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9号龕 |
鉄格子がはめられ一見地味な龕だが中味は出色。
縦、横約3mの龕内に1仏4弟子2菩薩2天2力士の11尊像、更に後壁に天龍八部衆をレリーフであらわす豪華な造り。
中尊は頭部を欠き右手も明らかに後捕だが胸には飾りが残っている。
聞くところによれば、頭部は2003年に向って左の菩薩頭部とともに盗難に遭ったとのことで、以後格子が付けられたらしい。
盗難前の写真では頭に宝冠を乗せており、おそらく右手は触地印であったかと思われるので、これまで広元千仏崖や巴中南龕、西龕でもみてきた宝冠触地印形式のいわゆる菩提瑞像であろう。
左右の菩薩は倚坐形式で珍しいが、像の出来が素晴らしい。
特に残りのよい向って右の菩薩は豪華な宝冠を頭に載せ、面長で端正な顔立ち、胸飾をつけ、X字状瓔珞が倚坐する両足にかかってゆったりと腰掛ける様は秀逸。
9号龕・菩薩倚像
都ぶりの美菩薩といったところ。
左側の菩薩も同様だが頭部を欠くのが惜しまれる。
向って左の天王像も特徴的で、耳下から顎にかかる巻き髭や上腕部の獅噛みなど、見るからに西域胡人風の天王像である。
内壁に浅くレリーフされた八部衆のうち阿修羅は三面四臂、日・月と、もう二本の手で曲尺(右手)と何か鐸状のもの?(左手)を持つ。
9号龕・阿修羅像
全体に唐代を代表する華麗な窟のひとつで、おそらくは初唐末期、遅くても盛唐期も早い頃の制作かと思われる。