● 唐招提寺伝衆宝王菩薩立像

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 唐招提寺に伝わる、天平時代後期から平安時代初期にかけての木彫群の一体である。他に、伝薬師如来立像、伝獅子吼菩薩立像、トルソと呼ばれる如来立像などがある。 伝獅子吼菩薩立像および本像は、脇手を失うものの、本来それぞれ三面四臂、三面六臂の不空羂索観音像と考えられる。

 天平勝宝5年(753)、遣唐使の大使として、鑑真和上と同じ船団で帰国の途についたものの、遭難して中国に戻り、望郷の念を抱きながら彼の地で没した、藤原清河の親族が施入したと伝える羂索堂の本尊に比定され、鑑真和上の生前に、鑑真に付き従ってきた工人によって制作されたと考えられている。

 天平時代に造東大寺司系の像とは異なり、堂々とした体躯の表現や大胆に刻んだ衣文線や、頭頂から台座蓮台および心棒に至るまで一木から彫出した技法など、新しい時代の息吹を感じさせる。特に、伝薬師如来立像の持つ量感や、両腿を隆起させ腹前から股にかけてY字形に表す造形は、京都・神護寺や奈良・元興寺の薬師如来立像を代表とする平安初期の木像彫刻に多大な影響を与えた。

 現在は新宝蔵に収められており、春と秋の特別展の期間のみ拝観できる。

 


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