2008年 仏教文化財十大ニュース

 今年の仏教文化財に関する主なニュースを纏めてみました。
 異論もあると思いますが・・・。

 

● 西国三十三ヶ所観音札所の本尊公開(2008年1月1日)
 西国三十三ヶ所観音札所では、西国巡礼の中興の祖とされる花山法皇の千年忌に合わせ、2008年9月から3年がかりで全33カ所の本尊を順に開帳していく。
 京都市東山区の清水寺の本尊十一面観音が2008年9月1日から11月30日まで開帳されるのをはじめ、西国観音霊場三十三カ所の各寺院が2008年か ら2010年までに本尊の開帳を行う。
 この中には、六角堂(頂法寺)、紀三井寺、三室戸寺、三井寺、穴太寺、一乗寺、松尾寺、長命寺、華厳寺など数十年ぶりに開扉されるところも多い。

●  法隆寺金堂修理で釈迦三尊像など上御堂で公開(2008年1月5日)
 奈良県斑鳩町の法隆寺で金堂の須弥壇修理に伴い、国 宝・重文などの全仏像12体が、来年2月から12月の予定で、約100m北の上御堂(かみのみどう)などに移されることになった。
 金堂の基壇と壁のしっくいの修復工事は3〜12月に行われるが、その期間中は上御堂で一般公開される。金堂のすべての像が堂外に出るのは、火災で焼損した金堂の解体修理落慶(1954年)以来53年ぶりという。

● 運慶作大日如来像落札は真如苑(2008年3月25日)
 運慶の作とみられる大日如来像を、ニューヨークの オークションで、約14億円、手数料込み)で落札、入手したのは、東京都立川市に総本部を置く宗教法人・真如苑(しんにょえん)だったことが分かった。
 真如苑は伊藤真乗(しんじょう)(1906〜1989)が開いた密教系の仏教教団で、大日如来像は約10年後に建設予定の新施設で公開する方針という。

● 出雲大社で本殿を59年ぶりに一般公開(2008年4月21日)
 島根県出雲市の出雲大社は、「平成の大遷宮」で神体 を本殿から仮殿に遷したのに伴い、国宝の本殿の一般公開を始めた。
  本殿は江戸時代の延享元年(1744)造営。高さ24mの高床式で、切り妻屋根や周囲に縁を巡らせた「大社造」と呼ばれる建築様式。普段は限られた神職 しか入ることができないが、檜皮のふき替えなどの大修理に備え、ご神体が仮殿に移されたためで59年ぶりに公開される。

● 観音像の胎内仏像頭部を立体画像で復元(2008年7月26日)
 福井県坂井市の大善寺で、本尊・十一面観音像の胎内から発見された銅製十一面観音像の頭部が、3次元データをもとに復元された。
 本尊を調査のためエックス線撮影したところ、右大腿部に胎内仏の輪郭線が見つかったことから、コンピューター断層撮影装置(CT)で撮影したところ、内部に銅製十一面観音像とみられる仏像の頭部であることが確認された。
 CT撮影で得た3次元データを元に、コピーのように造形化できる特殊な機器を使用して、樹脂製のレプリカ(複製品)も制作した。
 今回のケースは、取り出せない胎内仏の復元に3次元データを用いた初のケースといい、最新技術として注目されそうだ。

● 高知県で湛慶作の大日如来像が見つかる(2008年9月26日)
  高知県須崎市上分の小堂で、鎌倉時代の仏師、運慶の長男の湛慶(たんけい、1173〜1256)の工房が制作したと見られる大日如来像が見つかった。
 大日如来像は像高49.3cmのヒノキ製で、一木で彫った像を一旦割って内刳を施す割剥ぎ造で、仏像内に宝物を納入するための棚板がある構造など、運慶 工房独特の手法が用いられている。
 顔つきは高知市の雪蹊寺にある湛慶作の吉祥天像 (重文)と似ており、湛慶かその工房の制作と見られるという。

● 奈良・新薬師寺
巨大金堂の遺構出土(2008年10月24日)
 奈良市高畑町の奈良教育大構内で、奈良時代(8世 紀)の新薬師寺の金堂とみられる大型建物跡が出土した。
 建物跡は、東西幅が約59mと、現在の東大寺大仏殿をしのぐの規模だった上、基壇の前面とほぼ同じ幅の階段を備えた特殊な構造だったことが分かった。
  金堂には7体の薬師如来像それぞれに脇侍の日光・月光菩薩像が並び、更に十二神将像までが堂内に勢ぞろいしていたとされており、それぞれの本尊を同格に 扱うために、幅広の階段が設けられたと考えられるという。

● キトラ古墳壁画最後の星座剥ぎ取終わる(2008年11月28日)
 明日香村阿部山のキトラ古墳で石室天井に最後まで 残っていた星座「天倉」のはぎ取りが終わった。
 剥ぎ取られた壁画は 、来年1月から修理作業に入り、順調に進めば2011年には公開出来る状態になるという。

● 唐招提寺、落慶法要は来年11月(2008年11月28日)
 奈良市の唐招提寺は金堂の修復工事完了に伴い、落慶法要を来年11月に行うと発表した。
 金堂の解体改修工事は2000年1月に始まり、本尊・盧舎那仏坐像や千手観音立像を含む国宝の仏像3体も一旦運び出され、修理が行われていたが、金堂の修理は完了し仏像の組付けを残すだけとなった。
 落慶法要は2009年11月1日から3日間行われる。

● 法隆寺金堂にLED照明(2008年12月11日)
 奈良県斑鳩町の法隆寺で、国宝の金堂内に仏像や壁画の照明設備が設置されることになった。
  法隆寺金堂は世界最古の木造建築物で、昭和24年1月に電気座布団のショートが原因とみられる火災により彩色壁画を焼損したことから、それ以来照明なしで堂内を公開してきた。
 しかし、須弥壇修理の完成を機に、熱を持たない発光ダイオード(LED)を堂内に設置して、仏像を上部から照らすことを決めた。

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