はじめに

 我々が、日本仏教彫刻史に取り組みはじめてから、丁度一年になる。やっとのことで、飛鳥、白鳳を終え、天平の半ばまでたどりついたところである。はじめは全く暗中摸索の状態で、何から手をつけて良いのやら、どんな本を読めぱよいのやら、皆目わからず、唯々途方に暮れるぱかりであった。こんな手さぐりのところから出発した、我々の仏像彫刻とのつきあいであるが、懸命にとりくんだ甲斐があり、一年たってふりかえってみると、一応の成果を残すことができた。これは、ひとえに班員、皆の労を厭わぬ努力の結果である。この書を、今ここに出すことができるのも、本文を執筆した者だけによるものではなく、一緒に活動してきた、山田由美子、細見泰章、小林大喜、藤高豊文、等全負の努力によるものである。我々は、ここにはじめて、今までの成果を発表する訳であるが、これを、今後の活動の礎とし、発展の第一歩として、これからも努力してゆきたい。

昭和四十六年十月

 

神戸大学古寺探訪同好会
美 術 班
 


 これは、昭和46年、当時の神戸大学神戸大学古寺探訪同好会美術班のメンバーが、研究の成果を発表するために、自費出版した本を転載したものである。当時の美術班のメンバーには文学部の学生はおらず、全員があくまで同好会の活動として取組んでいた。

 今から30年以上も前の事であるから、執筆した内容も、その後の新発見や研究の進歩に伴い見直さねばならない項目も多くあるが、誤字誤植を訂正した以外は敢て手を加えず、当時のまま掲載することにした。

 それは、掲載した目的が、当時大学生であった彼等が、限られた資料の中でどのように考察し、研究を進め、執筆したかを紹介したかったからである。

 今でこそ、仏教美術に関する多くの出版物が一般向けにも刊行され、検索手段も準備されているため、先人の研究成果や最新の研究内容を比較的容易に知ることができるが、当時は、一般的な解説書や専門書も少なく、ましてや、文献等の検索手段も限られた範囲でしか行えなかった。

 その中で地道に文献や専門書を探し、現地を訪れて観察し、議論し、考察し、執筆してきた

(H15.3 高見 徹)

 

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