仏像を科学する

 

 蛍光X線分析法、X線回析法、X線マイクロアナライザー

 物質にX線を照射すると、その物質中の元素が励起されてその元素固有の波長をもった特性X線(蛍光X線)が発生する。この蛍光X線を分光器(分光結晶)によって分光し波長と強度を測定することで、物質に含まれる元素の種類と量を分析することができる。

 蛍光X線分析法は、青銅器、鉄器等の古代金属器の組成、土・陶磁器の分析にも広く用いられ、得に石器(黒曜石)や土器(須恵器)では、示標となる特定の元素の検出パターンの比較により、産地分析にも応用されて成果を上げている。

 X線回析法は、材料の結晶構造を解析する方法である。固体は一般に結晶を形成し、それを組み立てている原子は規則正しく結晶格子点に並んでいると考えられる。このような結晶体にX線が入射すると、X線の波が原子によって干渉され、物質毎に入射方向に対して定まった方向に反射する。古美術品の材料である顔料等を試料にしてX線回折を行う場合には、細かく砕いた粉末試料を作り、ゴニオメータという回折装置で回折X線の反射角を計測し、求める結晶の種類を判定することができる。

 X線マイクロアナライザーは電子顕微鏡にX線分析装置を組み入れたものである。試料の表面に細く絞った電子線の針をあてると、試料表面から反射電子、二次電子が飛び出し、さらに、試料表面に含まれている元素に特有の特性X線が放射される。反射電子及び二次電子を検出器で受けそれぞれ、試料表面の組成状態、凸凹形状をブラウン管上に映像として表示すると同時に、X線強度を測定して、試料面に存在する元素の種類および分布濃度を判定する。

 

 これらの測定方法は、古青銅器や青銅鏡など銅製品の成分や産地、絵画および木彫の彩色材料の種類や材質など材質に関するいろいろな情報が得る事ができ、古美術品材質の鑑識法として役立つものと思われる。

 

 

inserted by FC2 system