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貞観の息吹き 高見 徹 56. 梵釈寺 阿弥陀如来坐像(滋賀県東近江市蒲生岡本町)
東近江市の梵釈寺
は、当初の建立地からはやや離れているが、近くの寺の鐘楼にこの寺が桓武天皇によって建てられたとする記録があることから、古代の梵釈寺が当地に再興され
た寺であると考えられている。その後享保13年(1728)に黄檗宗大本山である萬福寺の末寺となり、安永5年(1776)には鐘楼が建立されている。境
内には鎌倉時代末期の嘉暦3年(1328)銘の石塔がある。
本尊阿弥陀如来坐像は、像高116cm、ヒノキの一木造で内刳も施されていない。頭上に髪を高く結い上げた宝髻と精緻な天冠台を持ち、現在は失われている
が、本来は頭上に宝冠を戴く像である。近年まで菩薩坐像として伝えられてきたが、調査の結果、天台宗の基本的な修行の1つである常行三昧を修する常行三昧
堂の本尊形式、いわゆる宝冠阿弥陀如来像であることがわかった。 本像は、全身に後世の漆が塗られていることから、表情や彫りがぼやけているところが多いが、量感ある体躯や高い膝高に古様が見られる。平安時代も早い頃の制作と見られる。 本寺に伝わる阿弥陀如来坐像は、寺の再興時期よりも古い、平安時代中期以前の造像であり、しかも延暦寺常行三昧堂に関連深い宝冠阿弥陀如来坐像であることから、兵火によって多くの諸尊を失った延暦寺の歴史の一端を埋める像である。 |
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