飛鳥白鳳彫刻の問題点

朝田 純一

 

    
第一章 我国に於ける仏教美術の受容態度について
第二章 中国に於ける仏像様式の変遷
第三章 飛鳥白鳳期に於ける基準作例について
第四章 止利様式と、その飛鳥時代に占める位置について
第五章 非止利様式の諸像−様式並存の可能性と飛鳥彫刻の終焉
第六章 白鳳様式の実態

 

 

 これから飛鳥白鳳彫刻について論ずるわけであるが、その方法として

なるべく客観的な問題だけをとりあげて諭ずる方法、即ち、造像技法とか、文献的考証などについて細かく論ずる方法、

自分自身の判断で各論を適当に取捨選択し自己の論を展開する方法、

今まで諸学によって論じられてきた説を、あげのべる方法

この三つを考えてみた。しかし最初の方法は、詳細な資料が整えられている現在、ここでとりたてて書いても、余り意味のあることとはいえまい。また自己の論だけを展開するのは、自分の知識が余りにも浅薄なる現在、到底できることではない。それ故、最上とはいえないが、各説を紹介しその論点をあきらかにし、問題が何処に存するのかという事を論ずる方法をとった。また実際に、のぺるにあたっては、少々読みづらくなるのを覚悟の上で、出来得るかぎり誰がのべた論であるかという出典をあきらかにした。こうしておけば、問題点についての詳しい内容の検討が簡便にできるであろう。

 また内容については、飛鳥白鳳の様式を理解する事が第一義であるという観点に立ち、細かい技法についての問題や、各々の仏像についての検討や問題点の考証、についてはほとんど触れなかった。また基準作例の認出についての考証も最少限にとどめた。その点理解しにくいところが多々有ろうと思われるが容赦頂きたい。問題点の抽出については、我国飛鳥白鳳期に於ける仏教彫刻の展開に主眼を置き、次のように定めた。

○ 我国に於ける仏教美術の受容態度について

○ 中国に於ける仏像様式の変遷

○ 飛鳥白鳳期に於ける基準作例について

○ 止利様式と、その飛鳥時代に占める位置について

○ 非止利様式の諸像−様式並存の可能性と飛鳥彫刻の終焉

○ 白鳳様式の実態

 飛鳥白鳳彫刻に手をつけることは、底なし沼にひきずりこまれるようなものだ、とよくいわれるが、まさにその通りで動きがとれなくなってしまう。それを何とかしようとして考えたのが以上のようなものである。各章の最後に私自身の意見を多少なりとも書いておいた。そこだけをつなぎ合わせて読んでもらえば一応私なりの飛鳥白鳳彫刻史論になるつもりであるからそこだけ読んでいただいても結構である。

 

      

 
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