖
「奈良の仏像写真家、「鹿鳴荘」永野太造氏のこと」 【その1】 【その2】 で採り上げたことがありますので、ご覧ください。

この永野太造が遺した約7000枚のガラス乾板が、2015年に帝塚山大学に寄贈され、そのアーカイブ化と研究が進められています。


    
永野太造氏撮影写真   (左)大和古寺大観掲載・浄瑠璃寺・吉祥天像    (右)日本カメラ博物館展示・飛鳥大仏


二つの永野太造写真展は、こうした研究成果の一環として、開催されるものです。

半蔵門ミュージアム 「大和路の仏にであう〜奈良に生きた写真家・永野太造と仏像写真」
の詳しい内容は、半蔵門ミュージアムHPならびに、@Press展覧会ページをご覧ください。
高精細デジタル画像による仏像写真51点のほか、ガラス乾板など永野の関連資料が各フロアで展示されるとのことです。
また、仏像写真家・永野太造についての講演会も2回開催されます。

日本カメラ博物館 「永野太造写真展 仏像〜永野鹿鳴荘ガラス乾板より」
の詳しい内容については、日本カメラ博物館HP写真展ページをご覧ください。
こちらの方は、永野鹿鳴荘ガラス乾板から製作されたモノクローム版プリント73点が展示されるということです。

近代仏像写真の歴史や、仏像写真家についてご関心がある方には、必見の展覧会です。





●奈良国立博物館で「毘沙門天〜北方鎮護のカミ展」開催(2/4〜3/22) (2020年1月27日‎)


奈良国立博物館で、特別展「毘沙門天〜北方鎮護のカミ」が開催されます。

開催期間は、2020年2月4日(火)〜3月22日(火)です。
詳しくは、
奈良国立博物館HPならびに展覧会ページをご覧ください。

 


「毘沙門天」のみにスポットライトを当てた展覧会は、これまで開催されたことがなかったのではないかと思います。
大変興味深い展覧会です。

奈良博の本展開催趣旨には、このように記されています。

「近年、毘沙門天像の優品が相ついで発見されています。
奈良時代、8世紀制作と考えられる木心乾漆造の像(愛媛・如法寺)や、絵の中から抜け出てきたかのような激しい運動感を示す作例(京都・弘源寺)、保安5年(1124)の年紀銘が確認された平安彫刻の貴重な基準作例(個人蔵、米国・ロサンゼルス・カウンティ美術館保管)、また仏師運慶の流れをくむ作者の手になると見られる彩色の美しい鎌倉時代の作品(当館蔵)、あるいは密教修法における調伏法に用いられた珍しい双身(二体合体)の像(奈良・東大寺)など、いずれも斯界の研究進展に資する重要作例です。
本展は、従来知られている毘沙門天彫像のなかから、とくに優れた作品を厳選し、それらを一堂に会することで、毘沙門天彫像の魅力を存分に味わうことのできる展覧会となります。」

展覧会には、毘沙門天像の名品、注目作品、37件が出展されます。
出展作品については、奈良博展覧会ページ・出陳品一覧をご覧ください。

出展一覧を見ると、大変興味深い毘沙門天像がいくつも出展されています。

なかでも私の注目は、弘源寺・毘沙門天像、華厳寺・毘沙門天像、如法寺・毘沙門天像です。


      
(左)弘源寺・毘沙門天像(平安前期・重文)    (中)華厳寺・毘沙門天像(平安前期・重文)     (右)如法寺・毘沙門天像(奈良)


弘源寺・毘沙門天像は。平安前期、9世紀にさかのぼるかとみられる毘沙門天の古像で、2004年に新たに重要文化財に指定されました。
高源寺は、京都嵯峨・天竜寺内にあるお寺ですが、本像は貞観7年(865)創建の比叡山無動寺伝来という伝承があり、その頃に近い制作年代と見て矛盾しないとのことです。
腰を極端なほど捻り、袖や裳裾が激しく翻る動的表現において比類を見ないものです。
弘源寺では、春秋の特別公開期間に拝観できるようですが、私は未見の興味津々像です。

岐阜 華厳寺・毘沙門天像は、平安前期、9世紀の制作の迫力満点の像です。
塊量的で重量感たっぷり、圧倒的な威圧感、緊張感を感じる毘沙門天像で、その異貌には、一度見ると忘れられないほどに惹きつけるものがあります。
華厳寺では、非公開で拝することができません。
私の記憶では、2008年に奈良博で開催された「西国三十三所・観音霊場の祈りと美」展に出展されて以来の博物館での公開ではないかと思います。
一度は必見の毘沙門像だと思います。

愛媛 如法寺・毘沙門天像は、最近(2018年)「新発見の毘沙門天像」として話題を呼んだ像です。
奈良時代、8世紀の木心乾漆像のということで、驚きの新発見ニュースとなりました。
本像の発見については、観仏日々帖「奈良時代の乾漆造・毘沙門天像が新発見」で詳しくご紹介しましたので、そちらをご覧ください。

この「毘沙門天展」、それほど大規模な仏像展ではないのですが、仏像愛好者には見逃すことにできない興味津々の展覧会だと思います。





●伊都国歴史博物館で「糸島仏 〜いとしまのみほとけ展」開催(1/25〜3/15) (2020年1月18日‎)



福岡県糸島市の糸島市立伊都国歴史博物館で、伊都国歴史博物館冬季企画展『糸島仏 〜いとしまのみほとけ〜』が開催されます。

開催期間は、2020年1月25日(土)〜 3月15日(日)です。
詳しくは、
伊都国歴史博物館HPならびに展覧会ページをご覧ください。

展覧会開催趣旨については、次のように記されています。

「糸島地域は、九州最古とされる木彫仏群や、朝鮮半島との交流を示す渡来仏をはじめとする貴重な仏像・仏画などが多く残る地域として知られています。
今回の企画展では、このような糸島に残る貴重な仏像や多様な関連資料を通して、この地に花開いた特色ある仏教文化を紹介します。
普段見ることができない仏像・仏画などが多数展示される貴重な機会です。ぜひご覧ください。」

糸島地域の仏像展ということで、どのような仏像が出展されるのか興味深い処なのですが、出展仏像のリストは、展覧会HPへの掲載予定はないとのことです。

糸島の著名な仏像といえば、九州最古の木彫仏といわれる浮嶽神社の平安前期木彫群(重文)、千如寺大悲王院の千手観音像の巨像(鎌倉後期・重文)が知られますが、今回の展覧会には共に出展はされていません。

糸島地域に遺る渡来仏(金銅仏)や平安期の木彫仏などが、いろいろ出展されるということです。

糸島の仏像というと、浮嶽神社と大悲王院の仏像以外には、なかなか思いつかないのですが、NET検索してみると、次のようなHPがありました。

「ふくおかの文化財展〜糸島地方の仏像」(福岡市博物館HP)
「糸島の仏像を訪ねて 糸島西部 雷山地区 志摩町」(糸島魅力みつけ隊ネットワーク協議会HP)

これらに紹介されている仏像などが、展示されるのではないかと思います。

少々、マイナーな展覧会で、遠方からはなかなか出かけにくいように思いますが、朝鮮半島との交流も深かった糸島地域の古仏を採り上げた興味深い企画展ということで、紹介させていただきました。





●東京国立博物館で「出雲と大和展」開催(1/15〜3/8) (2020年1月5日‎)


東京国立博物館で、日本書紀成立1300年 特別展「出雲と大和」が開催されます。

開催期間は2020年1月15日(水)〜3月8日(日)です。
詳しくは、東京国立博物館・
展覧会ページ展覧会公式サイトをご覧ください。

本展覧会の開催趣旨は、

「令和2年(2020)は、我が国最古の正史『日本書紀』が編纂された養老4年(720)から1300年という記念すべき年です。
・・・・・・
「幽」と「顕」を象徴する地、島根県と奈良県が当館と共同で展覧会を開催し、出雲と大和の名品を一堂に集めて、古代日本の成立やその特質に迫ります。」

ということです。

一見、仏像にあまり縁のない展覧会のように思えますが、見処ある古仏が数多く出展されています。
主な出展仏像は、ご覧の通りです。

  


詳しい出展目録は、東博HP展覧会ページ掲載の【作品リストPDF】をご覧ください。


どうしてこれらの仏像が選定されたのかの考え方は、よくわからないのですが、「奈良時代の木彫像」とみられる興味深い仏像が、いくつか出展されています。
仏像愛好者にとっては興味深いというか、ちょっと「通好み」の顔ぶれという感じです。

とりわけ私の大注目の出展像は、世尊寺・十一面観音像、金剛山寺・十一面観音像、石位寺・伝薬師三尊像です。


        
(左)世尊寺・十一面観音像(奈良・県指定)    (中)金剛山寺・十一面観音像(奈良・重文)    (右)石位寺・伝薬師三尊像(白鳳〜奈良・重文)


「世尊寺・十一面観音像」は、近年、奈良時代制作の木彫像として注目されている像です。

世尊寺は奈良県吉野郡大淀町という山中にあり、『日本書紀』に記される放光樟像を安置した吉野寺に起源をもっとされる寺院です。
頭部は後補ですが、首から下は奈良時代(8世紀後半)の制作と見られています。
造形表現を見ると、量感を強調しない整ったシルエットと奈良時代の乾漆像の粘塑的な衣の表現が特徴的です。
興福寺東金堂・薬師三尊や薬師寺講堂・薬師三尊像の脇侍像の作風に類似するともいわれています。

本像は2005年に奈良博で開催された「古密教展」に出展されて、注目を浴びました。
無指定像でしたが、2006年、県指定文化財に指定されました。
展覧会への出展はそれ以来かと思いますが、奈良時代制作の一木彫像の貴重な作例です。


「金剛山寺(矢田寺)・十一面観音像」も、奈良時代制作の一木彫像の貴重な作例として、知られている像です。

かつては、平安時代に入ってからの制作とされていたこともありましたが、現在では、奈良時代の制作像とされています。
一木彫像(条帛のみ乾漆使用)ですが、造形スタイルは奈良時代の乾漆像と見まがうような天平風の表現です。
間違いなく乾漆像を意識して制作されたことが明らかな一木彫像で、奈良時代に天平風の一木彫像もしっかり制作されていたことを再認識させる注目像だと思います。
興味深いのは、カヤ材ではなくて、キリ材の一木彫だということです。
軽量のキリ材は伎楽面などに用いられますが、仏像には大変珍しい用材です。

本像の展覧会出展は、奈良博開催「天平展」(1998年)、「矢田寺の仏像展」(2001年)以来だと思います。
お寺では、毎年6月の特別ご開帳期間しか拝することができません。
眼近に観ることができるのが愉しみです。


「石位寺・伝薬師三尊像」は、白鳳(〜奈良)期の美麗な浮彫石彫三尊像として大変有名な仏像で、よくご存じのことと思います。

この石仏像が寺外に出て公開されるものは初めてで、展覧会初公開、初出展となるのです。

1メートル強の石材に、半肉浮彫で彫出された倚像三尊の美しさには、見惚れてしまいます。
石位寺は、桜井市のちょっと不便なところにありますので、初めて展覧会場でじっくり観ることができるのは、大変嬉しいことです。


展覧会の名前に似合わず、仏像愛好者に興味津々の「出雲と大和」展、是非お出かけください。




●龍谷ミュージアムで「仏像ひな型の世界展」開催(1/9〜3/22) (2019年12月29日‎)



京都龍谷ミュージアムで特集展示「仏像ひな型の世界」が開催されます。

開催期間は、前期:2020年1月9日(木)〜2月9日(日)、後期:2月22日(土)〜3月22日(日)です。
詳しくは、
龍谷ミュージアムHP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、龍谷ミュージアムのシリーズ展6「仏教の思想の文化〜インドから日本へ」のなかでの特集展示として開催されるようです。

仏像の「ひな型」に注目した企画展というもので、仏像造像の技法やプロセスにご関心のある方には、大変興味深いものだと思われます。

特集展開催趣旨はこのように記されています。

「仏像などの彫刻をつくる際、仏師たちは「雛型」と呼ばれる模型を使用しました。
大きな仏像をどのようにして効率的に造るかを考えるため、または注文主である施主や発願者にみせる完成予想図としての役割を果たしたのでしょう。
・・・・・
今回の特集展示では「大仏師系図」にもその名が記される江戸時代から平成まで15代にわたって系譜を重ねた京都仏師・畑治良右衛門が伝えてきた雛型の数々を展観します。
・・・・・・・」

展観の規模や展示内容が、どのようなものになるのかは、よく分からないのですが、ちょっと気になる展覧会です。





●奈良博で「重要文化財 法隆寺金堂壁画写真ガラス原板〜文化財写真の軌跡〜展」開催(12/7〜1/13) (2019年11月23日‎)



奈良国立博物館で、特別陳列「重要文化財 法隆寺金堂壁画写真ガラス原板〜文化財写真の軌跡」が開催されます。

開催期間は、2019年12月7日(土)〜2020年1月13日(月・祝) です。
詳しくは、
奈良国立博物館HP展覧会ページをご覧ください。

この展覧会は、昭和10年(1935)に美術印刷会社「便利堂」が撮影した、火災損傷前の法隆寺金堂壁画12面の写真ガラス原板を中心に、近代文化財写真の軌跡を振り返る展覧会です。

ご存じの通り、便利堂撮影の法隆寺金堂壁画のガラス原板は、焼損前の金堂壁画の状況を伝える詳細、精密な画像写真として、極めて貴重な文化財写真資料です。
2015年には、その歴史的・学術的価値があらためて評価され、国の重要文化財に指定されました。

展覧会は、「特別陳列」という企画展なので、それほど大規模な展示ではないかもしれませんが、開催趣旨に、

「この展覧会では、法隆寺金堂壁画写真ガラス原板を中心に、近代以降に多くの人びとが文化財の写真撮影に精力を傾けた軌跡を振り返ります。」

と述べられているように、横山松三郎や小川一眞撮影の古写真をはじめ、明治初年からの文化財写真も展示され、「近代文化財写真の軌跡」をたどる興味深い展示会となるようです。


こうした 近代文化財写真の軌跡や便利堂撮影法隆寺金堂壁画を振り返る展覧会としては、

2000年に東京都写真美術館ほかで開催された  「写された国宝〜日本における文化財写真の系譜」展

2017年に京都文化博物館で開催された  「便利堂創業130周年記念 至宝をうつす〜文化財写真とコロタイプ複製のあゆみ」展

が、記憶に残る素晴らしい企画展だったと思います。

    
上記の2つの展覧会の図録・資料

今回は、どんな展示がされるのでしょうか?大変愉しみです。

本物の仏像や絵画の展示ではなく、「文化財写真」をテーマにした展覧会は、ちょっとマイナーで人気がないのかもしれませんが、私には興味深い展覧会です。





【過去の展示会情報】

2000年上半期

2000年下半期

2001年上半期

2001年下半期

2002年

2003年

2004年

2005年

2006年

2007年

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

2013年

2014年

2015年

2016年

2017年

2018年

2019年

2020年

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