仏像を科学する

 

 放射性炭素年代測定法の原理

 炭素の原子量は12であるが、地球上の炭素には、極わずか(約1%)原子量14の放射性炭素(C14)が含まれている。この放射性炭素は空気中の窒素に宇宙線の2次中性子が衝突して作られると考えられているが、不安定で、絶えず電子を放出して、安定な窒素原子に変わる。この現象は、極めて規則的に起こり、その数が半分になる期間は半減期と呼ばれ、C14の場合、5730年かかることが知られている。炭素は酸化されて炭酸ガスになり、大気中に一様に分布していくが、C14は生成と崩壊の平衡になるところで大気中の炭酸ガス中にほぼ一定の濃度で過去現在を通じて存在していたと考えられてる。

 大気中の炭酸ガスは植物の光合成によって植物体内に取り込まれ、さらに動物等の体内に取り込まれるため、生体物中の放射性炭素の濃度は大気中の濃度にほぼ等しいはずである。しかし、その生物が死ぬと外部からのC14の供給がなくなるので、その生物遺体中のC14は上記の半減期に従って減少していく。

 現在の大気中のC14濃度と有機物中のC14濃度を測定、比較することで、その生物が活動を止めた年代、植物であれば伐採された時期を求めることができる。これは、1950年、シカゴ大学のリビー教授によって発表された(リビー教授が採用した半減期は5568年であった)。

 14Cの測定方法としては、C14が崩壊するときに出る電子を数える「β線計測法」という方法と、内部に残ったC14の量を測定する加速器質量分析(AMS)法がある。

 測定対象物は、基本的に有機物が遺物に含まれていなければならず、石器や金属などは測定できない。しかし、土器を例に取ると、土器本体ではなく遺跡から土器と一緒に発掘される木炭や貝殻、粘土の中に混ぜた植物繊維組織や加熱時のすす、土器内の残存物などから、土器の製造について年代測定が出来る。

C14年代値を算出するときに、過去においても大気中のC14濃度が一定であると仮定しているが、主に、地磁気が変動することによって、地球に降り注ぐ宇宙線が変動すると、その結果炭素14の生成量が変わってしまうため、また、発掘後に置いた土壌に含まれる有機物や空気中の煤煙、タバコの煙や手垢が付着するだけでも測定値は大きく変わってしまう。

 現状では、炭素14年代と実際の年代は、必ずしも一致せず、誤差が50〜100年であるといわれ、絶対的な信頼をおける測定法とはいえないが、年輪年代法の基準となる試料の炭素14濃度を測定して較正した、C14年代を暦年に変換する較正曲線がつくられるなど、測定精度を高める努力がされている。

 

 

 

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