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貞観の息吹き 高見 徹 45. 曼荼羅寺 聖観音立像(香川県善通寺市吉原町)
曼荼羅寺は、我拝師山北麓に位置する寺で、弘法大師の先祖である佐伯家の氏寺として推古4年(596)創建され、世坂寺と称していたものを、弘法大師が帰
朝後、亡き母の菩薩を弔うために大同2年に唐の青龍寺を模して堂塔を建立し、大日如来を刻んで本尊とし、唐から持ち帰った金剛界と胎蔵界の両界曼荼羅を安
置して寺号を我拝師山曼荼羅寺と改めたと伝える。当時は善通寺にも劣らぬ程の伽藍を有していたという。 本堂から右手にある観音堂に安置される聖観音像は、頭頂部から蓮肉までヒノキの一木から彫り出された、内刳のない一木造の像である。ほぼ直立した像で、や や童子形に近く、やや笑みを浮べたような穏やかで面相や、やや塊量的な造形は古様を示している。長い間、風雨に晒された期間があるらしく、表面はかなり磨 滅して素地を表しているものの、膝前には翻波式衣文の名残を残すなど当初の彫り口はよく残されている。 善通寺にも、一木造の吉祥天像と地蔵菩薩立像が残されているが、これらの像が中央風の像であるのに対し、本像はやや地方作ながら、より古様を示しており、平安時代中期の制作と考えられる。 境内には、弘法大師お手植えと伝える樹齢1200年の「不老松」が
あり、高さ約4m、枝は直径約18mの円形に広がり、菅笠を伏せたような形をしていたことから「笠松」ともいわれ、古くから神仏が降臨する「依り代」とも
考えられ、県の天然記念物にも指定されて親しまれていたが、2001年に、松食い虫の被害で枯れてしまった。 |
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