仏像を科学する

鍍金

金銅仏の鍍金には、水銀アマルガムが用いられた。アマルガム鍍金法は、明治時代に西欧から電気鍍金の技術が伝わるまで行われていた伝統的な鍍金法である。水銀は常温で液体である唯一の金属で、金、銀、銅等を溶解し、液状-半固体の合金であるアマルガムを造る。金と水銀の合金である金アマルガムは、合金の状態では金の色が消え、銀色になるため、滅金又は銷(消)金と呼ばれる。メッキという言葉は滅金から来ているという。

身近な例では、体温計などの水銀を金の指輪やブローチにつけると、銀色になり、しばらくすると元の金色に戻るのは、一旦金アマルガムとなり、放置すると、しだいに水銀が蒸発して金の単体に戻るからである。

金アマルガムの製法は、水銀5に金1を溶かし練ったものを、和紙、皮等に入れて絞り、余分な水銀を分離すると、半固形の練物状になる。これを青銅仏の表面にこすり塗った後、炭火等で加熱すると、水銀が蒸発し、金が薄い膜として残る。

金アマルガム法では、通常鍍金面一尺四方辺り一匁、2/1,000mm(2ミクロン)の厚みとなる。これに対し、木彫像などの表面の装飾に用いられた金箔は、金を叩き広げて造られ、その厚みは、1〜2/10,000mm(0.1〜0.2ミクロン) といわれている(1gで約50cm×50cm角の金箔に相当する)。

奈良の大仏の製作に要した材料は、東大寺要録によれば,銅739,560斤(721トン)、錫12,618斤(12.3トン)、水銀58,620両(2.46トン)、錬金(純金)10,436両(0.44トン)、炭16,656斛と言われている。いまの単価で換算すると、材料だけで約10億円相当となる。

 

 

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